大塚 尚仁選手 (九州学院)

寸評

　1年夏の甲子園のマウンドを踏んできた大塚も最終学年を迎えた。昨年の選抜では国学院久我山戦、履正社戦ともに打ち込まれ、悔しい結果に終わったが、一年経って実戦派左腕として成長を遂げた。大阪桐蔭戦では5失点はしたものの、確かな成長を感じさせるピッチングではなかったないだろうか。 （投球スタイル） 　彼の持ち味は左スリークォーターから投じる対角線に切れこむ球筋だ。その球筋は打ち難く、左打者から遠ざかるように感じる。一年からその球筋で勝負していたとはいえ、威力不足で、打者からそれほど苦になる球質ではなかったが、一年経ってクロスファイヤーが売りに出来るレベルにまでなってきた。 　左スリークォーターから投じる直球は常時125キロ～130キロ前後(最速136キロ)を計測。ストレートのスピードは去年とさほど変わりないものの、打ち難いコースへしっかりと決まるようになった。特に左打者には強くなり、インコースストレートを見せ球にして、踏み込ませないようにして、アウトローのストレートで見逃し三振。あるいはアウトコースを意識させ、インローにスクリューで落として三振を狙う。 　その彼にも課題がある。右打者に弱いことだ。女満別戦・大阪桐蔭戦を合計して被安打を打たれている。打たれる球を調べると、外角に浮いた直球、コーナーに外した変化球が真ん中に入って打ちこまれている。右打者の外角へ浮いた直球が打ち込まれる。クロスで勝負する投手の共通する課題だ。右打者の被安打率は打率.239（46打数11安打）。それほど打率は悪くないのだが、やはり打たれた印象が悪すぎた。 （投球フォーム） 　 　ノーワインドアップから始動する。右足を真っすぐで上げていき、左足は一本足で上げていく。重心を下げていき、インステップ気味に着地する。捻りが小さく、腰は横回転なので、横向きの変化球で勝負していく投手だろう。 　右腕のグラブを斜めに伸ばしていきながら、開きを抑えていき、肘をしっかりと上げて、リリースに入る。横山 雄哉（山形中央―住友金属鹿嶋）に似てきたフォームで、横の球筋で勝負する投手と呼べる。昨年は開きが早く、体重移動の乗りも不十分で、実戦派投手として課題が多い投手だと感じたが、開きも抑えられて、ボールにしっかりと力を伝えられるようになってきた。

将来の可能性

　以前よりもクロスに食い込む直球には威力が増してきて、左に強い実践派左腕として強みが出てきた。ただ右打者の攻めに課題を残し、特にアウトコースの抜け球が多く、痛打される場面が目立った。夏へ向けてというより、上のレベルで活躍するには右打者を抑え込む絶対的な武器が必要であろう。下級生から緩やかな成長曲線を描いており、課題を把握してレベルアップ出来る姿勢を持ち合わせているので、夏へ向けて、新たな武器を習得してほしい。 　 　大阪桐蔭戦で逆転3ランを打たれた経験は今は苦い経験だと思うが、それが後々喜びに変わる経験だったと思わせる成長に期待したい。