【インタビュー】阪神タイガース 鳥谷敬 選手
聖望学園時代は、3年夏の甲子園出場。初戦では、リリーフでマウンドに上がると最速143キロをマーク。投手兼遊撃手として活躍をみせた。
高校卒業後は、早稲田大に進学。東京六大学リーグ最速タイとなる2年の春に『三冠王』を獲得。4年時には二度目の首位打者、さらにベストナインには通算5回選出された。
2004年に阪神に入団してから今日まで、着実に結果を積み上げてきた鳥谷。
そんな鳥谷が今、求めている“力”とは?
選手のスピード感と判断力によって、一つ先の塁にいけるかどうかが大事
鳥谷敬選手(阪神タイガース)
――NPBでは統一球の導入によって、スモールベースボールの重要性が謳われてきました。鳥谷選手自身が、何か野球自体が変化してきたなと感じることはありますか?
鳥谷敬選手(以下「鳥谷」) そうですね、統一球を導入したことによって、ホームランの年間の本数も100本近く減っていますよね。点を取る手段も、個人の能力で一発逆転を狙うという野球が出にくくなってきました。そういう意味でも、1点を取るためにどうすればいいか。それをさらに真剣に考えるようになりましたね。
プロ野球の場合は、高校野球のように、その試合に負けたら終わりではなく、年間で144試合ありますが、1点の重みがより増してきたという感じはすごくあります。
――その中で、鳥谷選手はどんなプレーを磨いていこうと考えられているのでしょうか?
鳥谷 そうですね、やっぱり盗塁だけではなく、同じ1本のヒットでも、一塁から三塁に行くことも重要になってきますよね。
選手のスピード感と判断力によって、一つ先の塁にいけるかどうかが大事になってきました。バントで、一つ送るぐらいだったら、一つ先の塁を狙うという野球もあるので、そこができると、野球は変わってきますよね。これは、高校野球にも通じる部分があるのではないでしょうか。
走塁は、『スタート』が大事 自分が行けると思った瞬間にスタートが切れるかどうか?
「オフシーズンは体のバランスを整える」
――鳥谷選手がスピードを高めるために、このオフシーズンの時期はどんな練習を行っていますか?
鳥谷 オフシーズンは、まずは身体のバランスを整えることに時間を多く費やします。一年間、同じ方向に走ったり、打ったり、動いたりするので、まずはそのバランスを正すことが第一ですね。体を良い状態にすることが、オフシーズンの第一の目的ですね。
またウエイトトレーニングも行いますが、今は、重量をあげるだけでなく、走りにつながるようなスピード系のトレーニングも考えて取り入れていますね。
――1月以降は、スピードアップのためにどのような練習をされるのですか?
鳥谷 スピードアップのための実践練習を本格的に始めるのは、キャンプからになりますね。僕は走塁は、『スタート』が大事だと考えています。自分が行けると思った瞬間にスタートが切れるかどうかなんですよね。
そのために普段の練習では、例えば打撃練習の中で、打撃投手が投げている時に、スタートを切る練習をします。その時に、ピッチャーの足が上がったからスタートするではなくて、フライング気味に走ることを意識して、スタートを切る練習をすると、実際に試合になった時にそれがちょうどいいタイミングになるんですよね。
試合に入るとどうしても、慎重になってしまいますから、フライング気味にスタートを切る練習を重ねておいたほうが、本番ではちょうどいい!というのが僕の考え方ですね。
――なるほどですね。鳥谷選手は、3年連続で二桁盗塁も記録されていますね。来シーズンも、さらに盗塁数を積み上げていきますか?
「軽いスパイクは走っている時の違和感がない」
鳥谷 そうですね、大事な場面で一つ先の塁を取れたら、試合の流れも違ってくるので、チームとしての役割も意識しながら、狙っていきたいですね。
またスパイクにしても、今年はより軽くなったスパイクをシーズンの頭に試し履きして、少しずつ改良してもらいながら、いいスパイクになっていったので、来シーズンもそのスパイクを履いて、しっかり成績を残したいと思っています。
やっぱり、重さがあるスパイクだと走っている時の違和感につながるんですが、軽いスパイクはそれがないので、体への負担は確実に減りますね。守備でサイドに動いてもブレがないので、そういうのは、すごくいいなと思います。
――野球用具も一つの武器になるのですね。では、最後に高校球児の皆さんにメッセージをお願いします!
鳥谷 僕自身、今はスピードアップを目標として、練習に取り組んでいます。でも、高校時代はそういった目標を持って練習に取り組むことが中々出来ませんでした。
大学に入ってから、徐々に自分で考えて、毎日の練習の目標と目的を持つことの大切さが分かってきた。でも今振り返って、もっと早くからそういった取り組みが出来れば良かったなって思うんですよね。それが早ければ、早いほど僕はいいと思います。
だから高校生の皆さんも、毎日の目標を持って、自分が今何をしなければならないのかを考えながら、練習に取り組んでもらいたいなと思いますね。
鳥谷選手、ありがとうございました!2013年は鳥谷選手が魅せる“スピード”にも注目です!