堅田 裕太選手 (関西)

寸評

中国地区屈指の左腕。1年秋からエース格として活躍し、その能力の高さに02年春のエース宮本賢（日本ハム）2世と呼ぶ声が多かった。 ただ制球力のある宮本と比べると如何せん制球力の粗さが気になった投手であった。高校生の左腕として頭一つ抜けたものはあるが、制球力を向上し、投球に緻密さがなければ高卒プロは難しいと今年の選抜で評価していた。 そしてほぼ完璧な投球で中国大会優勝に貢献し、自信と共に神宮大会に臨んだが、制球が荒れて本来の投球ができなかった。 未完の大器はいつ花開くのか。神宮大会から投球を振り返っていきたい。 （投球スタイル） ストレート　常時135キロ～140キロ スライダー　120キロ前後 シュート　　125キロ前後 チェンジアップ120キロ前後 カーブ　95キロ前後 サイド気味に投げる投球フォームから投げ込む直球は常時135キロ前後(マックス140キロ)を計測。彼のストレートはキレ型ではなく、球威型。そのため球速表示ほどスピードを感じない。変化球は多彩で、使い方が上手い投手だ。スライダー、チェンジアップ、シュート、カーブを投げていく。変化球の切れは良く、特にシュートは外角低めに沈むので、右打者にはかなり有効的。チェンジアップは手元で落ちるので、うまくタイミングを外して空振りを奪っている。彼のスライダーは鋭角に曲がるものではなく、抜けたように入るスライダー。しかしこのスライダーが思った以上にはまって空振りを奪うことができている。 ストレートのコントロール、投球テンポを改善すれば更に成長が見込める。 一見緻密さを欠く投手にように思えるが、多彩な変化球を操っているのを見ると指先の感覚が器用な投手ではないだろうか。腕をぶん回す投げ方なのに、変化球をコントロールできていること自体、凄いことである。ただ今のままでは上のレベルでは厳しい。 （クイックタイム・牽制） クイックタイムは、1.4秒～1.5秒前後と遅い。また、クイックをしてコントロールが乱したり、フィールディングの機敏さなど身のこなしで課題はあるが夏まで時間はある、課題を持ち更なる成長を期待したい。 （打者の攻め） ・右打者 外角中心にストレート、スライダーを投げ分けながら追い込むとチェンジアップ、シュートを投げて決めにかかっており、投球の攻めは確立しているように感じる。ただストレートのコントロールが悪く、ストレートを投球の中に組み立てることができていない。 ・左打者 外角中心にストレート、スライダーを織り交ぜながら打ち取って行く配球。追い込むとインコースにシュートを投げて三振を奪っており、両サイドに変化球を散らして投球を組み立てることができている。ただ右打者同様、ストレートのコントロールが悪いため、変化球でしか打ち取れない。イニングを重ねるごとにストレートのスピードが落ちてきており、自分を苦しめているように感じた。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （投球フォーム）　　　 ワインドアップから入る投手。右足を巻き込むように上げていく。ただこの時に体が丸まり、ふらついた立ち方になってしまいバランスは良いとはいえない。それから二塁方向に足を送りこんで、ステップしていく。テークバックを見ると後ろが大きく、体が遠ざかっている。それから腕を振るのではなく、腕をぶん回すような腕の振りをしているため、どうしてもコントロールが定まらない。また右手を使い方があまり上手くなく、左腕だけで投げている感覚なためリリースポイントが定まらず、コントロールを乱している。テークバックと右腕のグラブの使い方が上手くならないと制球力を向上させるのは難しい。ただ独特のメカニズムで投げる投手なので、矯正するのはかなり難しいと考えられる。彼のような癖のあるフォームは本人が試行錯誤をしながら作り上げていくしかないだろう。

将来の可能性

ほぼ完璧な投球を見せていた中国大会と比べると出来は最悪といってもいい神宮大会。しかし選抜から指摘した技術面の粗さは変わっておらず、その課題を克服しない限り、制球難に苦しむのではないかと思っている。心配なのはこの日の投球で投げる自信を失ってほしくないこと。生観戦では気づけなかったが、テレビ中継では彼が苦しんだ表情を映し出されているのを見て、かなり苦しんでいるのが見て取れた。神宮大会の投球は最悪だったと割り切るしかないだろう。 課題も多く、現状では高卒プロとしては厳しいという評価。ただ素質は確かなものがあるし、素質が花開けばいずれドラフト候補として騒がれる時が来るだろう。その時までに腐らずに練習に取り組んでほしい。