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元PL学園監督・中村順司氏による中学生指導者に向けた講習会が八王子市で開催

2018.09.24

 少年野球をがんばる家族を応援しようと、取り組みを進めているSSKでは、全国各地で少年野球教室を開催しています。この夏には、元PL学園監督で名古屋商科大学硬式野球部総監督の中村順司氏による中学生指導者に向けた講習会を東京都八王子市で開催しました。

高校野球界のレジェンド中村順司氏とは?

元PL学園監督・中村順司氏による中学生指導者に向けた講習会が八王子市で開催 | 高校野球ドットコム
多くの指導者を前に熱い講習を行った

 現在は名古屋商科大学硬式野球部の総監督を務める中村氏ですが、その名を轟かせたのは高校野球の世界が最初でした。1980年から大阪府のPL学園高で18年間にわたり監督を務め、プロ野球界にも多くの選手を送り込んだ名監督でありレジェンドなのです。

 中村氏は就任から1年も経たない1981年春の選抜において、当時無名だったPL学園高を優勝に導きます。甲子園で1回優勝するだけでも偉業ですが、中村氏の凄さはそれだけではありません。

 翌1982年の春の選抜でも優勝を成し遂げ、史上2校目の春連覇を達成するのです。1983年夏の選手権では「KKコンビ」と称された桑田真澄氏、清原和博氏を擁し3度目の優勝を果たします。ふたりの活躍とともにPL学園高、そして中村氏の名前が全国に知れ渡ったのです。

 その2年後、KKコンビのふたりにとって最後の大会となる1985年夏の選手権大会で優勝を果たすと、1987年には史上4校目となる春夏連覇を達成しました。

 1998年春の選抜で勇退するまでに、甲子園で積み上げた白星の数は58個。これは智弁学園高、智弁和歌山高で指揮を執ってきた高嶋仁氏の68勝に次ぐ歴代2位の記録となっています。春夏の甲子園優勝6度は、大阪桐蔭高・西谷浩一監督の7度に次ぐこれまた歴代2位の記録なのです。また勝率.853(58勝10敗)も西谷監督の勝率.859に次ぐ歴代2位(通算20勝以上)となっています。

 これだけの実績がある中村氏。すでにPL学園高の監督を勇退して20年経っていますが、多くの高校野球ファンにとって思い出に残る名監督のひとりと言っても過言ではありません。

キャッチボールは全ての基本

 八王子市立第五中学校で開催した中学校指導者講習会には、21校から40名が参加。まず図書室で基本講座を、グラウンドでキャッチボール、ノックなどの実技指導を行いました。その中で、「全ての基本はキャッチボールにあります。それは小学生でもプロ野球選手でも同じ。キャッチボールは心のキャッチボールです」と、まずはキャッチボールの重要性から語りかけました。

 「試合での動きを想定して、キャッチボールは捕って投げるとき、必ず足を動かして」、「投げるときは腕を振るのではなく、指のレールに沿わせて流す感じで」、「グラブは手を奥までしっかり入れて」、「相手を思いやって捕りやすいところに投げて、受ける方は頑張って捕ってあげる」、「捕球の基本姿勢は合掌」などと細かくアドバイス。

 その後、「自分の体のメカニズムを知ることで、正しく、ケガをしにくい動きができるようになります。ケガで野球を断念することが一番もったいない。キャッチボールをしっかり身につけることで、高校、大学、社会人と野球を続けていくことができます」と正しいキャッチボールをすることが、長く野球を楽しむことに繋がると持論を展開しました。

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根拠のある自信をつけさせる

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中村氏は自らグラブを手に取り指導を行った

 指導者向けの講習ということで、いかに選手を理解し、モチベーションをあげることができるか、という選手の内面についても話が及びました。「部活動で大切なこととして、声を出す、声を掛け合うことがあります。なぜ声を出すのか。それは、声を出すことで選手たちはリラックスすることができ、また声を発することで、自分自身が奮い立つことにもなります。その声出しの基本は、家での挨拶です」と説明。「朝起きて、『おはよう』と家で言っているかという、当たり前で見過ごされがちなことが、正しく心・技・体を育てることに繋がります」と説きました。

 「指導者としては、プレーだけでなく、選手の内面に注意することも求められます。選手の気持ちがのっていないときは、無理をさせないように。無理をさせるとケガに繋がります。時には叱ることも必要になりますが、叱る時は逃げ道をつくっておいたり、併せて良い点を褒めることも必要です」と、選手が追い込まれたと感じないようにケアをすることが、今の時代には求められていると話しました。

 「『ヒットを打ちたい』や『試合に出たい』、『勝ちたい』という気持ちで、練習を繰り返し、勝利する経験が、選手の成長に繋がります。そのため、選手には根拠のある自信をつけさせることが必要です。例えば、キャッチボールでも、試合に準じた動きを心がけることで、理に適った指導になったり、『これだけ練習したのだから大丈夫』だと、試合中に、練習してきたことを思い出させたりと、指導者には根拠のある指導を行うことが求められます」と、自らの経験をもとに、先生たちにリクエストしました。

中村氏の教えで育った選手は数知れず

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PL学園時代の立浪和義

 中村氏の教えを受け、プロ野球の世界で実績を残した選手は数知れません。桑田氏、清原氏をはじめとし、1987年春夏連覇の主力である立浪和義氏や、今シーズンからヤクルトで活躍する宮本慎也ヘッドコーチも中村氏の指導を受けてきました。

 さらには福留孝介選手(阪神)、松井稼頭央選手(西武)といった2018年シーズンも現役で活躍している元メジャーリーガーたちも中村氏の教え子なのです。

 PL学園高からプロ野球の世界に飛び込んだ一流選手達も、高校時代に「キャッチボールの重要性」、「根拠ない自信をつける」ことを教え込まれているはずです。その成果がプロの世界における、飛躍のきっかけのひとつになったのではないでしょうか。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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