試合レポート

日大鶴ヶ丘vs多摩大聖ヶ丘

2014.07.19

もらったチャンスは必ず生かす!日大鶴ヶ丘、抜け目なくベスト8入り!

 いよいよベスト16が出そろった西東京大会。[stadium]神宮球場[/stadium]への切符をかけた戦いが始まった。19日に時折小雨のぱらつく[stadium]府中市民球場[/stadium]で行なわれたのは、第1シード日大鶴ヶ丘と、ノーシードで2回戦から勝ち上がってきた多摩大聖ヶ丘の対戦。日大鶴ヶ丘はここまで3回戦は日大二に6対2、4回戦は都立東大和に6対0と、大爆発こそないものの危なげなく勝ち上がってきている。いずれも会場は同じく[stadium]府中市民球場[/stadium]。勝手知ったるホームグラウンドのようなものだ。

 対する多摩大聖ヶ丘は先日行われた4回戦で都立千歳丘を相手に逆転されながらも9回に追いつき、さらに延長10回表に勝ち越しを許すもその裏、再度逆転のサヨナラ勝ちをするなど、粘り強さと勢いが身上。試合は開始早々、その多摩大聖ヶ丘が勢いを見せつける。

 1回表、多摩大聖ヶ丘は1番・石田 峻士が右中間を破るスリーベースで出塁すると、2番・野田 裕太郎はフルカウントから今度は左中間を破るタイムリーツーベースを放ち、あっという間に先制する。さらに3番・佐藤 優樹もヒットで続き、無死一、三塁。4番・松本 圭介が放った打球はセンターの一番深いところへ。犠牲フライには十分。三塁ランナーの野田が悠々とホームを踏み、この回2点を先制する。

 その裏、日大鶴ヶ丘は先頭の樋田 翔平が四球を選び出塁すると、バントや犠牲フライで三塁まで進める。すると、4番・西田 賢太が火の出るような当たりをライト前へ飛ばし、1点を返す。

 2回表、多摩大聖ヶ丘の攻撃は止まらない。一死から9番・木幡 将大がレフト前ヒット、1番・石田もライトのラインぎりぎりに落とすヒットで続き、一死一、三塁とチャンスを作り出す。2番・野田はスクイズを試みるもファウルが続く。ストライクを2つ取られたところでヒッティングに切り替え、これが功を奏しレフト前へのタイムリーに。多摩大聖ヶ丘が三連打で1点を追加する。


 このまま勢いに乗っていきたい多摩大聖ヶ丘だったが、先発・山崎 大我の制球が定まらない。その裏、2連続で四球を与えると、バントで送られ犠牲フライと、ノーヒットで1点を返されてしまう。

 そんな序盤から乱打戦の様相を呈してきたこの試合、まず落ち着けたのは日大鶴ヶ丘だった。こちらもボール先行で苦しい投球、ストライクを狙い撃ちされていた日大鶴ヶ丘先発・秋山 翔だったが、3回表の多摩大聖ヶ丘の攻撃を三者凡退に打ち取りリズムを作り出すとその裏、日大鶴ヶ丘打線が爆発する。

 ヒットで出塁した2番・中里 雅也を一塁に置き、3番・山岸 哲也が打った瞬間それと分かる2点ホームランをライトへ放ち、逆転。

 この一発に、[stadium]府中市民球場[/stadium]は大騒ぎ。一気に日大鶴ヶ丘のホームと化す。一死を取られた後、5番・栗田 優一がライトへのヒットで出塁。もともと不安定だったが、やや緊張の糸が途切れてしまったかのような山崎は、2連続で四球を出し、一死満塁。

 続く8番・西ヶ谷 篤はピッチャーとファーストの間に転がすプッシュバント。一気に攻めたてられ、やや焦りが見える多摩大聖ヶ丘内野陣は、一塁にフォローに入るのが遅れ、セーフ。1点を追加、なおも一死満塁は続く。
 こうなると、多摩大聖ヶ丘に限らず守備を立て直すのは難しい。スクイズ、エラー、そしてタイムリーと日大鶴ヶ丘の得点は続き、この回7点のビッグイニング。9対3と日大鶴ヶ丘が一気に多摩大聖ヶ丘を突き放すことに成功した。

 その後多摩大聖ヶ丘は4回、5回と鋭いヒットを飛ばし三塁までランナーを進めるが、秋山の粘り強い投球の前にあと1本が出ずにゼロが続く。

 対する日大鶴ヶ丘は4回には2つの四球とバント、暴投、そして8番・西ヶ谷のタイムリー等で2点を追加。5回裏を迎える時点で11対3と、コールド勝ちまであと2点と迫る。


 何とかコールドは避けたい多摩大聖ヶ丘だったが、日大鶴ヶ丘で快足を誇る中里をエラーで二塁へ進めてしまう。そして3番・山岸がセンターへ綺麗に打ち返し1点を追加。4番・西田が四球を選んだ後、5番・栗田のセンター前へのヒットで、二塁ランナー山岸が勢いよくホームへ向かう。

 これはホームでアウトにして多摩大聖ヶ丘も一度は踏ん張る意地を見せたものの、最後は6番・幾島 康平がライト線へタイムリーを放ち、13対3。5回コールドで日大鶴ヶ丘がベスト8入り、そして神宮球場への切符を手にした。

 5回コールドでしっかりと試合を決めた日大鶴ヶ丘だったが、自分たちで流れを作り出したというよりも、もらったチャンスにしっかり乗った末の勝利だと言えるかもしれない。この抜け目の無さは勝負に勝ち切るには当然必要なことだ。

 逆に、多摩大聖ヶ丘は幾度となく流れを作り出しながら、それをキープすることが出来なかった。攻守両方の波を揃え流れを作り出して、勢いを持続させ、相手に渡さない。難しいが、これがチームとして出来る出来ないの差がいわゆるトーナメントの「壁」と言われるものだろう。

 多摩大聖ヶ丘の攻撃が積極的で勢いがあって、見ているものをワクワクさせるものだったことは、球場から送られた歓声と拍手が物語っている。そして、その「壁」を突破出来るポテンシャルのあるチームだということは、ベスト16入りをしたということが証明している。秋以降の成長が楽しみなチームであることは間違いない。

(文=青木有実子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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