試合レポート

常総学院vs近江

2016.08.09

台風の目になるかも?個性と緻密さを兼ね備えた常総学院ナイン

 球場にきたほとんどの人は140キロ台中盤のストレートを投げる本格派、京山 将弥(3年)が近江の先発だと思ったはずだ。それが発表されたのは深田 樹暉(3年)だった。キレのいい140キロに迫るストレートにまず注目したが、常総学院のバッティングのほうが一枚上だった。

 京山は2回途中からリリーフに立ち、代わりっ端に3つの四球を与えるなど乱調気味で、結果は6回を投げて被安打10、奪三振5、与四球4。けっして褒められない内容だが、ストレートは最速147キロを計測し、130キロ台のカットボール、120キロ程度のチェンジアップなど変化球にはキレがあり、最初からマウンドを託していればもっと競った戦いになったと思った。

 常総学院は1回に2安打、1四球をつらねて2点、2回には打者9人を送る猛攻で3点を奪取、この攻勢で勝敗の行方はほぼ決まったと言っていい。

 常総学院の打撃陣を見て思ったのは、いい意味で個性的だということ。1番陶山 勇軌(2年)はイチロー(マリーンズ)を彷彿とさせる“前重心”で内野安打2本を含む4安打を記録、4番花輪 直輝(3年)はインステップからのフルスイングで3安打2打点を挙げた。

 茨城大会で3番を打つこともあった中村 迅(3年)が8番に入り、どちらかというと脇役的な2番有村 恒汰(3年)、7番石川 大(3年)が7回と9回にホームランを放つなど驚かされることも多く、スタメン9人がさまざまにつながっていくさまは仰木彬監督のもと95年に日本一になったオリックスブルーウェーブを見ているようだった。

 この打線を見て思ったのは常総学院の佐々木力監督の許容量の広さだ。以前はチームプレーを優先順位のトップに置き、陶山の前重心、花輪のインステップ、さらに3番宮里 豊汰(2年)のレベルより下からしゃくりあげるバッティングスタイルなどは敬遠されたはず。それを許しながら甲子園で勝てるチームを作り上げているところが見事。

 ディフェンスでチームを助けたのはキャッチャーの清水 風馬(3年)だ。スキのない好守で魅了する常総学院だが、1回に何でもないショートからの送球をファーストが落球していきなりピンチを迎える。この走者の二盗を強肩でぴしゃりと刺し、2死から3番がヒットで出塁して再び二盗を企図すると、これも完璧な送球で刺した。2対0の局面だったので、ここで1点も入っていればまた違った試合になっていただろう。走攻守すべてが高いレベルで揃う常総学院は今大会の台風の目になるかもしれない。

(文=小関 順二

常総学院vs近江 | 高校野球ドットコム
注目記事
第98回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.07

【山陰】益田東と米子松蔭、鳥取城北が石見智翠館と対戦<春季大会組み合わせ>

2024.05.07

【鹿児島】神村学園は昨秋4強の鶴丸と初戦で対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.07

【北海道】函館大有斗、武修館などが初戦を突破<春季全道大会支部予選>

2024.05.07

【熊本】九州学院が文徳を破って22年ぶり3回目の優勝<RKK旗>

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.06

【2024年夏 全国地方大会シード校一覧】現在27地区が決定!

2024.05.02

春の神奈川準決勝・東海大相模vs.横浜の黄金カード実現! 戦力徹底分析、試合展開大胆予想!

2024.05.02

【茨城】常総学院、鹿島学園、水戸一、つくば秀英が4強入り<春季県大会>

2024.05.02

激戦必至の春季千葉準決勝!関東大会出場をかけた2試合の見所を徹底紹介!

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>