<2025年全国高等学校野球選手権東東京大会:二松学舎大付5-2大東大一>◇13日◇3回戦◇江戸川区球場

 ノーシードながらセンバツ出場の二松学舎大付と、初めて夏の大会のシード校になった大東大一の試合は、内野席は一杯になり、外野席も開放される熱気の中で行われた。そして3回戦で対戦させるのは、あまりに惜しいと思わせる好ゲームになった。

 開幕戦から登場し、この試合が早くも3試合目になる二松学舎大付。1回戦、2回戦は背番号が二けたの投手が登板したが、ついにエースである河内 紬(3年)が先発した。大東大一はチームの柱であるエースの辻井 晴斗(3年)が予定通り先発した。

「相手もエース、負けないぞ」という気持ちでマウンドに上がった二松学舎大付の河内は、3番打者でもある大東大一のエース・辻井に右前安打を打たれたものの、1回表は奪三振2で無失点に抑える好調な立ち上がり。

 1回裏、二松学舎大付は1番・入山 唯斗内野手(3年)が四球で出塁したものの、得点を挙げることができなかった。しかしこの回、抑えの投手でもある3番・及川 翔伍外野手(3年)が自打球を当てて、足を痛める。試合には出場し続けたものの、投手交代のタイミングは難しくなった。

 2回裏、二松学舎大付は左前安打で出塁した5番・永尾 愛蓮捕手(3年)が、犠打で二塁に進み、8番・土屋 慶太内野手(3年)の左前安打で還り1点を先制する。それでもまだ試合は分からない状況であったが、3回裏この回先頭の入山が、レフトスタンドに本塁打を叩きこみ、貴重な追加点を挙げる。「インコースの真っ直ぐを打ちました」入山は語る。

 それでも大東大一は4回表、3番・辻井が中前安打で出塁すると、二盗を成功させる。そこで5番・山木 煌太が右前安打を放ち1点を返す。

 しかし5回裏、二松学舎大付は、9番の河内が内野安打で出塁すると、前の打席で本塁打を放った入江が、今度はバント。これが内野安打になり、一、二塁。3番・及川の二塁打で河内が還り、4番・早坂 健太内野手(2年)の右犠飛で入山が生還する。

 二松学舎大付の攻撃により4点を失ったものの、大東大一の辻井も好投していた。二松学舎大付の市原 勝人監督は、「カットボールが良かったですね」と語る。しかし6回裏、辻井は足を吊り、一度ベンチに戻る。「この暑さ、かわいそうな面もありました」と二松学舎大付の市原監督は語る。

 戻ってきた辻井から、この試合当たっている入山が右前適時打を放ち、二松学舎大付がさらに1点を追加する。初戦で八王子に敗れた春季大会では元気がなかった入山だが、この試合は本塁打を含む3安打、打点2の活躍。「チームが苦しい時にやってくれる選手です」と市原監督は語る。

 一方、暑さで足が吊り一度はベンチに下がった辻井だが、入山に適時打を打たれた後は、得点を許さない。「変化球に力が抜けて、かえって緩急が付けられました」と大東大一の宮城 智行監督は語る。

 辻井の投げる姿に大東大一の打線も奮起し、7回表に1点を返す。8回表、大東大一が安打2本で一死一、二塁としたところで、二松学舎大付は、初回に自打球を当て、登板を延ばしていた及川を、ついにマウンドに上げる。及川は2人を三振に仕留める貫禄の投球で、無失点に抑える。9回表大東大一は1番・田中 悠雅内野手(3年)が右前安打で出塁したが、2番・石寺桜侍郎外野手(3年)の右直に田中が飛び出し、併殺となった。最後は3番の辻井が投ゴロ。辻井は一塁に頭から飛び込んだが及ばず、二松学舎大付が4回戦進出を決めた。

 二松学舎大付は秋季大会で優勝した時にもみせた河内、及川という必勝リレーは圧巻だった。「勝負どころでギアを上げられる、甲子園のレベルをみせてもらいました」と大東大一の宮城監督は語る。

 そして春季大会では調子を落としていた入山が完全に復活した。「挑戦者の気持ちで攻めていきたいです」と入山は語る。秋の強い二松学舎大付が戻ってきた、と感じさせる3回戦の戦いであった。

 それに立ち向かった辻井投手を中心とした大東大一の戦いも素晴らしかった。辻井は大学で野球を続けるつもりだという。体ができてくれば、まだまだ球速は伸びるだろう。今後に活躍を期待したい。