試合レポート

大宮東vs川越工

2021.04.26

左腕大国・大宮東、この日は打線が川越工のサブマリン鈴木を攻略

大宮東vs川越工 | 高校野球ドットコム

 [stadium]上尾市民球場[/stadium]の第一試合は、Bシード・大宮東対サブマリン鈴木翔馬(3年)を擁する川越工との一戦となる。大宮東打線対サブマリン鈴木という構図となったが、この日は大宮東打線がサブマリン鈴木を見事に攻略して見せた。

 その前にまずはスタメン、大宮東は昨秋から大幅に変更している。秋に8番を打っていた宇田悠希(3年)を1番に上げ、2番には秋控えであった関佑汰(3年)が入る。3番には秋7番を打っていた小倉和也(3年)が入り1~3番に計算できる3年生が並び、4番以降の6人は全員2年生という若い布陣となった。一方の川越工業も昨秋4番を打っていた2年生長井翔が5番でスタメン復帰し、4番には同じく2年生の岩本颯太が入る。

 先発は川越工がアンダーハンドのエース鈴木、一方の大宮東は2年生左腕・吉田昴生(2年)が登板し試合が始まる。
 試合は序盤から落ち着かない展開となる。

 大宮東は初回、川越工・鈴木の立ち上がりを攻め、先頭の宇田がショートゴロエラーで出塁すると、続く関も四球を選び無死一、二塁とチャンスを広げる。3番・小倉がきっちりと送り一死二、三塁とすると、続く山岸大悟(2年)はセカンド正面へのゴロを放つ。これをセカンドが弾く間に(結果は強襲ヒット)三走・宇田だけでなく、二走・関も一気に本塁を奪う好走塁を見せ、大宮東が幸先良く2点を先制する。

 川越工もその裏、相手の内野守備の乱れに乗じチャンスを得る。先頭の小栗蓮樹(3年)はピッチャー前へゴロを放つがこれをピッチャーがファンブルする(結果は内野安打)。だが、小栗は牽制で刺されてしまう。続く小島叶大(2年)もサードゴロエラーで出塁するが後続が倒れ無得点に終わる。

 川越工の反撃は3回裏であった。二死から3番・新井優我(3年)がレフト線へ二塁打を放つと、続く岩本がセンター前タイムリーを放ちまず1点、5番・長井もライト越えのタイムリー二塁打を放つなどクリーンアップの3連打で2対2の同点に追いつく。

 追いついた川越工は4回裏にも、この回先頭山﨑創太(3年)はピッチャーへのゴロを放つが、ピッチャーの一塁悪送球で無死二塁とする。続く菅原大輝(3年)はバントの構え、その際二走・山﨑が大きく飛び出したことでキャッチャーが二塁へ送球するが、それを見て二走・山﨑は三塁へ進む。無死三塁から菅原のショートゴロの間に三走・山﨑が本塁へ生還し1点を勝ち越す。

 逆転を許した大宮東だが、河西監督は慌てていなかった。
 「あくまで前半はウェイティングで3回までに鈴木君に70球を投げさせることが目標であった」
 鈴木に対し3回で67球、4回で82球を投げさせたことで河西監督から打線にGOがかかる。

 大宮東は5回表、先頭の宇田がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く関もレフト前ヒットを放ち無死一、二塁とする。

 ここで大きなプレーが出る。
 無死一、二塁から3番・小倉がサード前へバントをすると、サードの送球が逸れる。無死満塁で4番・山岸という大宮東にとってビックチャンスが訪れる。山岸が押し出しの四球を選び同点とすると、続く高橋大地(2年)が左中間へ2点タイムリー二塁打を放つ。

 こうなると、大宮東打線は止まらない。6番・清水慶斗(2年)が左中間へ2点タイムリー三塁打を放つと、続く菊谷伶央(2年)も左中間へタイムリー二塁打を放ちあっという間に5点差とする。さらに、無死二塁から8番・今井琉稀(2年)がきっちりと送り一死三塁とすると、二死後1番・宇田が三塁前へセーフティーバントを決め9対3、続く関にも左中間へのタイムリー二塁打が生まれるなど、結局この回一挙8点を奪うビックイニングを作り10対3とし試合の大勢は決した。

 大宮東は6回表にも4番・山岸がライト越えのソロ本塁打を放ちダメを押すと、投げては吉田、髙橋亮匡(2年)、中尾翔優(3年)と3枚の左腕リレーで川越工打線の反撃をかわす。

 結局大宮東川越工に7回コールド11対3で勝利した。

 川越工はとにかく5回表無死満塁としてしまったプレーが大きかった。熊澤監督曰く、サードの長井は肩を痛めていて、この試合ぶっつけ本番のような形だったそうだ。それだけにあの場面は責められない。アンダースロー対策も含め熊澤監督は
 「相手が良く研究してきた。ただ、5回表無死満塁で高橋大への初球の入り方がね…」
 と完敗を認めつつ、バッテリーへの注文も忘れなかった。そこまで力の差は感じなかっただけに悔しい結果となった川越工。打線は悪くないだけに、夏へ向けまずは内野守備の整備と投手陣の底上げが必須であろう。他に左腕2枚いるそうだが、鈴木は夏も研究される可能性があるだけに彼をフォローできる投手の存在が必要だ。

 一方の大宮東だが、この日は3回70球を目標に初回からカウントで追い込まれたら徹底して反対方向へのカットなどで粘り球数を投げさせる待球作戦や要所で決めたセーフティーバントなどが実に効果的であった。序盤の攻撃が鈴木にボディーブローのように効いてきた所で集中打を浴びせた。だが、作戦面を差し引いても若い選手の多い今年大宮東打線は一度勢いに乗ると手が付けられない。投手陣もMAX130km前半ほどのストレートを投げ、微妙にタイプの違う左腕が2年生3人を含む4人おりスタミナ面で問題はない。あとはこの日やや乱れた守備面の成長次第では上位進出も伺える所であろう。

(取材=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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