試合レポート

三田松聖vs社

2013.10.06

三田松聖vs社 | 高校野球ドットコム

初完封の大津直希投手(三田松聖)

まさかの1対0!

投手戦となった準決勝第2試合は、両チームとも0行進。
どちらに点が入るか分からない中、7回表に一死満塁から1番茨木智也(2年)がスクイズを決め、三田松聖が1対0で勝利。初の近畿大会出場を決めるとともに、春・夏を含めて初めて兵庫県で決勝に進んだ。

「まさかの1対0」。大西祐監督、茨木主将が声を揃えた。
試合後のミーティングで拍手喝さいだったのが、先発して完封した背番号11の大津直希(2年)だ。「公式戦で完投するのも初めてです」と自身もビックリの様子で話した。

相手は。先発した長尾勇弥をはじめ、平内翔太新免慧大(いずれも2年)と他校が羨む右腕トリオを擁する。
この秋は継投で、長尾が試合を作って平内や新免にリレーするのがパターンになっていた。三田松聖も基本は継投。この日も後ろには背番号1の松本侑也(1年)が控えていた。

立ち上がりから両チームとも得点こそできないものの、ヒットは出ていた。『やはり今日のポイントは継投』。そんな空気の中で、先に動いたのがの橋本智稔監督。4回で5安打を浴びていた長尾を5回から新免に代えた。

その新免は5回、6回と三者凡退に抑える。一方の大津は後半に入っても力投が続いていた。
「前半は直球が中心で、速い変化(スライダー)。後半はチェンジアップを入れて、フォークも多く使った」とキャッチャーの茨木が打線に的を絞らせていなかった理由を話す。


三田松聖vs社 | 高校野球ドットコム

貴重な1点は茨木主将のスクイズ

7回表、先頭の6番清武純也(2年)が四球を選び、の新免から初めて走者を出した。7番谷口誠人(1年)のバントが相手守備のミスを誘い、8番大津もバントがピッチャーの横へヒットになるなど“勝負のツキ”があった三田松聖。一死満塁と場面が変わって茨木が打席に立った。
1球目がボールになった後の2球目、大西監督のサインはスクイズ。だがこれがファウルになる。3球目はストライクとなり、追い込まれた茨木。しかし指揮官は3バントスクイズを決めていた。「スクイズのサインが来ると言う準備はできていました」と茨木。三塁前へきっちりと転がし、三塁走者の谷口が本塁を陥れた。貴重な1点をもぎとった三田松聖

試合後、大西監督が満塁での3バントスクイズ敢行の意図を話した。
「三塁ランナーの谷口はあまり足が速くない選手。2ストライクでいきなりスクイズだと失敗する気がしたので、2球目で一度仕掛けました」。
そう、2球目のファウルが実は3バントへの布石となっていたのである。

スクイズで待望の1点をもらった大津だが、その裏に大きなピンチを迎える。
の先頭打者である5番千葉雄大(2年)にヒットを打たれ、次の6番荻野翔大郎(2年)のバントは小フライで失敗になったものの、7番井上和弥(2年)に右中間を破る二塁打を浴びた。外野のポジショニングと中継プレーで同点は防いだものの、一打逆転になる大ピンチ。チームのパターンならば継投も考えられる所だが、「成長できる試合だと思った。もし打たれて逆転されても終わりではない」と大西監督は大津に託すことを決めた。

8番山本卓(2年)に対した大津は、指揮官の期待に応えてサードゴロに打ち取る。打球が強かった分、三塁走者が戻れず、三本間に挟まれてアウトとなった。ここでも“ツキ”があった三田松聖。大津は続く9番新免をファーストゴロに打ち取って、大ピンチを凌いだ。

結局、ポイントだった継投という策を使わずに終わった大西監督。大津の力投が、継投というここまでの形を崩したと言えるだろう。
9回を6安打完封した大津は、「まだ実感がないです」と不思議な表情で最後まで取材に応じたのが印象的でもあった。

さて、再三に渡ってあった三田松聖の“ツキ”。それに繋がる、試合の流れの上で重要な場面が実は3回表の三田松聖の攻撃であった。
二死一、二塁と攻めていた三田松聖だが、3番内藤晃裕(2年)がピッチャーゴロを放ちチャンスは潰えた。しかしピッチャーの長尾は、アウトカウントを勘違いして、二塁ベースへ投げた。社のセカンド・麻生一誠(2年)は少し遅れてベースカバーに入り事なきをえたが、ベンチに戻ったナイン全員に対して、橋本監督から叱責の声が飛んだ。完全なる確認の徹底ミスで。その後二番手の新免がゲームの流れを一度は立て直し、直結するような大きな影響はなかったかに思えるが、三田松聖が持った“ツキ”の一端には、この場面がやはり伏線になっているように思える。

こういった細かい部分が勝負をわける場合もある。スコアブックの【1-4】という文字がそれを示しているような気がした。

 

(文=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿児島実がコールド勝ち!川内商工は終盤に力尽きる

2024.05.31

夏の愛知大会は6月28日から開幕!決勝戦は7月28日【愛知大会要項】

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿屋農が"強気の勝負"で勝機を引き寄せ4強入り

2024.05.31

【北信越】富山県勢4校が12年ぶりの県勢V狙う、茨木擁する帝京長岡にも注目<地区大会>

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】実力派監督就任で進化した奈良の名門・天理。超高校級の逸材3人を擁し、緻密な攻守で全国クラスのチームに!

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.26

【春季関東大会】白鷗大足利が初優勝!最後はタイブレークの末サヨナラ死球で幕切れ!

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】エース頼み脱却を目指してきた京都国際。「素質はプロ入り左腕と同等」の2年生左腕の台頭と打線強化で京都の大本命に成長!

2024.05.26

【福島】聖光学院が4連覇を達成<春季県大会>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉