大阪大などに卒業生を輩出する進学校・三国丘 文武両道を地で行く公立校は打倒・強豪私学へ「何かしてやりたい」
挟殺プレーの練習模様
激戦区の大阪府で存在感を示している公立進学校が三国丘だ。創部120年を超える伝統校で、1934年と1984年の春には甲子園にも出場している。
昨夏は最速144キロ左腕の文野結を擁して16強。強豪私学の活躍が目立つ近年でも安定して上位に勝ち進んでいる。今回は文武両道を地で行く三国丘の現状に迫った。
練習時間はおよそ1時間半、週2日のグラウンド練習で結果を残せる理由
OBでもある辻英生監督によると、中学校の通知表では5段階評価の平均で4.7~8前後が入学のハードルとなっているという。野球部員の約8割が塾に通っており、近年は大阪大、神戸大、大阪公立大などに卒業生を送り出している。昨年のエースだった文野は医学部進学を目指して浪人しているそうだ。
学業に力を入れている学校ということもあり、部活動の制約も少なくない。月曜日はオフと定められており、水曜日と金曜日は7時間目まで授業があるため、練習開始は早くても16時過ぎになる。また、定時制がある都合で18時には下校しないといけないため、練習時間が1時間半に満たないことも珍しくない。さらに他の部との兼ね合いで週2回はグラウンドを使うことができず、そうした日は空いたスペースでの素振りや体幹トレーニングなどが中心になる。
公立校の中でも環境は恵まれていない方だろう。その中でも結果を出すために辻監督は頭を使うことを選手たちに求めている。
「『考える力はあるはずやから、練習もしっかり考えよう。他所のチームが10本ノックを受けて習得するところをお前らは1本で習得する。そのためには常に自分と向き合いながら課題意識を持って練習しなさい』と言っています」(辻監督)
目的意識を持ちながら一つのプレーを大切にして上達のスピードを早める。そうして強豪校とも対等に戦えるチームを作り上げてきた。
取材日は7時間授業の水曜日。生憎の雨模様だったこの日の練習メニューは以下の通りだった。
・アップ
・レインボールを使って挟殺プレーの練習
・2班に分かれて、昇降口付近で素振りと体幹トレーニング
全体の練習時間は約1時間。一旦、集合した後に各々が自主練習に取り組んでいたが、17時半にはそれも終わっていた。
他の強豪校に比べると練習量は圧倒的に足りない。それを埋めるために1年夏から公式戦で捕手として出場している西畑颯真主将(3年)は「『練習の合間を短くしよう』と常にチーム内で言っています」と効率良く練習することを心掛けている。
それが垣間見られたのが挟殺プレー練習の時。まずは守備側だけで練習を行った後、辻監督がランナーを付けて練習するためにヘルメットを持ってくるように指示した。すると、数人が一目散にヘルメットを取りに行き、すぐにランナーを付けての挟殺プレー練習を開始。無駄な時間を作らないという意識が各選手の動きから感じることができた。