試合レポート

PL学園vs上宮太子

2010.10.18

PL学園vs上宮太子 | 高校野球ドットコム

大川悟投手(PL学園)

しぶとく!

 『しぶとく、渋く、粘って』PL学園が近畿大会最後のイスを掴み取った。

 吉川大幾前主将や勧野甲輝(ともに3年)というプロ志望届を出すような凄い選手はいない。試合を見ていても、強さはほとんど感じない。

 「ここまで来られるチームだとは思っていなかった」という河野有道監督の言葉が、今のPL学園の力を物語っている。

 前日の準決勝(2010年10月16日)は大阪桐蔭にコールド負け。河野監督は「選手には直接言えなかったけど、桐蔭とはやはり力の差はあると思っていた」と覚悟していた負けだった。それでもこの日、河野監督は選手に語りかけたという。

「お前達にも(甲子園という)夢があるんだろ」。

選手は持っている力以上のものをこの3位決定戦にぶつけた。

 まずは先発のマウンドに上がった大川悟(2年)。普段はセンターを守る大川だが、この秋から投手の練習も始め、5回戦(東大阪大柏原)と準々決勝(大商大堺)に続く3度目の公式戦のマウンドだ。

 前日、エースの橋本純一(2年)ら3投手が打たれていただけに、河野監督としても最後の砦として送り出した左腕。

 「負ければここで終わりというプレッシャーはあった」という大川が立ちあがり2つの四球で2死ながらピンチを背負う。それでも「先制点を与えたくなかった」と意地で三振に切り、ピンチを切り抜けた。


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PL学園・森(5回表に好返球でピンチを救う)

 2回以降、立ち直った大川が次に迎えたピンチは5回。1死から上宮太子の7番谷護(1年)に初ヒットを浴びる。送りバントで2死2塁。

 このピンチの救ったのがセンターを守る、森雅仁(2年)。9番金城輝昌(2年)が放った打球はセンター前へ抜けた。二塁走者は一気に本塁を目指す。「しまった」という大川だが、森からの返球は真っすぐに捕手の深海翼のミットに収まり、走者は本塁で憤死。与えたくなかった先取点を阻止した。

 普段は内野手で前日のようにセカンドを守ることが多い森だが、この日は大川がマウンドに立つということで、センターに回っていた。河野監督が「本来は内野手なのだが、器用な選手なので」と話す森のビッグプレー。大川も「自分が投げていても心強い」と終盤にもファインプレーを見せた森に感謝。

 これで勢いのついたPL学園はその裏、今度は下位打線が活躍する。先頭の8番藤本裕規(2年)がレフトの頭を越す三塁打で出塁。続く9番三好宏紀(2年)は2球目を打ち返すと、渋くライトの前へ落ちるタイムリーヒットとなり待望の先取点が入った。

 実はこの三好はこの日セカンドで出場。前日は森がセカンドを守っていたために出番はなかった。その森が大川の先発に伴ってセンターに回り、掴んだ出場の機会。そのチャンスに貴重な先制タイムリーという形で応えた。

 1点をもらった大川は後半、緩急をつけたピッチングがさらに冴え、上宮太子打線に連打を許さない。PL学園は8回裏に5番菅元隆斗(2年)のタイムリー三塁打と6番山原泰士(2年)のスクイズで2点を追加し3対0。

 「強い気持ちで投げた」という大川は最後まで崩れず、120球で公式戦初完封。河野監督に「投手の軸も今は大川」と言わせるほど粘り強いピッチングを見せた。


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PL学園 深海翼主将

 近畿大会出場を決めた試合後も大きな喜びを見せなかったPL学園の選手たち。大川も「3位なので」と笑顔を見せず淡々と整列に加わった。

 誰一人飛び抜けた選手のいない今年のPL学園。選手の体格もこの日対戦した上宮太子や前日の大阪桐蔭と比べても本当に小さい選手が多い。深海主将も「みんなでやるしかない」と弱さを自覚している。そんな中で掴んだ3位での近畿大会出場の効果は、確実に来年への財産となる。

 弱いなりに負けない野球が近畿大会で対戦するチームにとって脅威になってくるだろう。
 

(文=松倉 雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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