島袋 洋奨選手 (興南)

島袋 洋奨

球歴:興南

都道府県:沖縄

ポジション:投手

投打:左 / 左

身長:173.0 cm

体重:65.0 kg

学年:卒業

寸評

新チーム結成以来、15試合で失点は僅か1。まさに完全な状態で、甲子園に乗り込んで来るはずだった。しかし大会前に体調を崩し、大阪に乗り込んでからの練習試合では調子が上がらずに打ち込まれた。それでも選抜大会では、天性のピッチングセンスと勝負どころでの絶妙なコントロールを駆使し、悪いながらも要所を締め、チームを全国優勝に導いた。果たして島袋 洋奨は、単に調子が悪かっただけなのか?本当に成長していたのか?今回は、検証してみたいと思う。 (投球内容) 今大会の島袋は、緒戦の関西戦(2010年03月26日)と智弁和歌山戦では、ヒットは打たれるが三振も奪う と言う試合を続け。その後の帝京(2010年03月31日)・大垣日大(2010年04月02日)・日大三戦(2010年04月03日)では、ヒットは打たれないが三振も奪えない と言う2面性を魅せてくれた。これは、比較的余力のある大会序盤戦と、疲労が溜まってきた3回戦以降では、明らかにピッチングスタイルを変えてきたと考えられる。昨夏・連投で疲れが溜り、バランスを崩して後半戦に打ち込まれた明豊戦の反省から、スタミナ配分を意識したピッチングがなされた。ただそういった上手さで成長を感じさせてくれたものの、今大会の島袋は、大会を通じて状態は良くなかったように思える。 それは、球速こそ135~MAXで143キロを記録し昨夏と大きな差はなかったが、明らかに昨夏よりも、いや私が彼を生で見た昨春の春季九州大会よりも、球の勢いやキレは悪かった。実際にその感覚は、打者にも同様に感じられたのだろう。コース一杯でカウントを整えようとする球を、並みの打者達に軽々打ち返される場面もしばしばしで、島袋にとっては大変苦しい投球が続いていたからだ。それでも勝負どこでは、最高のボールを低めに集められる技術・精神力はさすがで、本気モードになった時の一瞬の輝きは、さすが島袋を強く印象づけられた。そういった能力を常に出せる状態にはなかったのが、今大会の島袋だったのではないのだろうか。 明らかに今大会では、筋力やフォームの変化による球質の変化ではなく、状態の悪さから来るキレの悪さが、大会序盤は目立っていた。常に高いところに目標を持っている彼が、このようなキレが悪い球で満足するはずがないからだ。変化球も、明らかにカーブ・スライダーを使い分けていた昨夏とは違い、115キロ前後の曲がりながら落ちるスライダーとのコンビネーションでカウントを稼ぐ投球パターンに変更。最大の変化は、今までなかったシュート系の球を使うようになったものの、まだその精度は高いとは言えない。二桁安打を打ち込まれた関西戦や智弁和歌山戦でも、けしてコントロールが甘かったわけではなく、両サイドに球を集めていたものの、打力のある両校の打者達が、コースに投げてもキレのない力のない速球ならば打ち返すレベルにあったからだ。それでも勝負どころでは、徹底的に低めに集めると言う集中力で、彼らの攻撃をかわすことができた。 牽制・フィールディングなどは上手いものの、クィックは1.3~1.5秒ぐらいと遅い傾向は変わらず。ひねりを加えつつ、縦に腕を振り下ろす独特のフォームで幻惑しつつ、ゆったりとしたモーションで「間」を意識しながら投球を組み立ててくる。視覚で幻惑し、間で狂わせて投球を組立てようとする左腕は、今年の大学・社会人も含めて彼にしか出来ない芸当だった。 (投球内容のまとめ) 彼が肉体的な部分で成長していていたかどうかは、この選抜では状態が状態だっただけに良くわからなかった。ただ昨夏の反省を活かし、スタミナ配分を考えたりする上手、さに磨きがかかり、シュート系の球を覚え投球の幅を広げたいと言う、彼の学習能力と探究心があると言う部分での進歩は感じられた。現状に満足せず、常に上を目指す彼らしい姿は、未だ損なわれていない。
更新日時:1970.01.01

将来の可能性

 それでも投球の上手さ・制球力・勝負どころでの抜群の投球などを観ていると、高校・大学・社会人含めて2010年度のアマチュア球界において、彼ほど「投球ができる左腕」はいないわけです。このことは、紛れもない事実であり、そういった部分は素直に評価したい。 ただ生で見れば、恐らく強く実感したであろう球威・球速不足。更に球のキレの無さを痛感したスカウト達が、彼にどのような評価を下したのかは興味深いです。彼の投球を観ていると、連投連投で疲弊しきった青学時代の石川雅規(ヤクルト)の投球とダブります。その当時の彼も、普段は球威・球速は際立つものはありませんでした。ただそれでも好調時の石川の球のキレと、昨春の島袋の球の勢いを知っていたものからすれば、プロでの活躍には確信が持てると思います。夏までに、今までの球のキレ・勢いを取り戻すことを証明できたならば、充分に高卒でプロに行ける投手だと思います。ただスクリューとスライダーを武器にしていた石川よりも、ピッチングスタイルは、PL学園時代の野村弘樹(元ベイスターズ)の方に近い気が致しますね。いずれにしても、プロで大成した左腕達と、比較できるレベルにある投手と言うことです。 今大会の内容如何に関係なく、そういった好い状態の彼を生で観ていれば、彼の持っている能力も充分把握済みのはず。心技体三つのバランスで考えても、「心」と「技」の部分は、すでにプロ級。特に現状に満足せずに上を目指す姿勢は、プロ向きです。あとは、大幅な球威・球速の成長を感じさせてくれなくても、昨年並みのキレを取り戻し、それを示すことできれば、スカウト達のGO!サインは充分もらえるでしょう。彼ぐらいのレベルにあれば、大学や社会人で得るものは殆どなく、ぜひプロで、その技術を磨き活かして欲しいと思います。ただ若干の不安は残りますが、順調に行けば2年目ぐらいから一軍のローテーションを担えるだけの投手になるのではないのでしょうか。 
更新日時:1970.01.01

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