試合レポート

福知山成美vs龍谷大平安

2011.05.08

福知山成美vs龍谷大平安 | 高校野球ドットコム

龍谷大平安 高橋(2回に本塁打を放つ)

手合わせすることで・・・

 福知山成美龍谷大平安、京都を代表する強豪同士の激突となった第2試合。夏の大会を占う意味でも重要な一戦となった。
先発のマウンドは、福知山成美が背番号11の山田菖太郎(3年)、龍谷大平安は背番号10の坂口隼斗(3年)だった。
「3月に(龍谷大平安・原田英彦監督と)会った時、ガチンコでやろうと話していたが、フタを開けてみたらこれでしょ。キツネとタヌキ(の化かし合い)ですわ」と福知山成美の田所孝二監督は冗談交じりに笑った。穿った見方をすれば、たしかにエース温存である。

ただ両チームとも、このゲームで夏への隠し合いをやりたかったわけではない。それぞれに事情があった。

まず福知山成美としては、先発した山田と2番手の赤崎大地(3年)で龍谷大平安という強い相手にどこまで耐えられるか。それとエース津田響(3年)が投げていない時に、打線がどれだけ援護できるかという部分を試してみたいという思惑があった。だが、結果的に津田は4回から3番手で登板することになる。

 一方の龍谷大平安のエースナンバーは2年生の田村嘉英がつける。

「春先は調子が良くて、防御率が(投手陣で)一番良かった」という原田監督。
しかしこの日は何度もブルペンで投球練習を行ったが、球はバラつき、投球フォームにも苦慮している様子だった。ベンチに戻ってくる度に、原田監督からフォームを指摘されていた田村。この試合に関しては、使いたくても使える状態にはなかったのである。

 前置きは長くなったが、両エースが先発しなかったこの試合。立ち上がりこそ龍谷大平安が三者凡退に終わるが、1回裏以降は打撃戦の様相になっていた。

1回裏、福知山成美は先頭の新谷承基(3年)が三塁打を放つと、2番西田晃太郎(2年)がライトへ犠牲フライを放って1点を先制。さらにクリーンアップでチャンスを作り、5番幕谷昂大(3年)がレフトへタイムリーを放ってこの回2点を挙げた。

2回表今度は龍谷大平安。先頭の4番高橋大樹(2年)が、初球をレフトスタンドへ運ぶ本塁打。さらに5番小嶋恭介主将(3年)が二塁打を放つと、6番久保田昌也(2年)の一発で逆転した。4人を起用した龍谷大平安2年生のパワーを成美に対し見せつけることになる。

逆転されて成美だが2回裏、先頭の8番原井佑輔(2年)が二塁打で出ると、1番新谷のタイムリー二塁打で同点。さらに2死後3番桑原将志主将(3年)がストレートの四球を選んだ所で、原田監督は坂口をあきらめて、2番手に井上壮(3年)を送る。しかしその井上も4番奥田史弥(3年)にストレートの四球。
満塁となって5番幕谷が2点タイムリーを放って5対3とした成美。先発した山田の打順で代打を起用していたため、3回からは2番手の左腕・赤崎をマウンドに送った田所監督。


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エース津田(福知山成美)

 だが代わった赤崎のコントロールが定まらない。先頭の高橋と6番久保田という本塁打を放っている2人を歩かせてしまうと、8番柴森雅人(3年)の2点タイムリーで試合はまたも同点になった。

この2回裏と3回表の攻防。共通するのは、投手がそれぞれストライクを取るのに苦慮したことである。ストライクが取れなくては、ベンチとしてどうしようもない状態。
野球はストライクが入らなければ、永遠に終わらないスポーツ。ストライクを取れないとなると、対戦相手に対しても迷惑をかける。ストライクを取る=ゲームを進めていきましょう、という相手への意思表示にもなるということを、全国の球児には学んでもらいたい。
打たれるのを怖がって四球を与えるよりも、勝負して打たれた方が投手にとっても勉強になる。もちろん、リードする捕手の力も必要だ。

話を試合に戻す。
3回裏、成美は投手・赤崎の打順でまたも代打を送った。これで4回からはエース津田を立てることになった田所監督。
平安ベンチからは「練習通りいこう」という声が飛んだ。「今週は津田君を想定して練習をしてきた」と原田監督は声の意図を説明してくれた。

しかしマウンドに上がった津田はやはり経験十分。3番井澤凌一朗(2年)からのクリーンアップをわずか11球三者凡退に切って取った。「練習通り」と意気込んだ龍谷大平安打線の勢いはこれで止まった。

その裏、2死1、2塁から7番響和也(2年)の二塁打で2点を勝ち越した成美。津田は5回表の守りも14球三者凡退に打ち取り、流れは完全に成美のものになった。

だが、それ以降は成美の打線も止まる。平安・井上が立ち直ったからだ。打撃戦の前半にありがちな後半得点をできないパターンにこの試合は陥った。
結局そのまま9回表へ。


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龍谷大平安を破り安堵した表情の津田(左)

龍谷大平安は1死から4番高橋がヒットとエラーで二塁まで進む。続く5番小嶋は2球目を打ち返すと、打球は痛烈なライナーとなってライトへ。その打球を9回から守備についていた平野謙介(3年)が好捕。三塁ベースを回ろうとしていた高橋は戻ることができず、ダブルプレーとなって試合はあっけなく決した。

 「津田が投げると安定する。でも彼が投げると逆に打てないんですよ」と振り返った田所監督。できれば津田を後半まで引っ張りたかったとの思惑は、山田と赤崎のピッチングで崩れた。津田以外の投手にまだまだ不安があることを指揮官は嘆いた。

一方の龍谷大平安はロッカールームで長いミーティングが続いていた。監督、部長、コーチからさまざまな訓示が飛ぶ。

「津田君が出てきて、ヨッシャー練習通りと言いながら練習通りできない」と気持ちの部分がまだまだ弱いことを話した原田監督。
ただ、「(前半は)ある程度打つことができた。2年生の多いチームだが、それは収穫かな」と指揮官は少しではあるが、成長も感じ取れた春のようだ。

得点経過と起用法だけ見れば、腹の探り合い(戦力の隠し合い)と思われるかもしれない。でも実際に試合を見た感覚はまったく違う。
敗れた原田監督は、「投手はまだ誰が軸になるかわからない。これからです」と話し、勝った田所監督は、これでまた2日間公式戦を戦えることを強調した。
強豪同士がぶつかり合うことで、それぞれが何を得て、何を持ち帰って夏への糧とするか。まずは龍谷大平安が一週早く、夏へ再スタートを切った。

(文=松倉雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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