試合レポート

川口vs埼玉平成

2018.07.15

得意の集中打を発揮した川口がコールドで4回戦へ

 
 

 

 既に勢いに乗っているチームとそうでないチーム、高校生の対決で勢いというものが必要不可欠であることを改めて感じさせるそんな試合となった。

 

 初戦でCシード山村国際を破り、勢いに乗る埼玉川口対埼玉平成との一戦、埼玉川口は2年生エース・岩城竣介の先発を含め前の試合と全く同じスタメンで臨んだのに対し、埼玉平成は初戦4失策と守備が乱れ苦戦したことを受け、前の試合からキャッチャーとセカンドを代える。さらに先発もエース横溝航輝(3年)ではなく2年生、背番号18の小山直也が登板し試合が始まる。

 

 埼玉川口の岩城は右スリークウォーターから放る直球は120km台だが、制球が良く変化球を中心に組み立てる技巧派投手、一方の小山はMAXで130km前半ほどだが、183cmの長身を生かした角度のある直球と変化球を交えるオーソドックスな投手だ。両投手共に2年生ながら落ち着いた立ち上がりを見せ静かな立ち上がりとなった。

 

 最初にチャンスを掴んだのは埼玉平成であった。3回裏一死から9番・田島勇翔(3年)がショートゴロエラーで出塁すると、二死後2番・杉村辰之介(3年)が左中間へ二塁打を放つ。だが、左中間を破ったわけではなくセンターが回り込んだ打球に対し、タイミングは微妙であったが三塁コーチャーは一走・田島を一気に本塁へ突入させる。これがアウトとなり先制機を逃す。この場面次打者が3番・荒川篤哉(3年)であっただけにややもったいない判断ではあったが、それは結果論か。

 

 それでも先制したのは埼玉平成であった。4回裏、打順が二巡目を迎え埼玉川口・岩城を捉え始める。この回先頭の荒川が三塁線を破る二塁打を放ち出塁すると、一死後、5番・比留間貫太郎(3年)がセンター前タイムリーを放ち1点を先制する。だが、続く古谷野(2年)の犠打が併殺となり1点でこの回の攻撃を終了する。

 

 一方、埼玉川口の反撃は5回表であった。この回先頭の佐藤隼(3年)がショートへの内野安打で出塁すると、一死後7番・北原開(2年)がきっちりと送り二死二塁とすると、ここから埼玉平成バッテリーが急にバタつき始める。まずキャッチャーが誰もカバーに入っていない二塁へ牽制球を放り二死三塁とすると、続く大島康生(3年)にセンター前タイムリーを浴びまず1対1の同点とされる。一走・大島にすかさず二盗を決められ二死二塁と再度スコアリングポジションへ走者を進められると、ここで9番・岩城にライト越えのタイムリー三塁打を浴び1点を勝ち越される。続く相馬俊輔(3年)の所でキャッチャーがパスボールをしてしまいさらに1点を失うなど、この回結局埼玉川口に3点が入る。埼玉平成ベンチはすぐさまバッテリーを代えるが、一度失った流れはなかなか取り戻せない。


 

 その裏の埼玉平成はこの回先頭の目戸康太郎(3年)がレフトフェンス直撃の二塁打を放ち出塁すると、続く小山が送り(次の回頭からピッチャーを代えるなら、この回小山を打席に立たせたのは疑問だが)一死三塁とするが後続が倒れ無得点に終わる。

 

 一方、逆転し勢いに乗る埼玉川口は、6回表もこの回からマウンドに上がった二番手・須田(2年)を攻める。二死から佐藤がセカンドゴロエラーで出塁すると、佐藤はすぐさま二盗を決め二死二塁とする。ここで高橋賢人(2年)がセンター前タイムリーを放ち4対1、さらに7回表には、一死から1番・相馬がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く池田桜太(3年)の犠打に対しセカンドの一塁ベースカバーが遅れ一死一、二塁となる。3番・安西友紀(3年)が四球を選び一死満塁とチャンスを広げると、続く豊田将生(3年)が左中間を破る走者一掃の二塁打を放ち7対1とし試合の大勢を決める。攻撃の手を緩めない埼玉川口は、5番・佐藤がライト前ヒットを放ち一死一、三塁とすると、続く髙橋が犠飛を放ち7点差をつけ勝負あった。

 

 投げては中盤こそ捕まりかけたが、その後見事に立ち直った岩城が1失点で踏ん張った。結局埼玉川口が、埼玉平成を7回コールドで退け4回戦へ駒を進めた。

 

 まず埼玉川口だが、前の試合山村国際戦で終盤猛追を受けた反省を生かし、この試合より丁寧に投げた岩城が成長の跡を見せたのは大きい。また、打線はこの日も活発で得意の集中打でビックイニングを作ることができる。要所で足を絡められるのも大きい。だが、次の試合は中一日で打線が強力な大宮東戦である。岩城一人では心許ない。他の投手の手助けが必要になるであろう。

 

 一方の埼玉平成は中盤岩城を捉えかかっていただけに悔やまれる敗戦であろう。コールドで敗れたが、両チームにそこまでの差を感じなかった。それだけにもう少しうまい試合運びをして欲しかった。この日スタメンに抜擢された古谷野、田島が共に勝敗に関わるミスをしてしまったのも大きかった。エース横溝に頼り切れなかったのも大きい。この日先発した小山は途中まで好投していたが、失点した回は若さが出た。新チームでは今日の小山、古谷野の2年生バッテリーが軸となるが、この日の敗戦を糧に新チームを引っ張ってもらいたい。

 
 

(文=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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