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【愛知県のベストゲーム2023】センバツ濃厚・豊川 ”快進撃の起点”となった秋季県準々決勝・東邦戦

2023.12.16


今年も、愛知県の高校野球では幾多の好試合が展開された。そんな中で、ベストゲームと言える試合をピックアップして紹介していきたい。夏の選手権大会ではなく新チームとして戦った、翌春のセンバツ大会の選考に大きな影響のある、秋季愛知県大会準々決勝「豊川VS東邦」を選んだ。

〇秋季愛知県大会準々決勝(9月23日・岡崎レッドダイヤモンドスタジアム)
東 邦000 001 000=1
豊 川210 000 00X=3

22年秋の県大会優勝校で、その年の東海地区大会も制してセンバツ出場を果たした東邦。夏は4回戦で星城に敗れてしまったが、この秋も、有力校の1つに挙げられていた。県大会の初戦(2回戦)は栄徳、3回戦は至学館と、いずれも私学の中堅以上の実力校を危なげなく下して、下馬評通りのベスト8進出となっている。

これに対して豊川は、東三河地区を1位校として通過し、第1シード校となった。初戦(2回戦)では名古屋に快勝し、3回戦でも西三河地区では実績のある有力校の1つと言っていい、西尾東を下してのベスト8進出を果たしている。

豊川の長谷川裕記監督は、「自分が監督就任してから、名古屋の私学4強の中では東邦だけには、なかなか勝てなかったので、この組み合わせが決まった段階から、何とか東邦に勝ちたいと思っていた」という思いだった。そのためには、着実に準々決勝まで進出しなくてはいけない。それだけに、慎重に戦ってきたのだけれども、それを果たしてのベスト8だった。

この秋のチームは、試合で投げられる投手は、7人を用意しているという東邦。投手陣の層の厚さでは、県内でも屈指と言ってもいいくらいのチームである。そんな中で、東邦は1番をつけた杉浦 成海投手(2年)が先発した。これに対して豊川は、背番号11だが長谷川裕記監督が、「何がいいというワケではないけれども、不思議と上手に抑えていってくれる」という鈴木 爽太投手(2年)が先発。東三河の地区予選の段階から、鈴木を軸として戦ってきており、その真価が問われる試合だったといってもいいであろう。

結果的には、序盤の攻防の明暗がそのまま、勝負を決してしまったという形になった。豊川は初回、1死から高橋 賢捕手(2年)が四球を選ぶと、3番・注目のモイセエフ ニキータ外野手(2年)の打球は、右翼手を強烈に襲い二塁打となって二、三塁。これで、東邦の杉浦は慎重になりすぎた。制球がまとまり切らず、連続四球で押し出し。さらに、2死となっても、山本 玲王外野手(2年)に対して、またもストレートの四球となってしまった。こうして、東邦の先発投手の硬さに乗じて、豊川はわずか1安打のみで、2つの押し出しを含む4四球で2点を「貰った」形となった。

さらに、2回にも豊川は2死走者なしから、2番・高橋が安打で出塁すると、続くモイセエフが右翼線へ三塁打を放って3点目を奪った。こうして豊川は、序盤に注目のモイセエフの2本の長打と四球などで、3点を奪った。

何とか早い回で少しでも差を詰めていきたい東邦だったが、2回、3回、5回と安打は出るものの、鈴木の粘り強い投球に抑えられていた。こうして、豊川は6回の1失点のみに抑えて、序盤のリードをキープして逃げ切った。

この勢いで、県大会は準優勝まで上り、県2位校として東海地区大会に進出。東海地区大会でも勢いは衰えず、初戦の神村学園伊賀(三重)、準々決勝の岐阜第一(岐阜)にいずれもコールド勝ち。準決勝では三重県1位の宇治山田商に、9回逆転サヨナラ勝ちを収める。決勝では、県大会決勝で敗れている愛工大名電に対して、初回に強烈な先制攻撃を仕掛けて6点を奪い、一時は8対0とリード。終盤に追い上げられたが、8対7で何とか逃げ切った。秋季東海地区大会で初優勝を果たし、明治神宮大会出場を果たしている。その快進撃のきっかけとなったのが、県大会準々決勝の東邦戦だったとみている。

その伏線となったといってもいい試合があった。新チーム結成直後の公式戦で、県大会の出場決定戦となる東三河地区予選の2次トーナメント決勝。豊橋中央との試合では、初回に2点を失いながらも、その後は鈴木が粘りの投球を披露し、3対2で逆転勝ちした。県大会では豊橋中央も3位校となって東海大会進出。この秋は東三河勢が充実していたということも、その中で勝ち上がった豊川を後押しした。

〇秋季愛知県大会東三河予選2次トーナメント決勝(8月21日・豊橋)
豊橋中央200 000 000=2
豊  川012 000 00X=3

この試合での鈴木の先発に関して、長谷川監督は、「実は、一か八かの起用だったのですが、よく踏ん張ってくれた。チームとしては、まだまだ課題だらけですが、ここで結果を出せたことで、選手たちは自信にして貰って先へ進んでいけたらいい」という思いを語っていた。それが試合を重ねていくうちに、1つひとつの大会で結果に結び付けていき、その結果が明治神宮大会進出だった。

東三河地区予選決勝の豊橋中央戦と、県大会準々決勝の東邦戦は、まさにターニングポイントだったと言える。

この記事の執筆者: 鎌田 光津希

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