試合レポート

東海大菅生vs早稲田実業

2018.10.29

東海大菅生、中村晃―小山のバッテリーで早稲田実を完封

東海大菅生vs早稲田実業 | 高校野球ドットコム
東海大菅生バッテリー

 昨夏の西東京大会の決勝戦と同一カード。1年生ながらこの試合に出場していた早稲田実の主将・生沼弥真人は、自らのミスも絡んで敗れているだけに、「東海大菅生には負けたくないです」という強い気持ちを持っていた。しかしまたしても、東海大菅生の壁は厚かった。

 東海大菅生は左腕の中村晃太朗早稲田実は右腕の伊藤大征という両エースが先発した。両投手とも最速は130キロ台ながら、球威があり、スピードガンの数字以上の威力を感じる。

 しかも1回表二死二塁から、東海大菅生の4番・杉崎成のセンターへの大きな当たりを、早稲田実の中堅手・茅野真太郎が好捕するなど守りも硬く、そう簡単には点数が入らない雰囲気の立ち上がりであった。

 ところが3回表、早稲田実の伊藤は、東海大菅生の強力打線への警戒から、一死後、2番・今江康介、3番・小山翔暉、4番・杉崎と3人続けて四球で歩かせる。打席には5番の成瀬脩人。成瀬の痛烈な打球は、遊撃手の前ではねて中前安打になり、2人が生還した。

 伊藤が乱れたのはこの回だけで、あとは力のこもった投球で、東海大菅生打線を抑える。

 ところがこの秋の東海大菅生は、打撃戦には打撃戦で、投手戦には投手戦で挑める、引き出しの多さがある。特に捕手の小山翔暉は、強肩に加え、送球が素早いため、早稲田実は走者を出しても、盗塁のみならず送りバントすら容易でない。

 4回裏早稲田実は、この試合は3番に入った伊藤が、右前安打で出塁しても、4番・生沼は遊ゴロの併殺に終わる。6回裏はこの回先頭の梅村大和が四球で出ても、やはり4番・生沼の併殺で、チャンスが広がらない。

 この試合最大の山場が、8回裏に訪れる。一死後早稲田実の9番・千葉翔の内野安打、1番・茅野の中前安打で一死一、二塁。2番・梅村が左飛に倒れたが、打席にはこの試合2安打と当たっている伊藤が入る。伊藤は準々決勝で本塁打を放つなど、早稲田実打線で最も当たっている打者だ。

 中村晃―小山のバッテリーは、内角を突いても、伊藤はしっかり当ててファールにする。しかし9球目、外角低めにチェンジアップを投げると、伊藤のバットは空を切った。

 序盤から内角を意識させて、ここ一番では外角勝負で仕留める。「配球で打ち取ると楽しいです」と語る小山の、してやったりの好リードであった。

 中村晃は、球種が多く、制球力がある。投手としての高い能力に、小山のリードがしっかりはまれば、攻略は容易ではない。

 9回表マウンドに立った早稲田実の伊藤は、8番、途中出場の大里大也に四球を与え、2番・今江にレフトオーバーの二塁打を打たれて大里が還り、1点を失った。

 伊藤が与えた四球は6。そのうち4個までが、失点に絡んでいる。逆に言えば、そうしたチャンスを逃さない、東海大菅生の攻撃のうまさがある。結局3対0で東海大菅生が勝ち、4年ぶりの決勝進出を決めた。

 早稲田実は、エース・伊藤を中心に、守りのしっかりしたチームを作ってきた。しかし準々決勝で7番打者だったエースの伊藤をこの試合では3番に起用するなど、攻撃の核となるべき3番打者が定まらなかった。それは「力がないということです」と、早稲田実の和泉実監督は語る。「打順も固定できないし、守りもまだまだ」と和泉監督。清宮幸太郎(日本ハム)、野村大樹(ソフトバンク3位指名)という大砲のいたチームからの転換。ひと冬越して、どのようなチームになるか、注目したい。

 勝った東海大菅生は、3対0というスコア以上の力を感じる。何よりも特筆すべきは、秋のこの段階ではずば抜けて完成度が高いことだ。ただ気になるのは、若林弘泰監督が、「打線には自信を持っていた」と語る強力打線が、3回戦の二松学舎大附戦以降、当たりが目立たなくなっていることだ。決勝戦は、連投が予想される中村晃を打線がどう助けるかが焦点になる。

(文=大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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