News

昨秋4強の川口市立を率いる監督の想い「いろんな声がある中で選手を守るのが指導者の役割」

2020.05.02

昨秋4強の川口市立を率いる監督の想い「いろんな声がある中で選手を守るのが指導者の役割」 | 高校野球ドットコム
川口市立ナイン(※写真は2019年秋季埼玉県大会)

 新チームがスタートして挑んだ昨秋の大会で快進撃を果たした川口市立。南部地区大会を勝ち上がり出場した県大会でも、春のセンバツ出場を果たしていた春日部共栄を下すなどしてベスト4に進出。公立校で唯一のベスト4となった。

 「よく、ベスト8の壁なんていうことを言いますけれども、やはりベスト8とその先のベスト4では大きく違います。そのベスト4進出を果たして、いいモチベーションで冬のトレーニングへ入れて、春のシーズンを迎えられたと思ったんですけれどもね」

 鈴木久幹監督はそう言って、今春の自粛による大会中止を残念がった。
「もどかしくて、残念でしょうがないですよ」
 というのも、正直な気持ちであろう。

 結局3月以降は、グラウンドも閉まったまま。ほとんど何もやれていないという状況は他の公立校と変わりはないようだ。
 連休に突入するこの時期、本来ならば練習試合も多く組まれていたところだろうが、当然のことながら5月の練習試合はすべてキャンセルとなった。ただ、6月にはどうなるかわからないという前提で、予定のキャンセルは1週ずつ確認しながら潰していくことにしているのだという。

 「やはり、(大会を)やれるという前提で考えていかないといけないと思っていますから。その可能性を残しておいて、そのための準備としての練習試合ですから。ダメだなというところで一つずつキャンセルの連絡をしていくということにしています」

 そういう思いで日々を過ごしているという。
 川口市立の場合は、LINEなどでグループを作ってのメッセージトークは生徒たち同士で交換しているものの、特に定期的に連絡を取らせるということはあえてしていないという。それは、「特に、無理やり管理しなくてもいいし、自覚の持てている生徒たちだから」という鈴木監督の信頼もある。

 ただ、このままの状態が続くとなると例え6月から授業が再開されたとしても、部活動としての動きは6月中旬くらいにまでずれ込んでしまうのではないかと見ている。それも、しばらくは1時間から、せいぜいに時間程度までということになってしまうのではないかということである。
 また、再開したとしても気にしているのは、インターハイの中止が発表されたということで、他の部活動では実質3年生が活動の場がないまま引退を余儀なくされてしまっているというところもあるということだ。

 3月になって、選手たちと会ったのは2回の登校日と終業式の日だけだったという。新入生に関しては全然会っていないという。体験入部に来て名前を書いてある新入生に対して、3月26日に電話をしたのみにとどまっているという。

 「実際、(大会開催か否かの決定を)ギリギリまで待つという形になったとして、そうしたら選手たちは、やれるという前提で練習に向かっていきますよね。そうすると、周囲からは『どうして野球だけは、いいんだ』とか、そんな批判も向けられてきます。
 そんな声が、生徒たちに向けられてきたら、そこからも守ってあげなくてはいけないというのも我々指導者としての役割としてはあります。コロナから生徒を守るということはもちろんなんですけれども、むしろ、そんな外からの非難や批判からも守ってあげるということの方が、とても大変なことかもしれません」

 教員としての立場から考えると、夏休みそのものが、お盆の1週間くらいになってしまって、夏休みを潰しながら、何とか授業をこなしていくという形になるのではないかと考えている。
 それに、選手個々のことで言えば、いかに自主的にトレーニングを重ねてきているとはいえ、やはり体力は落ちているということは否めない。だから、炎天下の試合となって、その夏の暑さに耐えられるのかどうか、というところもあるだろう。そんなところも配慮しながら、現実に(大会そのものが)出来るのかどうかということも考えていかなくてはいけないという。

 それでも、どこかで1回は、21人の3年生たちが揃って、このメンバーで試合をさせてあげたいというのは、野球部監督として、教員としての心からの願いである。

(文/手束仁

関連記事
川口市立が快進撃!昨秋優勝の春日部共栄を破り、準決勝へ!
私立優勢の埼玉県に風穴を開けたい上尾、市立川越ら実力ある公立7校をピックアップ!
花咲徳栄、浦和学院が盤石8強!川口市立は公立校唯一の8強に名乗りを上げる!【秋季埼玉県大会三回戦】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.27

【鹿児島NHK選抜大会】開幕戦は延長11回に及ぶ激闘!川内商工が5点差をひっくり返し、逆転サヨナラ!

2024.05.27

【鹿児島NHK選抜大会】伝統の「中玉戦」は鹿児島玉龍の完封勝ち!

2024.05.27

【鹿児島NHK選抜大会】樟南vs鹿児島商 かつて「御三家対決」は、樟南が逆転勝利!

2024.05.27

【鹿児島NHK選抜大会】出水工が延長に及ぶ激戦を制して、サヨナラ勝ち

2024.05.27

愛知高野連が6月1日、2日の招待校変更を発表。智辯和歌山から報徳学園、龍谷大平安に

2024.05.26

【春季関東大会】常総学院・中村虎汰郎が二刀流の活躍で決勝進出に貢献!9回にはサヨナラに繋がるヒット!投手としてはセンバツ後に再転向で連日の好リリーフ!

2024.05.22

【愛知・全三河大会】三河地区の強豪・愛知産大三河が復活の兆し!豊川を下した安城も機動力は脅威

2024.05.22

【春季関東大会】センバツVの両エース打ちで勝利に貢献!逆転タイムリー放った池田翔吾(常総学院)は指揮官も絶賛の打棒の持ち主!

2024.05.23

【鹿児島NHK選抜大会展望】本命・神村学園、対抗馬・鹿児島実、2強の牙城を崩すのは?

2024.05.22

【福島】学法石川と聖光学院が4強入り、準決勝で激突<春季県大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【岩手】盛岡中央、釜石、水沢が初戦を突破<春季地区予選>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商