田宮 裕涼選手 (成田)
寸評
今年の千葉県。全国的に見てもトップクラスのキャッチャーではないだろうか。また全国の捕手との相対評価で、侍ジャパンU-18代表の候補に入っていい選手だといえる。 (昨夏からの成長) 昨夏から正捕手として16強入りしているが、スローイングは強く、狙い球を外すリードも非凡なものがあった。ただ打撃が弱く、公式戦でアピールすることができなかったが、この夏は大成長。打てて守れて走れるスーパーキャッチャーへ成長を見せている。 (打撃) まず打撃でよくなったのは引っ張れる打球が多くなったこと。去年の田宮はただ合わせただけの左方向への打球が多かった。そこが物足りなさを最も感じた部分でもあったのだが、この夏は準々決勝まで2本塁打を打っているように、ひ弱さを改善。今まで田宮を同じタイプの栗原陵矢(ソフトバンク)と比較しながら見てきたが、栗原の高校時代よりは上だといえる。 そんな田宮の打撃について考察をしていきたい。田宮はオープンスタンスで構える選手。グリップは肩の位置において背筋を伸ばしてバランスよく構えることができる。田宮は投手の足がおりたところから始動を仕掛けていき、小さく足を上げていきながら、間合いを図っていく。始動の仕掛けは早く、トップの立ち遅れもなく、振り遅れが少ない。 田宮が凄いのはここから。トップを取ったとき、バットを寝かせ気味にしている。高校生打者で、バットを寝かせ気味にして打つ選手で、インコースの捌きがうまい選手はかなり少ないが、田宮は別。右ひじと左ひじをしっかりとたたんで、肩口から振り出し、へそより前に出す感覚でバットを振っているので、的確なミートポイントでボールをとらえることができる。ここまで無駄のない打撃フォームをした高校生は少ない。また田宮は下半身の粘りもあり、春季大会では外角低めの緩い変化球を左中間に飛ばしている。高校レベルにおいて穴が小さい選手となった。 (守備) 守備では、小さくかがめ、ボールを吸い込んでいくような柔軟なキャッチングに加え、スローイングタイムは1.90秒~2.00秒台とドラフト候補として平凡なタイムも、スローイングミスが少ない安定した送球技術。テンポの良さを促し、140キロを出す投手ではなくても、相手打者の狙い球を外すリード、そして周りへの気配りの良さとまさに捕手らしい捕手だ。 今年の成田の投手陣は千葉県内でも中の上のレベル。さらに多古、千葉黎明と実力校との対戦が続いても勝利できたのは田宮のインサイドワークによる部分が大きいだろう。
更新日時:2018.07.22
将来の可能性
春までの印象としては攻守の総合力は高くても、大学経由という印象が強かったが、この夏の驚異的な活躍を見ると、高卒プロとしても面白い選手ではないだろうか。捕手として力量はもちろん。打撃もNPBの二軍でも打率.200前後は残せそうな打撃力はついてきた。それでもプロに通用するにはかなりの時間を要するが、田宮グラウンドでの立ち居振る舞いや勝負所での勝負強さを見ると、激しい競争社会でも生き残れる素養は十分に感じる。 この夏のあと、田宮はどんな進路を選択するのか、とても楽しみな選手だ。
更新日時:2018.07.22
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