試合レポート

桐蔭学園vs川崎工科

2012.07.22

壮絶な打撃戦!

野球王国神奈川。その聖地でもある保土ヶ谷球場が、ヒットの度に大歓声に包まれ、壮絶な打撃戦を繰り広げた。

ゲームは1回裏、1番中山浩輝(2年)が初球を捕え、三塁打を放つと、2番キャプテンの藤田勇人(3年)の犠牲フライで川崎工科が中山が生還。電光石火の攻撃で1点を先制する。

早く追いつきたい桐蔭学園は3回表、二死二、三塁のチャンスで3番佐藤将(3年)が2ボール0ストライクから甘い球を逃さずセンターオーバーの三塁打で逆転に成功。
続く4番小河諒(3年)も外のカーブを豪快に引っ張り、あわやホームランという当たりの三塁打で追加点。主軸の働きで、一気に主導権を握る。

 
川崎工科は3回裏、4回裏とランナーをスコアリングポジションに進めるが、リリーフの桐蔭学園の背番号1・横塚博亮(3年)が踏ん張り、反撃を許さない。

すると5回表、エースの粘投に打線が応える。途中出場の1番久保聖也(3年)が変化球を捕え二塁打を放つと、続く2番嵩真旺(3年)が真ん中に入ってきた直球を逃さず振りぬき、フェンス直撃のタイムリー。
さらに二死から、5番森川大樹(3年)が外の直球を上手く運び、2点タイムリーヒット。6番松岡京介(3年)もセンター前にはじき返し、この回一挙4点を追加。点差を6に広げた。

一気にゲームを決めるべく桐蔭学園は、6回表もチャンスを作るが、無死満塁のピンチを川崎工科の2年生エース・田井康平(2年)からバトンを受けた鎌田銀河(3年)が、強打の桐蔭学園3番佐藤、4番小河を打ち取り、無失点で切り抜け、逆転へ望みを繋ぐ。

7回裏、川崎工科は1番中山がヒットで出ると、2番藤田が低めを上手くさばきツーベースヒット、3番浦野隆司(3年)がスライダーを逆らわずに逆方向へ運び、三連打で1点を返す。その後もダブルプレーの間に追加点。反撃の狼煙をあげる。

しかし、取られたら取り返すのが桐蔭学園打線。8回表、2番嵩の一、二塁間を破るタイムリーヒットでリードを広げ、逃げ切り態勢を整える。


それでも食らいつく川崎工科。8回裏、二死一、三塁のチャンスで、今日猛打賞の1番中山のサードの頭上を襲う二塁打で1点を返す。

そして、4点差で迎えた9回裏の川崎工科の攻撃。
先頭の3番浦野がライト前へ運び出塁。しかし、4番野口樹生(2年)がサードゴロダブルプレーで倒れてしまう。それでもなんとか一矢報いたい川崎工科は5番の酒井俊輔(3年)がエラーで出塁すると、続く6番小島雄飛(3年)が前進していたレフトの頭上を越えるタイムリー二塁打1点を返す。
だが、反撃もここまで。最後はリリーフの齊藤大将(2年)が抑え、桐蔭学園が逃げ切り勝ち、ベスト16進出を決めた。

この試合、一言で言えば壮絶な打ち合いだった。
敗れはしたが、川崎工科の打線も14本のヒットを放ち、ヒットの数では桐蔭学園を上回った。打撃戦とはいえ、両校の投手に力がないわけではない。
ただ、甘い球を逃さず、しかも長打にできる力が両校の打撃陣に備わっており、結果としてこういったゲーム展開になったと言えるだろう。相当な量の振り込みを、どちらも行ってきた1年間だったことが想像できる。

昨夏、昨秋に続き甲子園をかけた大会では三度連続で川崎工科に立ちはだかった桐蔭学園だが、今回の五分と五分の打ちあいにおいて勝敗を分けたポイントとして挙げるとすれば、3回、4回、5回の攻防ではないだろうか。
川崎工科は、終盤に追い上げを見せただけに、あの3イニングで得点できていれば、ゲームはどう転んでいたかわからなかった。

また、今日の一戦を見て感じたのは、長打の重要性だ。
当たり前のことかも知れないが、長打は得点に直結する。エラーや四球、それにシングルヒットも、もちろんチャンスへの足がかりとなるが、長打が出るか出ないかが、想像以上に得点へと結び付く。
特にビックイニングを作る場合には必須だろう。前述の3回、4回、5回の川崎工科の攻撃で合わせてヒットが6本も出たのにも関わらず、得点することができなかったのは全てシングルヒットだったからである。
逆に桐蔭学園は3回に2者連続の三塁打、4回には2本のシングルヒットに3本の長打を絡め、大量得点へと結び付けた。長打力のあるチームの強みは、バントや盗塁などでリスクを冒さなくても、スコアリングポジションにランナーを置き、一本で返せるところにある。桐蔭学園が6本、川崎工科が4本の長打を放ち、その強さを存分に見せつけてくれた。

川崎工科は今日4安打の1番中山や4番の野口、エースの田井と主力に2年生が揃っているので、秋以降期待できる。

桐蔭学園はなんと言っても打線が魅力。3番佐藤、4番小河を中心にどこからでも長打が出る打線は、激戦区・神奈川でもトップクラスにあるのではないだろうか。捕手の森川も存在感があり、扇の要に相応しい存在だ。今後も注目したい。

(文=編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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