ヤクルト山田のバットが日本シリーズの行方を握る
東京ヤクルトスワローズ・山田哲人(履正社出身)
日本シリーズはヤクルトが2勝1敗と勝ち越した。二転三転した試合は、サンタナの逆転2ランで決着がついた。しかし、試合内容としては、ほとんど差がないように思える。ほんの小さなことで、勝利の女神が微笑む。先が読みにくいシリーズのようだ。
3戦を終えて、どうしても気になることがある。それはヤクルト塩見と山田に本来の打撃が見られないことだ。
第1戦 塩見=三振、三安、遊ゴ、二邪、右飛
山田=一ゴ、三振、四球、左安、三振
第2戦 塩見=三振、右飛、三振、左安
山田=三振、二ゴ、三振、三振
第3戦 塩見=右飛、中飛、二ゴ、三振
山田=中飛、三直、遊ゴ、右飛
塩見は13打数2安打で打率.154、山田は12打数1安打で打率.083。二人とも明らかにシーズン中より調子を落としている。青木が毎試合安打を記録して打率.333と当たっているだけに、前を打つ塩見と後ろを打つ山田の出来がカギになってきそうだ。
特に山田は深刻に見える。第3戦の最後の打席は右翼への大飛球だった。本塁打を思わせる打球の角度だったが、フェンスまで届かなかった。がっかりする山田の表情がすべてを物語った。本人の感覚と打球がずれている証拠だろう。いわゆる「逆シリーズ男」にならないか心配になる。
逆にオリックス側からすれば、山田に目を覚まさせないようにすることが肝心だ。第3戦の5回裏、ヤクルトが一死一塁で山田を迎えたところで、オリックス中嶋監督は田嶋から比嘉にスイッチして、山田を遊ゴロに仕留めた。比嘉はワンポイントで、明らかに山田に仕事をさせないためだった。5月の交流戦3連戦も、山田は11打数2安打。ヒットも田嶋と増井から1本ずつ打っているだけだ。中嶋監督も「山田封じ」を意識しているに違いない。
オリックスの福田、吉田正の1、3番も打率からすればシーズン以下だが、勝負どころでは仕事をしている。吉田正はこの日マルチ安打をマークし、これから加速度を増して調子を上げていく予感がする。
ヤクルト山田が目覚めるのか、目覚めないままなのか。シリーズを左右する大きなポイントになるかもしれない。
(記事=浦田由紀夫)