ドラ6左腕は町のスーパーヒーローに 恩師が語る広島・玉村昇悟の変わらぬ投げっぷり
高校時代の玉村 昇悟(丹生)
10日に北信越地区の21世紀枠推薦校に選ばれた福井県の丹生(にゅう)。最終発表が行われる1月28日の結果次第で、甲子園への道が切り開かれることになる。2年前の2019年夏以来となる甲子園出場のチャンスが目の前まで来ている。
19年夏は決勝戦で、敦賀気比の前に0対3で敗退。力及ばず、夢舞台に手が届かなかった。ただ、その年の秋、エース・玉村昇悟投手は広島から6位指名を受け、同校初のプロ野球選手になった。
それから2年、現在の選手たちは玉村たちと入れ替わりで丹生の門を叩いた。現在は2学年合わせて部員は27人と、学校の規模や他部活の状況を見れば多いほうだと春木竜一監督は話す。
「玉村効果は大きいですね。実際、エースの井上 颯太は、玉村に憧れて入学してきた左の本格派です。『玉村さんと同じ練習をやりたい。玉村さんみたいになりたい』ということで、背中を追いかけて入学してきましたから」
井上のみならず、他の選手たちも「甲子園出場」と志を高く、丹生へ入学した。そのメンバーが中心となって秋季県大会はベスト4まで勝ち上がった。部員数のみならず、戦力といった視点からも玉村効果が大きいことは間違いない。
玉村は「学校で一番の有名人になりつつあります」と今では丹生が輩出した町のスーパーヒーローとして、野球部だけでなく丹生高校はじめ、地域に良い影響を与えるという。
この事実を嬉しそうに春木監督が話すと、続けてプロでの活躍ぶりを振り返った。
「ローテーションを確認して、登板するときは欠かさず見ていましたが、楽しくて仕方ないです。
基本的には高校時代と変わらず、試合中にマウンドで動じることなく、その時できるベストパフォーマンスを発揮しているように見えます。調子が悪くても、悪いなりにどうにかする。その辺りは賢い子だなと再認識できましたし、同時に『やっぱりすごかったんだ』と思いました」
試合ごと、さらにはイニングごとでも見せる些細な変化から、春木監督は玉村の自己分析の高さに驚いていたという。特にそれを強く感じたのは、シーズンの終盤の2試合だった。
「シーズン終盤はフォームを崩しているように見えました。おそらく疲労の影響だと思いますが、球速も143キロ前後で開幕時より5キロくらい落ちていました。でも、先発として試合を作って、2連勝でシーズンを終えた。そこに、玉村の能力の高さを感じました」
この能力は入学した段階からあったという春木監督は玉村を「入学したときから練習に対してストイックで取り組み方自体が大人でした。今の選手にしたら良き手本です」と誇らしげに話した。
とは言え、まだ2年目が終わったばかり。玉村のプロ野球生活は、これからが大切な時期だ。「怪我無く頑張ってほしいです」と恩師はエールを送ったが、越前町のスーパーヒーローがこれからどんな投手へ成長していくのか。
後輩たちの道しるべとなるような大投手へ、一歩ずつ前へ進んでほしい。