21世紀枠出場・田辺(和歌山)「選ばれるのは難しいと思っていた」監督の涙
第96回選抜高等学校野球大会の出場32校が決定し、21世紀枠では和歌山県の田辺が選出された。
校長室で選考結果を見届けた田中 格監督の目には光るものがあった。
「夢のようです。全国各地から素晴らしいチームが選出されていたので、選ばれるのは難しいかなと思っていました。その中で田辺高校の名前が出たので、涙が止まらなかったですね」
田辺は旧制の田辺中時代に1947年と48年のセンバツに出場。夏は95年に1度だけ甲子園に出場したことがある。
OBの田中監督率いる今年のチームは、選手18人ながら秋の県大会では市立和歌山、智辯和歌山を破って52年ぶりに近畿大会出場。近畿大会では初戦敗退に終わるも4強入りした京都国際と延長戦にもつれ込む熱戦を演じた。
教育相談を担った経験のある田中監督がスクールカウンセラーと連携し、イップスを克服するサポートをしたり、対人関係の相談に乗ったりするなど対話を重視。精神的にも1人1人を細やかにフォローする点が、これからの時代のあり方として評価されたことが選出につながった。
また、8年ほど前から小学生向けの野球教室を行うなど、地域の野球振興にも一役買っている。主将の山本 結翔内野手(2年)も小学生時代に参加した子どもの1人だ。「紀南地域の野球人口が減ってきていますが、この活動をすることで高校まで野球を続けてくれている人がいるので、嬉しく思います」と喜ぶ。
和歌山県南部では屈指の進学校であり、昨年度は京都大や大阪大に合格する生徒がいた。前主将の脇坂 颯大(3年)は名古屋大志望。「後輩はまじめな子が多くて、先輩として教育する時もそんなに苦労しなかったです。甲子園という舞台を楽しんでもらいたいです」と後輩にエールを送る。
内角を強気に突く投球を見せる、最速139キロ右腕の寺西 邦右投手(2年)や、市立和歌山戦と智辯和歌山戦で本塁打を放った4番の山本 陣世内野手(2年)など、21世紀枠でも実力は一般枠のチームと遜色ない。「一番の目標は優勝です」と山本結主将は堂々と宣言する。「平常心で戦える」と田中監督が評するチームは甲子園でも強さを発揮するはずだ。