尾松 義生選手 (明徳義塾)

寸評

　神宮大会の模様でも、レポートした選手です。一冬越えて、どのように成長してきたのか改めて考察したいと思います。　 （投球スタイル） 　名門・明徳義塾のエースだけに、試合を壊さないでまとめる安定感のある投球が魅力です。球速こそ１３０キロ前後ぐらいでも、昨秋よりも少しボールに、打者手元でグッと来るような勢いが出てきました。球種のほとんどは、左腕らしい大きなカーブとのコンビネーション。この投手の生命線は、カーブがいかに低めに決まるかではないのでしょうか。 　左打者に対しては、両コーナーにボールを投げるわけることができています。またカーブも、結構低めに集まります。しかし右打者には、コースの投げわけもアバウトになり、高めに甘く入るカーブを全国レベルの強力打線は見逃してくれませんでした。やはり多少ボールに勢いが出てきたとはいえ、１３０キロソコソコの球速ならば、甘く入れば打たれてしまうのは至極当然。その辺は、改めて選抜で強く痛感したのではないのでしょうか。それでも１１安打・５四死球を与えながらも、８回を投げきったあたりは、さすがとも言えるでしょう。 　秋からの成長は、牽制に鋭さを増し、刺せる牽制に変わってきたこと。そしてクィックも０．１秒ぐらいタイムを縮めることができており、そういった投球以外の部分にも意識が行くようになってきた点ではないのでしょうか。ゆるやかながらも、着実に投手としての完成度を高めています。 （投球フォーム） 　引き上げた足を空中でピンと伸ばす動作がない割には、お尻を三塁側（左投手の場合は）に落とせている。これにより、身体を捻り出すスペースができるので、見分けの難しい上のレベルでも通用するカーブを投げることができる。フォークなどの縦に鋭く落ちる球種の修得も期待できるのだが、上背が小さいだけに手が小さかったりして、しっかり挟めない可能性は否定できない。そのためこれからは、いろいろ工夫して縦の変化も身につけていってもらいたい。また着地までは、あっさり地面に降ろそうと言う意識はなく粘りが感じられる。これによりフォームの淡泊さがなくなっているのは、実戦派らしい彼の良さ。 　グラブを内に最後まで抱えられているものの、最後後ろに抜けそうになってしまい、両サイドの投げ別けにも微妙に影響していそう。更に足の甲の押しつけも、時間的に短く浅い。こうなると、ボールが高く上吊る要因になっているのかもしれない。一番気になるのは、腕を振り下ろす際に、かなり無理して腕を引き上げている点。角度は生めているのだが、身体への負担も少なくない。テイクバックした時も、背中よりも後ろまで肩が入っていることもあり、故障には充分注意したい。 　投球の４大動作にあたる「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点では、「球持ち」「体重移動」も悪くないし、「着地」までの粘りも作れており、身体の「開き」も遅くて、ボールの出所も見難いはず。１３０キロソコソコの球威・球速でも、相手を抑えられるのには、実戦的なフォームとマウンド捌きに大きな要因がありそうです。

将来の可能性

　すでに投手としての形が出来上がっている投手なので、秋からの大幅な成長は観られませんでした。それでもボールに勢いが出てきましたし、牽制やクィック動作などの細かい部分まで意識を通わせ成長を遂げてきた点には、意識の高さを感じます。まだまだ右打者への制球力中心に、投球に甘さと球威の物足りなさは感じさせます。しかし更に夏までに成長を遂げれば、大学など上のレベルでの活躍をも期待させます。まずは、この経験を元に、改めて全国で通用する術を磨いて欲しいと思います。緩やかながら、着実な成長を感じました。