津留崎 大地選手 (成田)

寸評

　また成田に有望投手が現れた。その名は津留崎大地。鎌ヶ谷二中時代は千葉県選抜に選出されている。とにかく一生懸命、練習取り組む選手であり、メキメキと頭角を現してきた。背番号「１８」で臨んだ秋季一部予選では東総工業戦で1失点完投勝利を決めて、主戦投手の座を手中として、臨んだ県大会ではいきなり習志野と対決。5失点で習志野に惜敗したものの、夏ベスト８の習志野に対して、堂々と最後まで投げ切った。課題は多いが、先が楽しみな逸材といえるだろう。 右スリークォーターから投げ込む直球は常時130キロ～135キロ前後（最速139キロ）を計測。一次予選から回転の良いストレートを投げ込んでいたが、県大会では更に鍛え上げてコンスタントに135キロ前後を計測。ストレートの勢いは高校1年生にしては合格点で、指先にしっかりと力が伝わりキレのあるストレートを投げ込むのは成田高校の伝統になりつつある。ただこの勢いのあるストレートの割には空振りが奪えていないのが課題であろう。 変化球はスライダー、カーブ。カーブもややスラーブ系統なので、横の揺さぶりで勝負していく投手。まだ縦の変化球はない。右打者、左打者ともに両サイドへ投げ分けていきながら、変化球を交えていきながら打たせて取っていく。この投手は押す投球とかわす投球の使い分けが上手く、慎重な打者にはストレートで押していき、相手が積極的になったらかわす投球を見せる。中々考えた投球が出来る子で、ただ気持ちの強さだけではない。ゲームメイク能力は持っている。習志野の打者はしっかりと彼のことを研究していたのか。ストレートにもついていくし、スライダーにも対応する。でもそれを上回るストレートの伸び・変化球の切れ・投球術を極めていきたい。 クイックタイムは1.2秒前後と平均的なタイムを計測。フィールディングの動きは悪くない。牽制も鋭く、鋭い牽制を見せていたのは意外であった。ピンチになると間を外すのも上手く、危機回避能力には優れている。ただ不用意に四球を出してしまうのはランナーを溜めてしまうことが多く、何か勿体ない印象を受けた。 （投球フォーム） ノーワインドアップから入る。左足を勢い良く足を上げていき、真っ直ぐと立つ。また彼は左足を上げきると同時に踵を上げるヒールアップ投法だ。 左足をショート方向へ足を伸ばしていき、接地する。お尻から先行して落ちず、接地の間が早く、投げ方としてはスリークォーター気味なので、縦系のカーブ、フォークを習得するには難しい球種であろう。 左腕のグラブを捕手方向に向かって正対させていく。すぐに左肩を開かずにぐっと抑えてから左胸に抱え込んでいく、開きを抑えることができ、テークバックは右ひじを折り畳むように取っていき、しっかりとトップを作る。そこからリリースに入る。 肘をしならせて打者よりで離すことができており、リリースでしっかりと力を伝えられている。最後のフィニッシュではしっかりと振り切るが、蹴りあげも良く、体重移動もしっかりしている。まだ体力不足なのか膝の割れが目立つが、速いストレートを投げる上では理にかなった動きをしているのではないだろうか。 投球フォームには大きな欠点はないといえる。ただスムーズすぎて打ちやすさを感じるフォームであり、もう少し打者を意識し、間の取り方を覚え、打ち難さを求めるフォームに改良することが出来れば、打ち辛さは増していくだろう。中川諒のフォームに近づいてきているといえる。

将来の可能性

　まだ1年生ということで基礎体力は足りない部分はあるが、習志野戦では最後までストレートの勢いが衰えないまま完投。7，8回にへばっていた一次予選よりもだいぶ逞しくなってきており、1か月で完投できるスタミナがついてきたのは好感がもてる。 現状のフォームだと縦の変化ではなく、ストレートのキレと横の変化で揺さぶっていく好投手になっていくのではないだろうか。成田は投手育成に定評はあるが、その環境で育っていった投手は皆、自分自身の力で掴んで伸びていった投手。気持ちの強さがなければ台頭することはできない。津留崎大地は自分自身で道を切り開く強さを持った投手であると評価している。東総工業戦ではその可能性を感じさせ、習志野戦の投球、それを確信とさせてくれた。スタミナのなさをこの試合のために強化を図り、完投できるスタミナを修得し、さらにストレートの球速、球威を向上した姿を見て、何が課題なのかを把握し、それに向けて一生懸命努力し、実戦の場で発揮することが出来る投手なのであろう。 タイプとしては中川諒のような投手に育っていく予感を感じさせる。中川を初めて見た時よりもマウンド上の立ち振る舞いが堂々としていた。ああいう若々しい投球は唐川の1年秋を思い出させるものがあった。習志野戦で好投した姿を見て、2年後が楽しみな投手と思わせた。この2年間でプロ入りが狙える投手に成長を遂げることが出来るか。その成り行きを注目していきたい。