データだけじゃない！膳所の主将が見せた好プレー

　第90回記念選抜高等学校野球大会2日目は3試合が行われました。この中から第3試合、日本航空石川ｖｓ膳所のある場面を取り上げます。

　膳所のデータに基づいた大胆なポジショニングに注目が集まりましたが、今回取り上げるのは別の場面です。

　その場面は2回裏、日本航空石川の攻撃。2アウト1塁で8番・夏川風眞選手の打席。カウントは1ボール2ストライクで、膳所のエース・手塚皓己投手の4球目でした。

　手塚投手のアウトコース低めのスライダーがショートバウンド。これに夏川選手のバットが出かかりました。球審の山口智久さんは一塁の塁審・岸敏幸さんにハーフスイングの有無をリクエストします。この流れにサッと目をやるだけで次のプレーに移ったのが、膳所のキャッチャーでキャプテンの石川唯斗選手です。実は日本航空石川の走者・小板慎之助選手が二塁へスタートを切っていたんですね。石川選手はすぐに二塁へ投げ、小板選手の盗塁を阻止しました。

　何が凄いかというと、石川選手の先を読んだ頭脳プレーです。球審がハーフスイングの有無をリクエストする。普通のキャッチャーならその是非を優先しがちです。しかも、まだまだ野球経験が浅い高校生なら、「振ったんじゃないか？」と塁審のジェスチャーに注視して、動きが止まってしまっても不思議ではありません。リクエストの結果がスイングなら三振となるこのケースでは特にそうなりがちです。

　でも、石川選手はその前に、二塁へ向かう走者をアウトにすることを優先しました。リクエストの結果はノースイングで2ボール2ストライクに変わる形になったため、石川選手が盗塁を刺したことでチェンジとなりました。

　当然、スイングだったならば三振になるため、どちらでも3つ目のアウトを取れるようにしたんですね。しかもショートバウンドだったため、もしスイングなら一塁へ投げて第3アウトをとる必要があったことになります。

　打者のアウトか否かを優先するのか、走者の盗塁死を狙って二塁へ投げるのかの選択は難しいはずです。インプレー中だから当然だと思っていても、中々できることではありません。敗れはしましたが、キラリト光る場面でした。

　ハーフスイングのリクエストの結果は、プレーの後でも確認できます。その前にまずやるべきプレーは何か。全国のキャッチャーの皆さん、ぜひ考えてみてください。

　大会第2日の結果です。今大会では主演である選手と同じく、グラウンドで試合を作る共演者と言うべきジャッジをする審判の方と一緒に紹介しています。(　)は各都道府県の持ち回りの派遣審判です。

今日は大会第3日。2回戦3試合です。

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(文：松倉雄太)