この春、注目度が上がっているコンビがいる。栃木の幸福の科学学園でプレーするエミール・セラーノ・プレンサ投手、ユニオール・エルイン・ヌニエス・ジャケス捕手だ。2人は主力選手として同校初の春ベスト8に導いた。
エミールは横浜、中日、楽天で通算30勝を挙げたドミンゴ・グスマン氏を父に持つ大型右腕だ。
森繁和氏の縁で2人が入学
ドミニカ共和国出身の2人は高校入学を機に幸福の科学学園に入学した。この2人が日本に留学できたのは、同校を率いる棚橋誠一郎監督が元中日の投手コーチ・森繁和氏と知り合いだったことだ。明治大の主務だった棚橋監督は森氏とは駒沢大時代からの仲だった。森氏といえば、ドミニカ共和国とのパイプを築き上げ、マキシモ・ネルソン投手、トニ・ブランコ内野手ら有望選手を次々来日させた。ちなみに父・ドミンゴは中日在籍期間で13勝を挙げている。
エミールは188センチ108キロと188センチだった父譲りの体格を持ち、最速144キロの速球、高校通算15本塁打の長打力を秘める。担ぎ気味の投球フォームや、前傾気味のランニングフォーム、ヘッドスライディングを多用するところはよく似ている。エミールは動画などで父の現役時代の映像を見たり、森氏が学校を訪問した時は父の話を聞いたりしているという。
一塁に達したエミール
29日の佐野日大戦の第2打席では三塁手のミスで打球が外野へ抜けて、エミールは一気に二塁へ。二塁では猛烈なヘッドスライディングを見せた。
「わざとです」と陽気に笑う。父は中日時代、投手ながらチームトップクラスの俊足を誇ったが、エミールも非常に足が速い。「足は自信あります」と胸を張る。肩も非常に強く、シートノックではセンターの遠い位置からほぼワンバウンド送球を見せた。打撃では第3打席で猛烈なスイングでライナー性の左前適時打を放った。エースの田中悠太郎投手(3年)は「足、肩と身体能力は凄いですが、やはり打撃の飛距離が段違いです」と語る。
ここまで見ると野手としての将来性を感じる。今大会は調子が上がらず、投手としての登板はなかったが、棚橋監督も野手として評価している。
「ボールにばらつきが多いですね。ストライクゾーンにしっかりと集まれば、あまり打たれることはないのですが、まだまだです。本人も打撃が好きと語っていますからね。ドミニカにいた時も、投手はやっていないからですからね」
エミールをリードするユニオールは棚橋監督から「頭脳的」と評価するほどクレバーな選手で、日本語の上達も早く、エミールが理解できない日本語については、ユニオールが通訳する。佐野日大戦の試合後でも記者からの質問に対し、ユニオールがエミールに説明する場面があった。
エースの田中は「最初はお互いが言葉を理解できていないので、なかなかうまくいかない事が多かったのですが、今はだいぶやり取りが出来ています」と信頼を寄せる。
3番を打つエミールは佐野日大戦の第3打席で詰まりながらも、ライトへ三塁打を放った。弧を大きく描いたスイングから捉える打球は非常に速く、長打力もある。佐野日大戦を終えて、「佐野日大打線は非常に強烈で、対戦出来てよかったです。夏に甲子園にいくためには細かい野球を覚えていかなければなりません」と課題を語った。