磯村 嘉孝選手 (中京大中京)

寸評

２０１０年度の選抜大会において、スカウト達から最も高い評価を受けた捕手　磯村　嘉孝。しかし私には、何か訴えかけて来るものが感じられず、物足りないものだけが残った。その理由は何なのか？今回は、考えて行きたい。 （プレースタイル） 全国制覇をした昨夏のチームからの正捕手で、甲子園でも本塁打を連発し、強肩・強打の捕手として全国でもお馴染みの存在。一冬を越えて、どのぐらいスケールを増したのか、多くのスカウトが熱い視線を送った。 （ディフェンス面） スカウトが、如何にも好みそうな頑強な体格。ミットをしっかり投手に示し、そのグラブを下に下げないで捕球する。そのためワンバウンド処理などにも立ち後れることなく対応。ただこの選手、あまり打球への反応は、素早いと言うほどではない。またフットワークを使って身軽に動き回ると言うよりは、必要な時にしっかり動くタイプの捕手。ワンバウンド処理の際には身体を使って制止に入り、ベースカバーも怠らない。そういった動作を怠らない姿勢は、指導者から徹底させられているのだろうし、本人の意識からも、基本的なことを疎かにしない気持ちがあるのだろう。 キャッチングも、ボールを押し込むようなキャッチングができ、投手の球に力負けすることなくしっかり捕球できる。またワンバウンド処理の際の、グラブの出し方なども修正され、昨夏よりもずいぶんと上手くなってきた。ただスローイングタイムは、２．０５秒ぐらいかかるように、地肩は結構強いのに、担いで投げる傾向があり到達タイムがかかってしまう。まだまだ、自分の能力を存分に生かし切れない歯がゆさが、この選手を観ていると感じられる。 ただこの選手、下級生の時から中心選手として活躍し、プロからも注目される選手にしては、非常にプレースタイルが大人しいタイプの捕手。投手への返球も軽く行っており、どちらかと言うと投手をガンガン引っ張る叱咤激励して引っ張るタイプと言うよりは、投手への配慮を重視する気遣いのできるプレースタイル。ただ何処か、積極性と言うか押しの弱いプレースタイルは、プロで飯を食って行こうと言うギラギラしたものが感じられない。そういった内面から沸き上がるような意欲が感じられない点が、私にはどうにも解せないのだ。 捕手としての基本的な部分は、かなりできるようになってきた。課題もまだまだ多いが、むしろ内面的な部分の方が問題。その辺が夏までに変わって来るようだと、具体的な指名の話しも出てくるかもしれない。 （打撃スタイル） 昨夏の甲子園でも活躍したように、全国大会でも結果を残せる、ある程度の技量はある。ただ頑強の身体を活かしたパワフルな打撃の持ち主ではあるので、ツボにはまればスタンドインのパンチ力と、ある程度の対応力は身につけている。ヘッドスピードが鋭いと言うよりは、強い身体を活かして、打球は強く抜けて行くと言う類の選手。また打球も引っ張り専門でもなく、右方向への打球も観られる。身のこなしが硬い割に、ある程度の結果がでるのは、すでに右方向への意識や打撃を、身につけられているからだろう。 ヘッドスピード・打球の強さなどは、プロの捕手としては合格点。全国大会でも結果を出すように、ボールを捉えるセンス・動体視力などは悪くないと思うが、それを活かすだけの技術に多くの課題を残す。また自分からボールを追いかけてしまう傾向にあり、ボール球に手を出してしまい我慢仕切れない傾向も見られる。それは、下半身の安定と打球への意識の徹底で、だいぶ変わって来るだろう。資質としては好いものを持っているので、あとは技術と意識の問題ではないのだろうか。一塁までの塁間を４．７秒弱程度（左打者換算で４．４秒弱に相当）なので、走力は期待できない。あくまでも捕手として、大成することが望みます。

将来の可能性

全体的にプレーに「柔らかさ」・動作や意識に「鋭さ」に欠ける印象があります。攻守に秘めたる資質は、プロ級の素材だと思うし、野球への姿勢や捕手としての適正は、けして悪い選手ではない。 ただ高校からプロに行きたい、と言う貪欲さや積極性に欠ける点。技術的にかなり課題があり、特にセンターから右方向への打撃を徹底できるかなど、夏までにその辺の変化が見られるかどうかが、一つ指名への大きなポイントなのではないのだろうか。 心技体のうち「体」と言う才能の部分はプロの素材。あとは「心」と「技」のいずれかが、指名レベルに達するかどうか、夏まで見守り続けたい。それができた時、プロの扉は開かれるだろう。