葛西 侑也選手 (大垣日大)

葛西 侑也

球歴:大垣日大

都道府県:岐阜

ポジション:投手

投打:左 / 左

身長:176.0 cm

体重:73.0 kg

学年:卒業

寸評

東海地区を代表する技巧派左腕・葛西侑也。恐らく高校2年の左腕投手の中で最も修羅場を潜り抜けた投手であろう。1年秋はハイレベルな東海地区を勝ち抜き、優勝。そして神宮大会では優勝投手。今年の選抜ではベスト4。夏では県大会準決勝(2010年07月25日)で敗れたが、26イニングを投げて2失点の快投、そしてこの秋も東海大会優勝、神宮大会ベスト4まで投げ抜いてきた。神宮大会の登板した中では実戦力NO.1の左腕だろう。葛西 侑也の投球を振り返っていきたい。 (投球スタイル) ストレート 133キロ 常時 125キロ~130キロ スライダー 115キロ前後 カーブ   110キロ前後 左サイドから投げ込む直球は常時130キロ前後と選抜とそれほど変わりはないものの、以前よりはだいぶ威力が出てきたように感じる。それは下半身が太くなった影響が大きいと思う。選抜と比べると腰周りががっしりし、太もももだいぶ太くなってきた。下半身強化が球威アップにつながってきたのではないだろうか。 彼の武器はなんといってもサイドから投げ込めるスライダー。テークバックを見ると左腕が背中側に入るので、出所が隠れ、そこから腕を振るわけだから、左打者にとってはかなり打ち辛いものだろう。1年生のときと比べると球威自体は向上してきたが、投球スタイルは変わってきていない。選抜大会の投球を見て、私はストレート、スライダーのコンビネーションだけでは幅の狭さを感じる時期が来るだろうと指摘した。 しかし彼は徹底とした走り込みで下半身を鍛え上げ、速球の威力と低めの制球力が向上したことにより、以前よりも自信を得たように感じる。投球自体に迷いがなくなり、抑えても、打たれても、腕を振るようになってきた。少しずつではあるが、良くなってきている。やはりシュート系の変化球がないのが気がかり。恐らく投げているのかもしれないが、目に見えて効果を発揮しているようには感じない。 (クイックタイム・フィールディング・牽制) クイックタイムは1.20秒~1.30秒前後とまずまずのタイム。牽制は非常に上手く、先の塁を盗むのが難しい投手だ。フィールディングを見ると動き自体は良いものの、ボールの処理が雑。まだまだ投球以外の技術に課題を残す。 (打者への攻め) ・右打者 両サイドにストレートを投げわけ、インコースにスライダーを投げ分ける。打者によって高めの釣り球で空振りを奪ったり、低め一杯のストレートで空振りを奪ったりと打者によってバリエーションを変えてきている。目先を変えてカーブを投げているが、個人的にはシュートをマスターすると目に見えて効果を発揮すると思うので、是非マスターしてほしい。 ・左打者 外角中心にストレート、スライダーを投げ分ける配球。外角に絶妙にコントロールができており、特にスライダーが外角ぎりぎりに決まっており、左打者はしっかりと踏み込まないと打てない。このスライダーが決め球になるのだが、今の彼は1年生のときほどスライダーに頼らなくなった。この投手は虚を突くようにインコースを攻めるようになった。外角、外角と意識させておいてインローをズバッと攻めて見逃し三振を取る。1年生のときはスライダーに頼ってきていたが、現在はストレート中心。スライダーという決め球はあるが、極力使わず、ストレートで打ち取ってきているのは1年よりも成長した点である。 (投球フォーム) この投手を語る時に欠かせないキーワードは体の柔らかさだろう。テークバックで左肘を隠し、そして股関節の柔軟性を活かし、球持ちは良い。出所の見づらさ+球持ちの良さ。打者にとっては相当打ちづらく、120キロ後半でも、体感速度はそれ以上に感じているのではないだろうか。 細かく分析してみる。技巧派投手でありながらワインドアップから入る。右足の膝を頭上の近くまで上げていく。踏み出しからリフトアップまでの勢いが良く、ここでエネルギーを捻出している。そこからぐっと体を沈み込ませていき、右足を一塁側に伸ばし、足の裏側をホームベースに見せながら着地のタイミングを遅らしている。非凡なのがここからだ。テークバックは背中の後ろに入るぐらい深く取るが、左肘を折り畳む具合が他のサイドスローと比ではない。ここまで折り曲げながらも肘が立っており、リリースを見ると肘が下がらずに腕を振ることができている。サイドスローというよりスリークォーターと表現したほうがいいだろう。球持ちも良いし、フィニッシュも下半身が強くなった事で、体が流れる事が少なくなってきた。まさに打ちづらさを活かした投球フォーム。選抜よりも投球フォームは安定してきた。
更新日時:2010.12.21

将来の可能性

選抜と比べると緩やかではあるが、成長はしてきている。今の投球スタイルに自信を得た彼に高校生で打ち崩すのは難しくなってきた。それでもまだ物足りない。理由はひとつシュートをマスターしていないからだ。ストレートとスライダーのコンビネーションならば高校生の間では通用する。しかしそれから上のレベルで活躍するとなるとシュート系の変化球を使えるようにならないと厳しいと考える。 彼のような投手は驚くような急成長を見せるというより緩やかながら少しずつ成長していくタイプのように感じる。こういう投手は貴重だ。速さで売りにする投手が多くなっただけに相手を打たせることに追求した投手は上の世界では貴重だ。大学、社会人を経て大人の体になった時、この投手の「旬」が来るのではないだろうか。今後に期待したい。
更新日時:2010.12.21

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