浪速vs堺上
原点回帰
浪速の池澤和宏監督は教えてくれた。「このユニフォームは、大引選手が寄付してくれたものなんです」。
オリックスバファローズに所属する同校OBの大引啓次選手がチームに送ったユニフォームの胸部分には、『浪速』の二文字がくっきりと大きく記されている。「この夏から漢字に戻しました」と話した指揮官。
秋は府大会3回戦、春は2回戦で敗退した浪速だが、大阪の名門校のひとつなのは間違いない。胸の『浪速』の文字は強豪の証として高校野球ファンにもおなじみだ。名門復活へ、浪速は原点回帰で鮮やかに2回戦進出を決めた。
1回の攻防だけを見れば、どちらに転ぶか分からないゲームだった。1回表、浪速は1死一、三塁のチャンスを作るが後続を打ち取られる。堺上も先頭の芦田樹希也がライト前ヒット、2番森遼太がしっかり送りバントを決めスコアリングポジションにランナーを進める。だが、こちらも後続が打ち取られた。
チャンスを作り、チャンスを生かせなかった両チームの立ち上がり。どちらが先にペースを握るかが勝負の分かれ目だったが、2回表、浪速が怒涛の攻撃で堺上の守備陣に襲いかかる。
6番西裕二が三塁線を破る二塁打で出塁すると、7番・千代西尾亮がバントで送り、8番・濵崎駿が右中間へのタイムリー二塁打。またたく間に先制すると9番中田匡峻が絶妙なセーフティバントで続き、相手のエラーや犠牲フライでこの回、4得点のビッグイニングを作る。その後、4回に1点、5回に一挙5得点を挙げ、投げては先発・濱崎が5回62球、被安打5のシャットアウト。浪速が5回コールド勝ちを収めた。
「しっかり力は出せたと思う」と初戦を総括した池澤監督。「相手どうこうではなく1戦、1戦自分たちの力を出して戦っていきたい。それに、大切なのは野球だけじゃない。試合会場に行くことにも大きな意味がある」と付け加えた。
“学び”の舞台で大きな経験を得て欲しい、監督から球児へ贈られる紛れもないメッセージだ。
(文=小野慶太)