Column

豊島学院(東京)新聞作りでより理解した大切な仲間たちを陰で支える

2018.05.30

 選手22名(2・3年生のみ)が在籍する、東京都豊島区に所在する豊島学院高等学校硬式野球部。夏に向けて頑張る選手を支えているのが、3年生の後藤杏美さん。2年生の五十嵐花音さん、小林莉緒さんの計3名だ
 学校から電車で1時間移動した埼玉県・坂戸市にグラウンドがあり、決して練習環境が恵まれているわけではない豊島学院の選手たちを、マネージャーたちは一体どんな想いで日々支えているのか、お話を伺った。

選手と一緒に練習できている時間が楽しい!


豊島学院野球部マネージャー

 練習グラウンドが学校と離れている豊島学院。授業が終わってから移動をしていては、練習時間があまり確保できないため、グラウンドでの練習は週末と長期休みの間のみとなる。

 平日は学校の中でできる範囲の練習をしている豊島学院ナイン。マネージャーたちは、選手にとって良い環境を作ることを常に心がけて活動している。
 そのためにも、自分のことだけではなく全体を見渡すようにして、選手から何かお願いをされたときはすぐに動けるように常に準備している。

 広い視野を持って取り組む豊島学院マネージャーたち。そんな彼女たちの主な活動は、練習中に飲むジャグや、軽食で食べるおにぎり作り。また練習中のタイムキーパー、会計、出欠等の事務関係に加え、毎試合ごとに新聞を作成している。

 学校での練習が多い分、トレーニングなどでタイムキーパーをすることが多く、ストップウォッチは欠かせない必須アイテムだと語ってくれた。

 だが、必須アイテムはストップウォッチだけではない。今年になって選手たちが、野球ノートをローテーションで回すようになったことに影響され、マネージャーたちもグラウンドに行ったときはノートを書くようにし始めた。
 ノートにはその日の練習の内容や気づいたことなどを書きこんでいる。そのおかげで、マネージャー同士の情報の共有ができただけでなく、意思疎通が図れたことで仲が深まったという。

 多くの仕事をこなす豊島学院マネージャーたちは、ノックの球出しやおにぎり作りなどの仕事をやっている時に、ありがとうと言われる瞬間にやりがいを感じている。
 それと同時に、ノックの球出しの手伝いは選手と共に練習をしている感覚があり、1番楽しい瞬間だと答えてくれた。

 日々選手たちを支えるマネージャーたちだが、試合の時に選手たちが試合でヒット打つ瞬間に思わず胸キュンしてしまうとか。
 そうやって選手のことをよく見ているからこそ、公式戦のベンチの様子の雰囲気を察することができている。今春、予選で日大鶴ヶ丘と当たった時、強豪相手だがベストを尽くそうという雰囲気がベンチに漂っていたと感じている。その雰囲気が印象的だったので、思い出深い試合だと話してくれた。

 次のページからは後藤杏美さんに代表して、質問に答えて頂いた。

[page_break:陰で支えつつ大切な仲間たちと一緒に夏に向かう]

陰で支えつつ大切な仲間たちと一緒に夏に向かう


選手と共に笑顔でガッツポーズ!

 中学時代は吹奏楽部に所属していた後藤さん。しかし、入学して1ヵ月経った5月に野球部にマネージャーがなかなか入らないとの話を聞き、体験に行ったことがマネージャーになるキッカケだった。

 練習場所が離れていることなどもあり一度は断念したものの、6月にもう一度チャンスが巡ってきた。
 体育祭の競技中に、野球部がマネージャーを募集中だとPRしているのを見て、「一度体験に行っている私しかもういない」と使命感を感じ、少し遅れる形となったが、マネージャーとして野球部に入部した。
 今振り返ると、この出来事がマネージャーになる決め手となっただけでなく、印象に残っている出来事だったと後藤さんは語る。

 早い時は朝の4時頃の電車に乗って練習に向かうこともあり、マネージャーになったおかげで朝が強くなった後藤さん。マネージャーという活動を通じて、人として成長を続けているが、挫折した時期があった。

 日々の活動で彼女が苦労したのが1試合ごとの新聞作りである。この仕事は、自分たちの代となり始まったものである。しかしスタート時は写真の入れ方やまとめなどやり方がわからず、苦労して挫折しかけたと語る。

 だが選手に新聞を渡す時に喜んでもらえることに嬉しさを感じるだけでなく、選手のことがわかるようになり、視野がより広くなった。今では新聞は欠かせないモノとなっている。

  新聞という初めての試みに、日々の仕事で苦労をした後藤さんは、学校の友人から「野球部に大切にされている」と思ってもらえるほど、みんなと毎日活動できていることに嬉しさを感じている。特に「後藤でよかった」という選手からの一言は特に心に残っている。

 最後の夏まで残り1ヵ月ちょっととなったが、昨年の夏は苦い経験をした。常に明るく、笑顔が絶えない先輩の引退がかかった、昨夏の初戦・海城戦。途中までリードしていたが、延長で逆転サヨナラ負けを喫している。

 ベンチに入れなかったためその緊迫感まではわからなかったが、リードしていたにもかかわらず、劇的な幕切れだっただけに印象に残っている。

 最後の夏を迎える選手たちに「いつも頑張っているのはずっと見ているので、残り短いけど頑張ろう」エールを送る後藤さん。彼女にとってマネージャーとは、「陰で支える存在」だと語る。

 選手がすべきことは選手がやり、自分たちはあくまで陰で支えることがメインだからこそ、表には出すぎないようにしている。

 理想のマネージャーになることを目指している後藤さんだが、周囲への気配りを忘れず、選手の考えなども汲み取れるようになることも目指している。
 そのためにも新聞を作ることで選手のことをよく理解しようと頑張っている。大変ではあるが、周りを見る目が養われ自身の成長に繋がっている。

 「自分の姿を後輩は見ている」という自覚、責任感を持って毎日を過ごしている後藤さん。また、野球部に入ったからこそ、今の自分があるとも感じている。そんな後藤さんと豊島学院の夏に注目していきたい。

文=編集部

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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