日大三vs日大豊山
中村、覚醒の三塁打!日大三、7回コールドで日大対決を制する
6番・中村奎太(日大三)
大会期間中、週末はずっと雨であったが、ようやく訪れた秋晴れの下、舞台を[stadium]神宮球場[/stadium]に移して準決勝が行われた。
日大三は1回戦を除き、全てコールドで勝ち上がってきた。準々決勝の帝京戦がそうであったように、点差を詰められることがあっても、ビッグイニングを作って一気に勝ちに行く、集中力がある。対する日大豊山は、接戦を全員野球で物にしてきた。32歳の福島 直也監督にとって、日大三のベテラン・小倉全由監督は「雲の上の存在」ということだが、その無欲さが力でもある。
日大三は左腕の河村唯人、日大豊山は右腕の名倉 侑田と、背番号1同士の先発となった。
1回表日大三は、2番・木代成の四球、4番・大塚 晃平の内野安打、5番・飯村 昇太の左前安打であっさり1点を先取する。
しかし日大三の河村の調子も今一つで、1回裏は無失点に抑えたものの走者を2人出し、2回裏は、日大豊山の7番・鈴木 一央の中前安打の後、9番・日大豊山佐藤優太の当たりは、芯でとらえたような豪快な当たりにはみえなかったが、打球が意外に伸びて、レフトスタンドに飛び込む、2点本塁打となった。
相手9番打者のまさかの一撃は、やや受け身であった日大三の選手たちを覚醒させ、ギアをチェンジさせた。そして3回表、今年のチームの特徴であるビッグイニングを作る。そのきっかけとなったのは、6番・中村 奎太の一撃であった。
この回、3番・日置 航、4番・大塚の連打に、5番・飯村の犠打で一死二、三塁とし、「インコースの真っ直ぐを狙っていました」と語る、6番の中村は、その球を振り抜き、右中間を破る三塁打を放ち、2人を迎え入れた。準々決勝の帝京戦では登板し、途中肩の違和感で降板し、心配された中村であったが、「肩が張っただけで、問題ありません」と言う。この日は、朝4時59分の起床時間を前に、ワンバウンドのティーバッティングをして調整した成果が出た。
3番・西村達貴(日大豊山)
中村の後も、7番・前田 聖矢、8番・齊藤 龍二、9番・河村の代打・柳澤 真平と安打が続き、2番・木代も、二塁ベース後方に落ちる二塁打を打つなど、この回一気に5点を挙げた。
河村に代打を出したことで、日大三は3回裏から林玲介が登板。林は変化球にキレの良さがあるものの、これまでは力んで、ピンチを招くこともあった。この試合でも、4回裏に連続四死球で無死一、二塁のピンチを招いたが、併殺で切り抜けると、後は危なげない投球だった。日大豊山は、日大三の2人の投手に5安打、本塁打による2点だけに抑えられたが、その中で、存在が光ったのが、3番の西村 達貴だ。
西村はこの試合、2安打、一死球の成績であったが、出塁すると必ず二盗を成功させた。「常に次の塁、次の塁を狙っています」という西村の積極的な姿勢は、日大豊山の今大会の快進撃を象徴している。
それでも、日大三の破壊力は、一枚も二枚も上だった。6回表は、7番・齊藤の2点適時打などで3点を挙げ、7回表は、日大豊山の2番手・高原 俊太から、金子凌、飯村の二塁打などで3点を挙げ、12対2で日大三が、この試合も7回コールドで勝利した。櫻井 周斗、金成 麗生らがいた重量級の前のチームに比べ、日大三の小倉監督は、「スケールの大きな選手がいるわけでない」とは言うものの、上位下位、関係なく振りが鋭く、つながる打線は、かなり迫力がある。次はいよいよ決勝戦だ。前のチームでは、秋、春と決勝戦で敗れている。「決勝戦は、簡単には勝たせてくれない」と言う、小倉監督にとっても、勝負の一戦になる。
一方、敗れた日大豊山の福島監督は、「よくここまで来ました」と、準決勝まで来た選手たちを称えつつも、準決勝は全校応援の中で試合をしただけに、「勝ちたかったです」と悔しさをにじませた。それでも、手応えを感じるに十分な戦いぶりであり、春以降の成長を注目したい。
(文=大島 裕史)
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