【東京都ベストゲーム2023】日大三、タイブレークで負けなかった伝統校の底力
<全国高校野球選手権西東京大会:日大三3-2駒大高(延長10回タイブレーク)>◇2023年7月23日◇準々決勝◇神宮
今年から、延長戦10回からタイブレーク制となった。全国的な傾向ではあるが、このタイブレークが波乱を巻き起こしていた。それは、全国高校野球選手権の東西東京大会も同じであったが、日大三は準々決勝の駒大高戦でタイブレークの熱戦を勝ち抜き、大会2連覇を達成した。
駒大高は秋も春も1次予選で敗れており、前評判はさほど高くなかった。しかし、川端教郎監督は、春の1次予選の代表決定戦で戦った共栄学園が強かっただけで、自分たちも力はあると信じていた。
駒大高はこの夏、4回戦で都立日野台をタイブレークで破り、5回戦ではセンバツ8強の東海大菅生もタイブレークで破って準々決勝に進出した。
対する日大三は初戦で国士舘を5回コールドの16対2で圧倒して、準々決勝まで順当に勝ち上がってきた。
試合は日大三・安田 虎汰郎投手(3年)、駒大高・長谷川 心風投手(3年)という両エースの投げ合いになった。両投手とも球速はそれほどでもないが、制球が良く、変化球を駆使して緩急自在の投球をした。
特に安田は今大会を通じて、ピンチに抜群の強さをみせた。この試合でも、4回に無死満塁のピンチを迎え、駒大高の5番・菊池 匠太外野手(3年)に3ボール1ストライクと、あわや押し出しの場面もあったが、右飛に打ち取ると、続く2人も外野フライで切り抜けた。
日大三は2回に、今大会5番に抜擢された佐々木 純太郎外野手(3年)の本塁打で先制したが、駒大高が6回に2番・山口 惟呼内野手(1年)、3番・廣瀬 天翔内野手(2年)の連続二塁打などで2点を入れて逆転する。
日大三は駒大高・長谷川の好投の前に、中盤以降はなかなかチャンスを作ることができなかった。それでも8回に1番・古賀 也真人内野手(3年)が三塁打を放ち、2番・池内 仁海外野手(3年)が中犠飛で還して同点に追いつき、試合はタイブレークにもつれ込んだ。
駒大高にしてみれば、3試合連続のタイブレークで、戦い方は心得ている。この夏、東京では、東海大菅生も二松学舎大附も関東一もタイブレークで敗れている。前年の優勝校で第1シードの日大三も、ひょっとすると、という雰囲気にもなっていた。
ただし、この試合では日大三が追いついてタイブレークに持ち込んでいたことに加え、「伝家の宝刀」チェンジアップがあるエースの安田は、ピンチに強いという利点があった。
無死一、二塁から始まるタイブレークで、延長10回表、駒大高はこの回先頭の9番・梶原 風谷外野手(3年)がしっかり送って1死二、三塁としたが、1番・関根 樹陽外野手(3年)が三振、2番・山口は左前に抜けそうな痛烈な打球を放ったが、日大三の守備の名手である遊撃手の森山 太陽内野手(3年)が好捕して無失点で切り抜けた。
その裏、日大三は1死満塁から4番・岡村 颯大内野手(3年)は一ゴロを放つ。一塁手の廣瀬の本塁への送球がワンバウンドになり、福本 拓生捕手(1年)が捕球できず、日大三がサヨナラ勝ちした。
「強打の三高」と言われるが、日大三は伝統校らしく、守備がしっかりしている。タイブレークになっても、落ち着いて守り切って勝利をものにした。
敗れた駒大高は、川端監督が「出来過ぎです」と言うように、悔しさの中にも、やり切ったという、どこか晴れ晴れとしたものを感じた。本塁に悪送球した廣瀬は2年生。捕球できなかった福本は1年生。この悔しさは来年以降に生かされるはずだ。この試合の物語は、まだ続いているのかもしれない。