【甲子園】3回戦 智辯学園 vs 花巻東
愛知招待試合で6失点KOの左投手が、3回戦直前にサイドに転向し、智辯学園に9回途中まで2失点の快投!
<第105回全国高校野球選手権記念大会:花巻東5ー2智辯学園>◇17日◇3回戦◇甲子園
智辯学園(奈良)vs花巻東(岩手)。この一戦は打撃戦になるという見方が多かった。しかし、ふたを開けてみると、花巻東の急造サイド左腕・葛西 陸投手(2年)が智辯学園打線を翻弄する形になった。先発して9回途中まで2失点。まさに大活躍だった。
佐々木 麟太郎内野手(3年)のラストイヤーを見ようと、この1年は花巻東をチームとしてみることが多かった。花巻東のチーム力を測る上で大きかったのは愛知招待試合での4試合。ここでは2勝2敗に終わったが、佐々木を中心とした攻撃力は強力だと思ったが、投手力、守備力は低い感じがした。
智辯学園相手に先発した葛西は、愛工大名電との試合に先発して、2回途中で6失点を喫している。その姿を見ていた人にとっては、智辯学園を抑えるイメージは沸かないだろう。実際に、全国レベルの打線を抑えるには力不足だった印象は否めない。
葛西は直前に腕を下げることに取り組んだ。「直前に言われましたが、とにかく信じよう」とフォーム変更を受け入れた。
120キロ台の速球と、スライダー、カーブを低めに集めた。速くない球がコーナーギリギリに決まるので、打者は球の反発力を使って飛ばすことができない。また、左打者からすれば背中越しから来る感覚で球が来るため、普通の左腕よりもアジャストすることはかなり難しい。
能力が高い智辯学園の各打者たちはそれでも捉えてはいたが、シングルヒットが精いっぱい。風が強かったこともあり、フェンスを越えることはなかった。
ヒットは打たれても、長打にさせなかった。花巻東の外野手は深めに守り、内野手は芝生付近まで下がって守るなど、徹底して相手打者を研究していていた。
智辯学園の安打は10本だが、長打は0。徹底したシフトが敷かれている中でも、連打が続いていれば、結果はもっと違ったかもしれないだろう。智辯学園・小坂監督は「相手の葛西投手に丁寧に投げられました」と語り、また、川原崎 太一外野手(3年)は「試合の中盤にフライが多かったので、それを意識しすぎるといけないので、打球の角度を下げる打ち方を意識しましたが、本当にコントロールよく投げられました」と振り返る。
智辯学園は、守備のミスや判断ミスからの失点もあり、後手後手の展開になった。
一方、花巻東はファインプレーも多くあり、葛西をもり立てることができた。花巻東は勝つべくして勝ち、智辯学園は試合運びからしても負けざるを得ない展開になった。花巻東は6月の招待試合で愛工大名電に6対25で大敗した当時のチームから大きく成長していた。
準々決勝では仙台育英(宮城)と対戦する。21年の秋季東北大会では仙台育英に勝利したが、当時も前評判では仙台育英が有利と言われていた。一戦ごとに成長している花巻東が仙台育英を破ってもおかしくはない。