1浪を乗り越えて146キロ右腕へ成長した逸材が大学準硬式に 国立大・新潟大の伊藤 駿太に注目
伊藤 駿太
19日より2日間にわたって福岡県内で開催されている第40回全日本大学9ブロック対抗準硬式野球大会(以下、9ブロック大会)。各地区の連盟が選出した選手たちでオールスターチームを組んで地域No.1を決める。大学準硬式界にとって数少ない全国区の大会である。
19日に予選ラウンドが行われ、20日の準決勝に関東、北信越、東海、福岡選抜の4チームが勝ち進んだ。準決勝、決勝と連戦となり、19日から最大4試合を戦うハードなスケジュールで日本一を狙う戦いが繰り広げられるなか、北信越選抜に面白い存在がいた。
新潟大3年・伊藤 駿太投手(日立一出身)。医学部に所属し、放射線技師を目指して勉強をしている。高校時代も茨城県の日立一出身で、甲子園には手が届かなったが、現在は最速146キロを投げる北信越を代表する速球派投手として注目されている。
19日の東海選抜戦は不調ということで球速は130キロ前半にとどまったが、「打たせて取ることが理想です」という120キロ台のツーシームを軸に6回を投げて1失点の好投を見せた。
高校時代は最速135キロ。恩師の勧めで制球力重視のサイドスローだったが、元々はオーバースロー。左腕を三塁ベンチに伸ばして壁を意識したまま重心移動。左足を着地させてブレーキをかけると、その時の反動を生かして最後に右腕を上から振り下ろす。全体を通じていいバランスで投げられている印象だが、本人が手ごたえをつかんだのは2年生春ごろだ。
「入学当時もサイドスローで135キロくらい出していたんですが、主戦で投げることが増えてきたことをきっかけにフォームを戻しました。ただ高校時代は制球力が課題だったので、NPB球団のSNSなどを通じて、技術を盗んでフォームを見つけました」
なかでも下半身、軸足の使い方にはこだわっている。
地面を押す感覚で膝を曲げて重心を一度下げることで地面からの力を借りるとともに、下半身を使えるようにして、最後はプレートを蹴ってフォームに勢いをつけて、右腕を鋭く振り抜いている。
全身を使ったフォームを覚えると、2年生の秋に140キロに届き、1年前の9ブロック大会で146キロまで伸ばした。高校から10キロアップ、しかも1浪したブランクがあったにもかかわらず、大きな成長を遂げた。
当初は高校で野球を引退するつもりだったが、浪人生活のときに「甲子園を見て、『やっぱりやりたい』と思ったんです」と夢舞台の感化されて、新潟大入学後に準硬式を知り、野球界に戻ってきた。1年目は遊撃手をメインにしてきたが、1学年上から主戦投手として白羽の矢が立ち、「自分がやらないといけない」と自覚も芽生え、フォーム改造に至ったのが、飛躍に結びついた。
練習は週2日だが、高校時代は名門校出身だった強打者とも対戦できていることにやりがいを感じている。「こっち(準硬式)を選んでよかったです」と無邪気な笑顔が何よりも充実感を醸し出していた。
浪人生活を乗り越えて国立大・新潟大に進んだ146キロ右腕。その活躍は、文武両道で奮闘する高校球児にも良い刺激になるはずだ。