人事異動でまったくわからないまま、再開を待つ都立小岩・茶川剛史監督
選手たちの指示を与える都立淵江・茶川剛史前監督(2018年秋季大会より)
公立校の場合、毎年の異動は定例行事となっている。本来ならば3月下旬に正式に通達があって、4月1日から正式異動として新しい学校での職務に就く。そして、すぐに新学期が始まり、部活動も同じようにスタートしていくことになる。
教員の異動に関しては、あくまでも原則は教科との兼ね合いということなっているのは当然だが、近年は東京都でも部活動の指導者という要素も見極めながらの異動人事も少なくない。つまり、ある程度の実績を挙げてきている部活動でその担当教員が異動となる場合には、それ相応の後任人事を配置していくということである。
近年躍進してきた都立小岩の場合も、前任の西悠介監督が都立雪谷に異動になったということで、その後任としては都立城東が2度目の甲子園出場を果たした際の主将だった茶川剛史監督が都立淵江から異動してきた。しかも、茶川監督と西前監督は、早稲田大時代の先輩と後輩という間柄でもある。だから、比較的スムーズにチームの意図を組んで取り組んでいきやすいのではないかと思われた。
ところが、今回のコロナ騒動で、そんな思惑どころではなくなってしまっている。茶川監督は、異動してすぐに、学年ごとに時間差で行われた始業式の日に、部員たちとは3年生だけ、2年生だけとは、それぞれ短時間ではあるが顔合わせはしている。
「なんだか不思議な感じでした」
とは、その時の正直な感想である。それでも、選手たちの思いは感じ取っていた。
「ほんのちょっとの時間でしたが、ミーティングをやった時に選手たちの目はキラキラしていたので、本当に西イズムが浸透しているというか、自立してきているのだなという感じがして頼もしかった」
というのも最初に選手たちの顔を見た印象だった。それだけに、「早く野球をやらせてあげたい」というのは正直な気持ちである。
「この(新型コロナウイルスの感染拡大で休校という)事実、現実は変えられないので、これをどう受け止めていくのかということは、自分にも言い聞かせています。彼(西前監督)とも話はしていますけれども、目指すところは同じだなということは感じています。そういう意味では、ブレずに今の選手たちとやっていかれるとは思う」
と、指導方針や、チームとしての目指すところの意識確認、チームの強みや弱点は確認は出来ているという。ただ、実際には活動出来ていないので、それを選手たちと確認出来ていないという現実はもどかしいというのは確かであろう。
「選手たちとは、まだほとんど面識がない状態ですから、メッセージを送るのも保護者の協力も必要だと思っています。だから、(保護者)会長から流してもらうということもありますが、こうなってしまっているという現実を何とかプラス方向に考えていかないといけないとは思っています」
4月からは1カ月、ほとんどグラウンドで集まれないという状況が続いた。そして、それが緊急事態宣言の延長でさらに1カ月期間が空いてしまったということになる。
「これだけ空いていると、(部長も異動しているので)却って新しい指導体制になったことに切り替えられるというところもあるのではないかと思っています。基本的には、西監督のやってきたことを継承していくことになるのでしょうけれども、(西前監督と)確認はし合っているので、何かわからないところがあれば伝えてくれと言うことは言っています」
選手たちにはLINEメールなどを通じて週1回くらいのアンケートも取っているという。そんなことをしながら少しずつではあるが、選手の名前は確認していっているという。
新入生に関しては、「何人入ってきてくれるのかもわからない」という状況だという。茶川監督としては、地元の江戸川区とはいえ異動してまだほとんど学校へ行っていないので、職場(学校)がどうなっているのかということもよくわからないというのも本音だ。
「選手たちは腐らずにレ―ニングをやれていると信じている。自分自身も想像はつかないけれども、(大会そのものが)どんな形になったとしても、今年の3年生は今後の中で歴史に残る代にはなると思う。その重みをどう感じていくのかということは、自分も含めてしっかりと意識していかないといけない」
そう、強い思いを語ってくれた。また、前任の淵江の選手たちに対しても気遣っていた。
「淵江の子たちに対して、しっかりと挨拶も出来ないままでした。気持ちを伝えきれずに、こんな形の異動になってしまったのは心残りです」
(取材=手束仁)
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