明石商vs桐生第一
来田&中森の最後の試合は1点差ゲームの勝利!桐生第一のエース・宮下との投球術光る
中森俊介 ※2019年10月21日の秋季近畿地区大会より
来田涼斗、中森俊介の2人のプロ注目を擁し、名将・狭間善徳がチームを率いる明石商が16日登場。昨秋の関東大会4強、そして群馬の独自大会を制して勢いに乗る桐生第一と対戦。試合は両軍の先発投手による好投が続き、1点を巡る好ゲームとなった。
明石商の中森は140キロ台のストレートを軸にしつつも、スライダーやチェンジアップなどの変化球も多く使って、桐生第一打線に的を絞らせない投球。テンポも良く、安定した非常にクレバーな投球術はまさに圧巻の一言。
先日の中京大中京の高橋宏斗は球速で球場を沸かせたが、それとは違う中森の良さを存分に発揮。2年生の選抜から騒がれ、世代のトップを走り続けた実力を集大成の舞台でしっかりと発揮した。
対する桐生第一の先発はエース・宮下宝。セットポジションからキッチリと股関節を引き込んでタメを作りながらも、右腕を真っすぐ突き出して身体をリードしていく。身体を縦に捻りながら腕も振っていくが、中森のような速球ではなく、ストレートは120キロ台を計測することが多い。
また変化球も110キロ台を計測する曲がりの大きいスライダーに、さらに遅い100キロ台のカーブという持ち球だ。それでも外角への出し入れ。さらに高低での揺さぶりとストライクゾーンを存分に使った巧みな投球術が、左打者が多く並ぶ明石商打線には見事にハマる。
実際に1番に座った来田も「厳しいコースにボールが来ていた」という宮下のコントロールを語る。結局、明石商打線は5回まで無得点に封じられる形になる。
しかし、中森もイニングを追うごとにエンジンが加速していき、桐生第一打線に三塁を踏ませない投球が続けていく。
宮下宝 ※2019年10月26日の秋季関東地区大会より
すると、6回に明石商は一死から2番・宮城 光伸のヒットからチャンスを作ると、二死二、三塁から5番・井上 隼斗が甘く入ってきた変化球を引き付けて逆方向へ。宮下のような投手を攻略するバッティングの手本となるようなショートの頭上を越すタイムリーで2点を先制した。
2点のリードをもらった明石商・中森だったが、7回に桐生第一6番・星野 綜汰のタイムリーで1点を失い、2対1。終盤になっても緊迫の展開が続いた。
それでも8回に代打・山口 瑛史のタイムリーで1点を追加して3対1とした明石商。これが結果として大きく、9回に桐生第一の川端 琉真にタイムリーを許して3対2とされたが、同点までを許さずに逃げ切ることが出来た。
何とか最後の公式戦を勝利で飾れた明石商。チームを引っ張ってきた明石商・来田も試合後、「甲子園は勝とうという気持ちでやってきた」と強い想いをもってやってきたことをコメント。中森も「勝って終わることはチーム全体の目標だったので良かったです」と語った。
2人とも進路は明言を避けたが、これからも注目されることは間違いない。一方、敗れた桐生第一だが、先発・宮下のような投球術があれば、全国区の相手でも十分勝負できることを最後の試合で証明してくれた。
(取材=田中 裕毅)