試合レポート

智辯和歌山vs大阪偕星学園

2018.10.27

恐怖の9番綾原を生んだ確かな準備とケースバッティング

智辯和歌山vs大阪偕星学園 | 高校野球ドットコム
6打点の活躍を見せた綾原(智辯和歌山)

 今年も[team]智辯和歌山[/team]打線は強烈だ。対するは大阪3位の大阪偕星学園。試合を優位に進めていった。

 大阪偕星学園の先発は背番号1をつけた福田 慈己(2年)だった。145キロ右腕・坪井悠太(2年)は股関節の故障のため、登板回避。だが、福田もなかなかの好投手だった。177センチ73キロと均整がとれた体格をした福田は走者がいなくてもセットポジションから始動し、ゆったりと左足を上げていき、まっすぐ踏み出していきながら、内回りのテークバックから打者寄りのリリースで投げられる完成度の高い投球フォーム。常時135キロ~140キロの直球は回転数が高く、両サイドへ投げ分けができる精度の高さがある。智辯和歌山の打者陣は「うまく責められた」と振り返る。

 それでも1回表、智辯和歌山の1番細川 凌平(1年)、2番西川晋太郎(2年)の連打を浴び、さらにバッテリーミスから1点を先制する。

 だが1回裏、大阪偕星学園は敵失からチャンスを作り、一死二塁から3番松山 侑生(2年)が右前適時打を放ち、1点を先制。二死一、二塁から6番鏑木 隆馬(2年)の左前適時打で2点目を入れる。さらに3回裏にも一、三塁のチャンスから併殺で1点を入れて3対1とされる。

 福田は強打の智辯和歌山打線に対し、丁寧なピッチング。135キロ前後の直球は見せ球にして、110キロ後半~125キロのスライダー、110キロ台のカーブ、125キロ前後の縦系の変化球を低めに集め、安打を打たれながらも要所を締めるピッチング。5回表に犠飛で1点を失ったが、またも、6番鏑木の適時打で4対2とした。

 大阪偕星学園がリードで折り返した6回表、智辯和歌山の中谷仁監督は「甲子園に行きたいやろ」と檄。ここから強打の智辯和歌山が牙をむく。

 一死一、二塁のチャンスから9番[player]綾原 創太[/player](1年)。綾原は「初回にエラーしていて自分の持ち味である声もでていなかった。次につなぐつもりで打席に入った」と打席に入った綾原は高めに入ったストレートを振り抜き、レフトスタンド最前列に飛び込む3ランで逆転に成功。これが公式戦2本目、高校通算4本塁打目となった。

 綾原は第1打席でも低めの変化球を打っているように対応力が高く、本塁打のシーンを振り返っても腰を鋭く回転させて持って行った。170センチ69キロと体格は大きくないが、技術、パワーが優れた9番打者として見逃せない存在だ。

 さらに猛攻は続く。1番細川がスライダーを押し込んで右中間を破る二塁打を放ち、二死一、二塁となって、4番東妻純平(2年)が甘く入ったスライダーを逃さず弾丸ライナーでレフトフェンス直撃の適時二塁打。その後も佐藤樹(2年)の適時打で、8対4と大きく点差を広げる。

 これで勢いに乗った智辯和歌山。7回裏に1点を失うが、8回表、智辯和歌山はスクイズでまず1点を追加すると、二死満塁から再び9番綾原。綾原は左中間を破る走者一掃の二塁打で12対5と7点差とした。9番打者ながら、3安打6打点の大活躍。主将の黒川史陽も「普段長打を打たないんですけど、あんなに長打が出てびっくりしています。今日のラッキーボーイですね」と1年生の活躍をたたえた。

 また活躍できているのは偶然ではなく、普段の練習の積み重ねが結実した。中谷監督は今年の打線について、6番、9番に走者がたまるので、6番、9番の活躍がキーマンになると語っている。そのために綾原は普段のケースバッティングから走者がたまった状況で打つことが多い。だから綾原はチャンスの場面でも心づもりができていた。

「練習からいつもああいう場面で打っていたので気持ちの準備はできていました」
実戦を想定した練習の積み重ねがラッキーボーイを生んだのだ。その後、3投手の継投リレーで、8回コールド勝ちを収めた智辯和歌山。序盤リードされていても、後半からの反撃は素晴らしく、18安打12得点。左打者は逆方向に鋭い打球が飛び、9番綾原は6打点と、高校通算11本塁打の黒川、17本塁打の東妻が3番、4番に控えていて、打線に隙がない。

 次の準々決勝・大阪桐蔭戦は正念場だ。

「一番大事な試合です。絶対に勝ち取りたい」と意気込むエース・池田。今年3回目の直接対決を制することができるか。

(文・写真=河嶋宗一
(フォトギャラリー=中谷 明

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.28

春の福岡地区を制した沖学園(福岡)、勝利のカギは異例の「決勝直前沖縄合宿」だった

2024.05.28

【大分】佐伯鶴城は4戦3勝、杵築は4戦で1勝<強化試合>

2024.05.28

【鹿児島NHK選抜大会】錦江湾が1点差勝利!出水工の追い上げ、あと1点及ばず

2024.05.28

【鹿児島NHK選抜大会】川内商工が2試合連続逆転サヨナラ勝ち!雨のため2試合が継続試合

2024.05.28

交流戦開幕、初戦の注目は髙橋宏斗vs.今井達也の初対決!

2024.05.25

【熊本】九州学院、熊本工が決勝へ<NHK旗>

2024.05.25

【関東】白鷗大足利が初、逆転サヨナラの常総学院は15年ぶり決勝<春季地区大会>

2024.05.25

首都2部優勝の武蔵大の新入生に浦和学院の大型左腕、左の強打者、昌平の主軸打者など埼玉の強豪校の逸材が入部!

2024.05.25

【岩手】盛岡大附がサヨナラ、花巻東がコールドで決勝進出、東北大会出場へ<春季大会>

2024.05.25

【佐賀】佐賀北が初戦突破!九州地区大会4強の唐津商は1回戦で姿消す<NHK杯>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【岩手】盛岡中央、釜石、水沢が初戦を突破<春季地区予選>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商