試合レポート

国分vs千葉学芸

2014.07.20

国分が千葉学芸から逆転サヨナラ!42年ぶりのベスト16!

 千葉の怖さは、春までそれほど実績がなかったチームが、夏に突如として手強いチームに生まれ変わる事である。この試合はそれを実感する試合となった。
Cシードの千葉学芸とノーシードの千葉国分の対戦。千葉国分は市川市内にある県立校である。

 試合は1点を争う好勝負となった。
千葉学芸の先発・前田 大河(1年)は120キロ中盤の球速で、スライダーをテンポ良く投げ分ける投球で千葉国分打線を抑える。まだ120キロ中盤の右投手だが、身体も大きく、威力がある。さらに体が出来ていけば、130キロ台も見込める投手だろう。

 一方、千葉国分の先発・山本 裕介(2年)はキレ味鋭いスライダーを武器にする右のサイドハンド。スライダーを自信に持っているのか、使い方が多彩だった。

 スライダーは右打者の外角ストライクゾーンからボールゾーンに使うのが一般的だが、山本は右打者の内角ボールゾーンからストライクゾーンに入る攻めをしていた。この使い方は「フロントドア」と呼ばれ、絶対的なコントロールと手元で変化する精度の高さがなければ投げられない。この「フロントドア」を山本は高校2年生にして実践しているのだ。

 また左打者に対しても、外角ボールゾーンからストライクゾーンに入る「バックドア」を使ったり、また内角の膝元に鋭く切れ込むスライダーを使うのだから、スライダーをどう変化すれば、どこに投げれば打たせて取る事が出来るのかを会得している。そして相手がスライダーを意識しているところで、今度は常時130キロ前後の直球を投げ込む。直球とスライダーの使い分けが上手い投手だった。

 6回まで0対0が続き、試合が動いたのは7回表。
千葉学芸は山本を捉え、2つの四球、1番遠藤 佑太(3年)の内野安打で二死満塁のチャンスを作り、ここで2番杉山 亮太(2年)が高めに入った直球を逃さず、中前安打に。二者生還し、2対0と先制する。山本の変化球に手を焼いていたが、ようやく掴んだ先制点。

 このまま守り切りたかったが、その裏、千葉国分が反撃。
6回からマウンドに登った千葉学芸の2番手・高梨 涼(2年)から6番五十嵐 佑大(3年)が四球で出塁し、7番山本の犠打安打で、無死一、二塁のチャンスを作ると、8番石本 清(3年)の犠打で一死二、三塁とすると、9番多胡 翔(2年)の場面で、スクイズを試みたが、サインミスだったのか、多胡はスイングで空振り。三塁走者の五十嵐はアウトとなり、二死二塁。痛いミスである。だが多胡は高めに入った直球を逃さず、左中間を破る二塁打となり、1点を返し、2対1とする。


 2対1の1点差。千葉国分の山本は8、9回を無得点に抑え、味方の反撃を待つ。そして9回裏。第1試合同様、9回裏に試合が動いた。

 一死から7番山本が痛烈な中前安打を放ち、同点の走者が出塁。8番石本の死球、9番多胡がセーフティバントを試みる。打球は三塁線ギリギリに転がり、オールセーフで一死満塁のチャンスを作る。

 1番吉田 行汰(2年)。カウントはフルカウントとなった。
千葉学芸はなんとしてでも、抑えたいところ。吉田は焦りが見える千葉学芸バッテリーの隙をついてあるフェイクを試みる。なんとスクイズの構えを取ったのだ。これを見た高梨はウエストをした。吉田は手を出さずにバットを引く。ボールとなり、押し出し四球で2対2の同点に追いつく。

 同点となり、裏攻めとなれば、精神的に有利である。2番松田 祥太朗(3年)が直球を振り抜いた打球は、右前安打となり、3対2で千葉国分が逆転サヨナラ勝ちを決めて、1972年以来の5回戦進出を決めた。

 千葉国分は先制を許しても山本が動じずに目の前の打者を1人1人抑えることに集中していた。
そして9回裏の攻撃では、焦る千葉学芸バッテリーを追い込む攻撃を行い、逆転サヨナラを決めた攻撃は試合巧者と呼べる内容だった。

 今年の千葉国分は昨秋県大会出場がなく、また春季県大会東葛飾に0対11でコールド負けと戦績を見る限り、上位進出は予想できないチームである。だが春以降、進化を遂げ、粘り強く勝ち進み、シード校を破ってのベスト16。千葉は夏に千葉国分のようなチームが毎年現れるのだから怖い。

 快進撃を続ける千葉国分の次の相手は千葉経大附。この試合ではどんな戦いが繰り広げられるのだろうか。今から待ち遠しい。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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