福岡の実力公立校・香椎が取り入れた「課題練習」
杉野弘英監督(香椎)
福岡県内でひそかに注目される公立校・香椎にはユニークな練習がある。それは、「課題練習」だ。
チーム内では通称「課題」と呼ばれている。どんな練習かと言うと。自由な練習のことで、練習の終わりに30分間は各自が自分で考えて、必要と思う練習を30分間行うのだ。
なぜ、このような練習をしようと思ったのか。
杉野弘英監督は、「私が監督になって最初の2年間は、夏は勝てなくてですね。その中で、色んな変化を求めていく中で、私自身が少し考え方を変えたのと、指定強化部になったので、少し長く練習の時間が取れるようなったので、その時から子供たちが自分たちで、少し考えて出来る練習を取り入れようと思ってはじめました」と話してくれた。
もちろん、まだ高校生である。自由にさせても自身の目的とズレた練習をしてしまうこともある。そこで活用しているのが野球ノートだ。
「子供達は野球ノートをいつも書いているんです。一週間に1回ですけど。そこに自分の課題を結構書いてきたので、それと『課題練習』の時間(にどんな練習をしているか) マッチングしているかとかを見ながらですね。 子供達はいろいろ自分たちで考えて練習をしています」
この野球ノートによって、目的と行動が一致しているかの確認ができる。
「最初取り入れ時は、実は本当にキャッチボールしたりとかティーバッティングしたりとかそういう風なことにしか時間を使ってなかったのですが、子供達の意識が高まってくるとともに、例えばキャッチャーがノックの球を取る、(クロスプレーの時の)ボールを取る感覚を養うとか、自分たちで練習できるようになってきました」
杉野監督は、選手たちが考えることで、「課題練習」の時間が有意義に変化してきたことを話してくれた。
山下雄太郎は、この時間を活用して自身の投手としての生命線ツーシームを試合終盤まで正確に投げられるように、指を鍛える時間に割いているという。また、同じく投手陣の一角を担う、松尾厚輝は、「自分は体重が少なかったのでマネージャーが作ってくれたおにぎりを食べることと、ウェイトですね。体作りを『課題』(の時間)にしています」と話すように、それぞれが自身の課題と向き合う時間として、有効活用している。
このように、自分自身で考える癖が付くと、「課題練習」以外でも効果が出てくる。
主将の吉村南杜は、「声の質を求めています。『いいね』や『頑張れ』だけじゃなくて、どこがいいのかなど具体性を持たせた声を出すことを意識しています」と話すように、通常の練習でも目的を考えた行動に繋がってくるのである。
「課題練習」を活用し、練習の効果を最大限に活かし、目指すは香椎の目標でもある全国ナンバーワンへ。ユニークな練習とともに、このオフシーズンを飛躍の冬へと変える!
記事=田中 実
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