2024年の第55回明治神宮野球大会の高校の部で、もっとも印象に残った投手を挙げろと言われれば、この投手を取り上げたい。準優勝した広島商(中国・広島)の背番号1、大宗 和響投手(2年)である。

準決勝の敦賀気比(北信越・福井)戦で、先発10回、184球を投げた。11安打を浴び、8点を失ったが、粘り強く投げる姿が脳裏に焼き付いた。球数制限が強調される現代にあって、こんな投球数は、なかなかない。タフな右腕がたくましくも感じた。

7回までは無失点に抑えていた。失点は8だが自責点は2と、多少、守備のほころびに泣いた面もある。140キロに満たない直球ながら、微妙に動き、バットの芯を外していた。針の穴を通すようなコントロールはないが、適度に球が荒れながらも、勝負どころではコーナーに直球、変化球が決まっていた。このスタイルが大宗を支えていた。

力みのない投球フォームがタフな投球にもつながっている。巨人、メジャーなどで活躍した上原浩治氏のように、リリースの時だけに力を入れる流れるようなフォーム。レベルの違いこそあれ、直球の切れと、フォークの落ち具合も、なんとなく似ているように思えた。

伝統校を選んだ右腕に対して、荒谷監督も厳しい場面を経験させたいという思いから、明治神宮大会で10回まで投げさせるなど、背番号1の成長を大いに期待している。

来年春のセンバツのマウンドで、肉体的にも精神的にもタフになった大宗の姿を見たいと思う。