美里工vsコザ
空気を、流れを変える男!絶大なる信頼が逆転を生んだ
約1年前。新人中央大会の決勝を争った両者が最後の夏で再び合間見えた。
先制したのはコザ。ツーアウトから死球を選ぶと、美里工にとってはまさかの連続エラーで二塁から川上が一気に生還した。
追い掛ける立場となった美里工だが、サイドスロー宮里 季築の、低目を突くボールに3回を終えて僅か1安打(4三振)と辛酸を舐めさせられた。
だが4回、秋の首位打者神田 大輝がレフト前ヒットで出塁すると、犠打と四球で一・二塁として西里 翔が三遊間を割るレフト前タイムリーで遂に同点とした。
美里工先発の長嶺 飛翔は、本来の出来とはまだ程遠く、先制された直後の2回にも2本のヒットを許すなど不安定な立ち上がりだった。
中盤持ち直すものの、コザに押されているという印象が拭えないまま6回、一死から安谷屋に四球を与えると美里工神谷嘉宗監督がついに動く。
背番号1が勢い良くベンチを出てマウンドへ向かった。
伊波 友和は長嶺からボールを受け取ると、見事後続を斬り難を逃れる。直後の7回には、この試合初めて打席に立ったにも関わらずライト前へヒットを放ち一死一・三塁とチャンスを広げた。
ここで何でも出来る西藏當祥が、ベンチの期待に応えてスクイズ成功で逆転すると、内間 幹也がレフトの頭上を襲うタイムリー二塁打で突き放した。
8回にも松堂 正のタイムリーでダメ押しした美里工は、伊波が12人の打者に対して許したヒットは僅か1本と完璧に抑えて勝利。この日マークした147Kmの快速球と、にくらしいほどのマウンド捌き、さらには逆転を生むきっかけとなるヒットなど間違いなく、流れを一気に引き寄せたその活躍はそのまま、自軍からの厚い信頼を表しているようでもあった。
選抜での苦い思い出を夏の選手権で払拭するその日まで、伊波と美里工ナインの歩みは止まることが無い。
(文=當山雅通)
【野球部訪問:第122回 県立美里工高等学校(沖縄)】