釜田 佳直選手 (金沢)

釜田 佳直

球歴:金沢

都道府県:石川

ポジション:投手

投打:右 / 右

身長:177.0 cm

体重:77.0 kg

学年:卒業

寸評

「変貌!」 今年の高校生で最も速いストレートを投げるであろう釜田佳直。しかし150キロは出るのに簡単に当てられてしまう現状に歯痒さを感じたのは本人も強く感じたはず。今年の選抜はスピードの拘りを捨てながらも実戦派に求め見栄えのする本格派右腕になった。150キロを投げられる投手が変にまとまらずに凄みのあるスタイルに変貌したといっていいだろう。初戦で敗れたものの、本当の意味で豪腕に化けそうな予感がした釜田投手の投球を振り返りたい。 (投球スタイル) ストレート マックス150キロ 常時140キロ~147キロ スライダー 125キロ~135キロ 縦のスライダー 125キロ前後 カーブ 115キロ前後 ストレートのスピードは出ていても、当てられていたストレート。それは角度が低い平面的な投げ方が影響していたと考えられる。だが選抜ではフォーム修正したことでストレートに角度のあるストレートになり、威力・伸びも出てきたストレートに変貌した。誰が見ても惚れ惚れするようなストレートになった。縦のスライダー、カーブ、チェンジアップと以前と変わらないが、スライダー以外の変化球の切れが格段に増した。そして速球、変化球ともに低めに集まる点は素晴らしい。展開に応じて速球中心、変化球中心の投球に切り替えて狙い球を絞らせない投球を見せている。投球の完成度においては並みの高校生では到達できないレベルに達している。完全試合が潰えるまでの投球は凄みがあった。ただそれでも野球は簡単に勝てるものではないのだ。 (クイックタイム・牽制など) 以前は1.1秒台のクイックを見せていたものの、反動をつけて投げるようになったため1.2秒~1.3秒。セットに入ってからも制球力も悪くなってしまった。人間、得るものもあれば、失われるものもある。彼は投球に変化をつけようとフォームに変化をつけた。結果的にランナーを置いてからの技術に粗が出来てしまったが、それはこれから変えていけば良い。フィールディングも反応は良いので、身のこなしの良さは光る。気になったのは牽制をあまり入れなかったこと。また自分で間を変えることはなかった。自分で落ち着かせることもなく、すぐに投げ急いでしまう。投球の完成度においてはドラフト上位級だが、逆境になった時の自分をコントロールできる術がなかった。まだ隙を残す投手だが、彼が求められるレベルというのはかなり高度なものである。加古川北のようなチームだからこそ粗を発見することができたと思う。 (打者の攻め) ・右打者 外角中心にストレート、変化球を自在に投げ分けていきながら抑えていく配球だ。この投手が上手いのは状況によってストレート中心、変化球中心の投球を分けて抑えることができていた。ただ後半以降の投球はやや単調気味に走ったのか。素直に入ることが多く、隙を感じられた。またインコースを攻めようとするとすっぽ抜けてしまう状態。インコースのストレートを使えなかったのが大きかった。これは調整不足によってインコースを厳しく攻めるまでの精度は仕上がっていかなったと考える。 ・左打者 左打者も右打者同様。左打者には外角中心にストレート、変化球を中心に投げ分けていきながら抑える配球。昨年よりも速球の精度、変化球の威力が増し、落ち着いた投球が出来るようになっている。 昨年よりもストレートの凄みが増して、狙ってストレートで空振りが奪えるほどになり、ようやく本格派らしい投手になってきた。一方でランナーを置いてからの投球に課題を抱えている。石川県は星陵遊学館といった強豪校が虎視眈々と狙っているだけに地元でもポテンシャルだけで圧倒できるとは限らないので、間合いの取り方、セルフコントロールを自分なりで学んで欲しい。 (投球フォーム) 昨年の時点でフォーム分析は済ませている。変わった点を。 踏み出し やや軽く左足を引いてリフトアップ→大きく左足引いてリフトアップして勢い良く踏み出すようになった。 リフトアップ 軽く左足を回し込む→頭上の近くまで高く足を上げる  一番変わったと思う箇所だろう。大きな反動は使わず小さい反動で投げていたフォームから勢い良く足を上げて反動を使うオールドスタイルに。捻出されるエネルギーは昨年のフォームに比べれば段違いだ。ただエネルギーが多いことは消耗度も高いこと。後半にバテテしまったのは反動の大きいフォームにある。一長一短のフォームなので、今後はフォームの捻りを小さくするか。このフォームを固める為に更に体を苛め抜く。この二択だが、 個人的には次の動作がスムーズに行うことができれば、捻りは小さくても許容範囲だと考える。 インステップ→真っ直ぐステップ 彼が飛躍的に成長を遂げることができるようになったのはステップを真っ直ぐにできるようになったことだと考える。昨年のフォームで疑問を感じていた。150キロを超える馬力がありながらそれを阻害する動作は勿体ないと思っていた。そして横振りのスリークォーター。平面的になり角度もないストレート。当てることには容易いストレートだった。しかし選抜では違った。まだ着地の粘りには欠くものの、インステップすることはやめて上からどっしり踏み込むようになり、上から強く振りぬける投球フォームになった。打ちづらさを追求したというより、変に勘違いをせず打ち辛さ・実戦的なフォームを追求できたと思う。よく打ち辛さを意識してインステップする投手が見受けられるが、私はそれには強く疑問を感じている。特に釜田クラスの剛球を投げる投手が高いエネルギーをロスするような投げ方は寧ろマイナス。145キロを超えるストレートを活かすためにまずは足を高く上げて間を作り、真っ直ぐ踏み込んで溜めてきたエネルギーをロスしないようにする。そしてテークバックは入りすぎずにコンパクトに取り、体に近くで腕を振る。角度・コントロールを意識した投球フォームになり、結果的に打ちづらさが増した実戦的な投球フォームになった。打ちづらさという答えを求めすぎていて足し算ができていない投手が多い中で彼はしっかりと計算尽くしで打ち辛さを意識した投球フォームになったと考える。エネルギーの消耗度が大きいフォームになったが、これほど意識の高い彼ならばきっと変化を変えることができると思う。
更新日時:2011.04.03

将来の可能性

自分の課題をしっかりと把握し、着実に成長を見せており、本当に凄みのある本格派右腕になってきた。まだ細かいところに注文をつけると課題はあるものの、それを乗り越えていける資質はあるように感じた。一つ向上したらまた課題が見つかる。夏までに課題が見つけられたことは本人にとっても収穫のある敗戦だったと考える。こういうサイクルを繰り返して選手というのは成長していくものだとこの投手を見て感じる。 ドラフト的観点で見れば上位24人以内(ドラフト2位以内)に入る可能性を持った右腕。更なる高みを目指し、松坂、寺原、由規といった怪物といわれる投手たちに並ぶことを期待したい。
更新日時:2011.04.03

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