津田vs高松南
大きくクロスステップしたサイドスローの高松南先発・藤谷雄貴(2年)
高松南の好サイドが喫した痛恨の「1安打」
試合時間2時間57分。延長11回の熱戦。
軍配は182球を投じた左腕・廣瀬泰成(左投左打・171センチ64キロ)、7回以降・勇気を持って高松南打線に臨み無安打のリードを見せた松岡健泰(右投右打・170センチ62キロ)の1年生バッテリーの活躍が光った津田に上がったが、最も観衆にインパクトを残したのは敗れた高松南の先発・藤谷雄貴(2年・右投左打・173センチ68キロ)であった。
旧チームでは県内屈指の本格派右腕・曽我圭二(3年)がいたため、控え投手ないしは右翼手の出場に留まっていた藤谷だが、晴れてエースナンバーを背負った今大会では、サイドハンドから独特のクロスステップを踏むフォーム。そしてその右腕から130キロ台中盤を常時マークする力強いストレートが大いに威力を発揮。
藤井学園藤井を7回10奪三振無安打無失点(参考記録)に封じた1回戦に続き、この津田戦でも4回まで無安打。まだ完成度のばらつきはあるものの1秒前後のクイックモーションも備えた藤谷に、津田が対抗する術はないかと思われるほどだった。
ただし5回表。津田は一瞬の隙を見逃さなかった。
一死から四球を選んだ8番・藤目篤貴右翼手(2年・右投左打・171センチ63キロ)が二盗・そして三盗。9番・大西裕輝中堅手(2年・右投右打)がスクイズ成功。さらに失策・四球の二死一・二塁から3番・猪塚隆一一塁手(2年・左投左打・174センチ68キロ)が右中間を破り二者を迎え入れる逆転打。
11回表、6回から藤谷をリリーフした高松南2番手・為定凌生(2年・右投右打)から一死一・三塁からスクイズを仕掛け、それが暴投(記録は重盗)で決勝点を奪えたのも、この「1安打」による3得点がなければ起こりえなかったこと。ここは大いに津田を讃えるべきだろう。
それだけに悔やんでも悔やみきれないのは高松南である。結局、藤谷が喫した安打はこの1安打のみ。為定も被安打は2。上位進出すれば話題に上がっていたことは間違いない好サイドにとっては痛恨の「1安打」であった。
(文=寺下友徳)