横浜隼人・水谷哲也監督は部員全員に電話する日を設定して意思疎通図る
横浜隼人の水谷哲也監督は部員全員に電話する日を設定している
今、こうして休校が続いている中での時間の過ごし方や心構えなどをメールで送っているというのは、横浜隼人の水谷哲也監督だ。さらには、メンタルトレーニングのコーチからの文章も送ったり、保護者達に対してのメール配信なども行っているという。
「ウチは、普段から選手たちにも言っているんですけれども、勝った負けたというためだけに野球をやっているのではないんです。部活動として、野球をやることで人間として成長していくためにやっているということ。これは、方針ですから、こういう事態になったとしても、選手たちは、割と前向きにやっていっていると思います。今は各自が自主的な個人練習という形しか出来ていませんけれども、精神的には大丈夫でしょう」
と言うくらいに信頼している。
それでも、週に一度くらいに日にちを決めて、73人いるという2年生、3年生に全員に電話をして話をしているという。時間にして一人2~3分くらいかもしれないが、73人全員に電話するとなると、3~4時間くらいはかかってしまうであろう。しかし、それを当たり前と思ってやってしまうところに水谷監督の人柄が表れている。
「誰かと話して、誰かとは話していないという不公平があってはいけませんから。とにかく全員と、今どうしているんだ、体調はどうだ、ということなどを話します。そのことで選手も安心するでしょうし、私も声を聞いて安心出来ます」
そういう思いを常に持っているのが水谷監督である。こうした細かい気遣いや思いが、水谷監督が選手たちだけではなく、多くの高校野球指導者や野球関係者たちからも慕われていく要因でもあるのだ。
横浜隼人の水谷哲也監督というと、高校野球関係者の間では有名人だ。北は北海道から南は九州、沖縄まで、全国いたるところでその名前聞く。甲子園出場実績は、筒香嘉智選手のいた横浜に勝って果たした2009年夏のわずか一度だけなのだが、その知名度は全国区である。
それは、さまざまなアイデアを駆使した練習法や“隼人式”と言われるグラウンド整備スタイル。そして、ソフトな関西訛りで聞く人を魅了していく話術などもある。だから、全国各地の指導者が、その指導法や精神などを学ぼうと訪れてくる。折しも、この時期は毎年沖縄勢や近畿勢などが多く訪れてくる時期である。もっとも、今年はそういったスケジュールもオールキャンセルになってしまった。
「今年の代の子たちは、こうした今まで誰も経験したことのないことを経験しているわけです。だから、それはそれで、人生ということで言えば、必ず糧になっていくはずだ」
そういう意識で、選手たちには声掛けをしている。
「このまま大会がなくなったとしたら、試合に負けたのではなく、コロナに負けただけのことですから。だけど、それですべてが終わりではないんです。野球を継続するにせよ、しないにせよ、皆な次のステージがあるわけです。だから、次のステージで頑張れるための力にはしてほしい」
そう願っている。
とは言うものの、進路の問題はやはり一番頭の痛いところでもあるという。野球のスポーツ推薦で大学進学を希望する生徒にとっては、県大会ベスト4以上とか、それぞれの学校の基準があるのだが、今年はその物差しがないということになる。それはもちろん、社会人野球も同じで、数少ない社会人野球の枠にしたところで、採用基準となる大会がないのだからどうしようもない。
実は、水谷監督の二人の息子が図らずも、その世代となっているのだ。横浜隼人の選手たちもそうだが、「この代の進路については特別の基準を作ってもらうしかないかない」というのも、本音かもしれない。水谷監督自身としても、覚悟としては「今の状況では、(夏の大会は)ないかも知れないと考えている」と言う。
それでも、練習が再開すれば、選手たちは次のステージへ向けての準備は進めていくことになる。そうした前提で選手たちには、気持ちを作っていくことと、自分のバッティングフォーム、スローイングフォームはしっかりと確認しておくようにということは伝えている。また、組織プレーがやれていないので、再開した時にケガの心配もしている。それだけに、身体作りもケアも含めてしっかりと行っていくようにということはアドバイスしている。
「6月から、休校が解けたとしても、すぐに元に戻るということは難しいでしょう。学校としては、最初は野球場含めて1時間くらいのグラウンド開放という形になるでしょうから、部活動としてきちんと動けるようになるのは、それからさらに1カ月くらいはかかるのではないかと思う」
系列の中学と高校合わせて、同一キャンパス内に1500人前後の生徒が集まる横浜隼人。マンモス校だけに、通常に戻していくのは、時間がかかりそうだ。
それでも、水谷監督自身も、現状を受け入れていかなくてはいけないのであろう。
「今、こうして野球関係者と話しを出来ることだけが、唯一の楽しみですよ」
そう言って笑い飛ばしていたが、その言葉を聞いている私の方もちょっと心が安らいだ。
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