試合レポート

済美vs川之江

2013.07.26

済美、終盤の逆転で「157キロ」安樂智大と共に決勝へ!!

 
川之江の「打倒・済美、打倒・安樂智大」への執念が結実した。2回裏一死から雷雨のため68分間中断した間隙を突き、二死二塁から7番・髙原丈一塁手(3年)の中前打で先制すると、続く3回には先頭で一・二塁間を破った8番・毛利周一郎三塁手(3年)を犠打で送った一死二塁から1番・久保克斗遊撃手(3年)の遊ゴロが失策を誘い2点を先制。

投げては先発・大西純平(3年)が自己最速143キロのストレートとフォークで2回3分の2を1安打0点に抑えると、2番手の土肥康佑(3年)も最速141キロのストレートとスプリットを駆使し、7回まで済美打線を無安打に封じた。

が、終盤に強い済美は8回表に1番・山下拓眞右翼手が大会19号となるソロアーチをレフトスタンドにかけると、最終回一死一・三塁から9番・金子昴平捕手(3年)が起死回生の右前同点適時打。なおも一死満塁で川之江3番手のアンダーハンド・仙波和将(3年)から2番・林幹也遊撃手(3年)の右犠飛で鮮やかに逆転し、春夏連続甲子園出場へ「マジック1」と迫る3年ぶり7度目の愛媛大会決勝戦進出を果たした。

なお、安樂は6回裏二死から4番・大西達己捕手(3年)を三球三振で討ち取った際、これまでの自己最速154キロを一気に3キロ更新し、場内を騒然とさせる自己最速「157キロ」をマーク。打席では5打席4四球(うち3つは敬遠)1三振と、ありとあらゆる手を使って勝利に向け傾注した川之江へのストレスを常時150キロ台9奪三振で晴らした。

エキサイティングプレーヤー 安樂智大投手(済美2年)

 64分間の雷雨中断が愛媛大会史上に残る名勝負の序章となった。再開直後、バスター、投手前送りバント、遊撃ゴロでの二塁走者の三塁スタートなど、友近拓也監督と選手たちが精魂を一致させた闘いで2点をもぎ取り、3投手が下馬評に違わない好投を演じた川之江。耐えて最後に突き話した済美と上甲正則監督の「凄み」。高校野球の魅力が一杯に詰まった3時間19分。ただし、終わってみればやはり試合の中心にいたのは済美の2年生エースである。

 4回裏まではややスピードを抑え気味とし、制球力を重視した投球を心がけていた安樂智大。だが、6回裏二死無走者で4番・大西達己捕手(3年)を迎えた瞬間、右腕は一気にギアを上げる。

 初球は「153キロ」、2球目は高速スライダー「131キロ」。あまりのボールの切れ味に全く手を出せなかった大西達の気持ちを落ち着けるべく、攻撃タイムで時間を作る川之江ベンチ。が、次のボールはこれまで見たことのないスピードでうなりを上げ、外角低めに差し出す金子昴平(3年)のキャッチャーミットに突き刺さった。

「157キロ」

 スコアボードに灯った球速表示に、一瞬の沈黙後、悲鳴にも似た大歓声が巻き起こった。藤浪晋太郎大阪桐蔭→阪神)の最速155キロを超え、昨年・岩手大会準決勝で大谷翔平花巻東高→北海道日本ハム)がマークした高校生最速160キロにあと3キロと迫る夢の数字をわずか16歳264日の少年が打ち立てた瞬間だった。

 さらに驚かされたのはこの後だ。例えば味方が追撃体制に入った直後の8回裏。9球中154キロが1回、153キロが2回、151キロが1回。いわゆる「常時150キロ台」である。済美逆転勝ちの功労者は9回先頭打者で初球をバント安打とした代打・上田恭裕(3年)他、数多く存在するが、そこに導く流れを作ったのは、間違いなく彼の功績である。

(文=寺下友徳)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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