済美vs松山工
夏甲子園ベスト4の済美、松山工に冷や汗も逆転勝ち!
5打席連続6打数5安打の朝比奈 幸司(松山工)(2年)
夏の甲子園100回大会では2回戦で星稜(石川)に対し、タイブレーク延長13回逆転満塁サヨナラホームランで勝利すると、その後も高知商(高知)、小園 海斗(3年・遊撃手・侍ジャパンU-18代表)率いる報徳学園(東兵庫)を撃破しベスト4入り。さらに準決勝でも中盤まで春夏連覇を果たした大阪桐蔭(北大阪)に互角以上の好勝負を演じた済美。そんな彼らにとって春夏連続甲子園出場のスタートラインとなる中予地区予選1回戦は、甲子園経験者の越智 伊吹(1年・三塁手・右投右打・177センチ89キロ・西条ボーイズ出身)らがケガでスタメン落ちする中、実に苦しい闘いを強いられることになった。
もちろん、済美がそんな状況に至ったのは松山工が序盤から常に圧力をかけ続けたからである。初回に二死二塁から4番・中村 左京(2年・168センチ72キロ・右投右打・松山市立久米中出身)の遊撃手グラブをはじく適時打で先制した彼らは、済美が3回裏一死一・三塁から4番・松岡 玲旺(1年・右翼手・177センチ70キロ・左投左打・松山リトルシニア出身)の右前適時打、5番・松永 駿太朗(1年・一塁手・175センチ80キロ・右投左打・松山市立久米中出身)の左犠飛で逆転しても決して怯まなかった。
特に圧巻だったのは4回表である。4連続四球で同点とすると1番・朝比奈 幸司(2年・遊撃手・166センチ57キロ・右投左打・東温市立重信中出身)の中前打で勝ち越し。さらに3番・向井 春喜(2年・二塁手・166センチ59キロ・右投左打・愛媛ボーイズ出身)の適時打と5番・佐々木 智哉(2年・中堅手・156センチ65キロ・右投右打・愛媛ボーイズ出身)の2点左前打で計5得点。そのどれもが済美投手陣の失投を的確にとらえたもの。その後も松山工は卓越したバットコントロールで6打数5安打と将来性の高さを示した朝比奈をはじめ12安打で7得点。打者ごとに守備位置を変え、配球を連動させる守備も奏功し、8回表を終えて8対5と勝利をつかもうとしていた。
しかし済美は「あの」星稜戦と同じく8回裏、猛反撃に転じる。先頭打者9番の代打・森脇 悠吏(2年・外野手・175センチ66キロ・左投左打・南あわじ市・洲本市組合立広田中<兵庫>出身)の左前打を契機に、無死一・二塁から2番・西坂 柊人(1年・二塁手・167センチ57キロ・右投左打・久留米東ボーイズ<福岡>出身)の右中間2点二塁打を放つと、新キャプテンとなった3番・芦谷 泰雅(2年・捕手・170センチ75キロ・右投右打・伊予三島リトルシニア出身)が甲子園を彷彿とさせる左前適時打で同点。締めは一死三塁から5番・松永の左越二塁打で勝ち越して5点返し。済美が10対8で乱戦を制した。
「投手は経験の少ない1年生がほとんどだし、けが人も多い。実は最後には芦谷をマウンドにあげることも考えていたんです」。試合後に中矢 太監督は悩みの一端を明かしたが、それでも最終的に勝ちに結びつけたことは済美にとって大きな収穫。「苦戦」を糧にするのが済美の伝統なだけに続く代表決定戦で北条をコールドで下した彼らが10月6日開幕の県大会までにどのようにチームを整えてくるのかを楽しみにしたい。
(レポート=寺下 友徳)