試合レポート

大阪桐蔭vs箕面学園

2013.07.21

王者への挑戦

 連覇を狙う大阪桐蔭、試合前ノックのボール回しでは捕球音がスタンドまで届くほど。特にプロ注目捕手・森 友哉の影に隠れてはいるが、控え捕手の強肩ぶりには目を見張るものがあった。控えの層も厚くボールボーイは常に全力ダッシュ、全国に名を轟かす強豪との一戦に臨む箕面学園、試合は1番・猪野の鮮やかな一打で幕を開けた。

猪野は1ボールから狙い澄ましたように大阪桐蔭先発・葛川 知哉のストレートを捉える。快音を残した打球はレフト前ヒットとなるが後が続かない。福山、江川が連続三振に倒れると4番・西村はファーストゴロで無得点に終わる。

その裏、箕面学園先発・三和田が立ち上がりの制球に苦しむ。1番・峯本にデッドボールを与えると2番・高木はフォアボール。無死一、二塁で超高校級の中軸を迎えてしまう。先制点覚悟の場面だったが、抜群のミート力を誇る3番・森友をショートゴロに打ち取り一死一、三塁。抜群の飛距離を誇る4番・近田 拓矢もショートゴロのゲッツーに打ち取り無失点でピンチ脱出。箕面学園スタンドはまるで得点したかのような盛り上がりを見せていた。

 先手を取りたい箕面学園だが、大阪桐蔭・葛川がピッチングの幅の広さを見せつける。サイドから繰り出す外の変化球、外のストレートと決め球を変えながら1球も遊ばず、難なく3球勝負で打ち取られる。2回ですでに4三振、しかも投げさせた球数はわずか16球だった。

対照的に三和田は2回、依然制球に苦しむ。先頭の5番・福森はファーストゴロに打ち取ったが6番・笠松 悠哉にセンターオーバーのツーベースヒットを浴びると、そこからストライクが入らない。7番・田村 斗紀に3ボールからデッドボールを与えると、水谷 友生也、葛川もストレートのフォアボールで押し出しとなり先制点を献上。トップに返って峯本も4球で歩き2点目を奪われる。大量失点は避けたい箕面学園は背番号1の松田がライトのポジションからマウンドへ上がる。一死満塁から高木を1球でショートゴロのゲッツーで、初回と同じ形でピンチを切り抜けた。


 3回表、箕面学園の攻撃は宮滝、山本が連続三振に倒れるが第1打席でヒットを放った猪野が再びバットで魅せる。2ボール2ストライクから際どい球を見極めると、厳しいコースに決まったストレートはファールで逃げる。9球目を振りぬくと今度はライト前へのヒットとなる。打線全体が手も足も出ない中、1人だけ2打数2安打。11球で空振りは1つも無かった。ランナーとしても優秀で、大きくベースから離れるが逆をつかれない限り絶対に刺されないリード幅でプレッシャーをかける。猪野をホームに返したい箕面学園だが続く福山が三振に倒れ、この回3つのアウトを全て三振で奪われてしまう。

3回裏、一死二塁のピンチでショート・福山は、福森の放った三遊間寄りの打球を処理すると素早いステップで一塁へ送球。猪野が攻撃なら自分は守備でと言わんばかりの好プレーでチームを盛り立てた。3、4回を無失点に抑え、追加点を許さない箕面学園だが、大阪桐蔭・葛川を攻略できず5回表終了時点で早くも11の三振を喫していた。

 地力で勝り、試合内容も押し気味に進めている。それなのに点数が入らない。大阪桐蔭にとって楽観視出来ない展開の中、待望の追加点は5回だった。無死二、三塁から森友の犠牲フライと一死満塁から笠松のゲッツー崩れの間にそれぞれ1点を加えた。大きな大きな2点を加えた4得点は、葛川の状態を考えればセーフティリードとして十分に思えた。


 後半も順調に三振を重ねるピッチングが続いたが、ナイター点灯となった8回表、箕面学園のキーマン・猪野との4度目の対戦から風向きが変わる。
一死から猪野に3本目のヒットとなるライト前ヒットを打たれると、福山を追い込みながらデッドボールで歩かせてしまい一、二塁のピンチでクリーンアップを迎える。箕面学園にとってはこの試合最大にして、恐らくは最後のチャンス。3番・江川のバットに期待がかかったが見逃し三振に倒れてしまう。二死となって打席には4番・西村。大阪桐蔭は1ボール2ストライクから一塁ランナー・福山に対してピックオフを仕掛けるが福山は落ち着いて帰塁を果たす。2ボール2ストライクからの5球目、二塁ランナー・猪野は完全にモーションを盗みスタートを切ると、西村はライト前にヒットを放ち、猪野をホームに迎え入れた。

1点返して尚一、二塁のチャンス。箕面学園スタンドでは得点した喜びが収まりきらない中、5番・辻野もセンター前ヒットを放つ。アウトカウントは二死、二塁ランナーは足のある福山、葛川から連打はそうそう期待できないとなれば三塁コーチの選択肢は回すしか無かった。送球がわずかにでも逸れたらホームインという状況で大阪桐蔭のセンター・高木はこれ以上ないドンピシャの送球をワンバウンドでホームに送る。送球を受けたキャッチャー・森友がランナーを待ち構える余裕すらあったほど。高木のビッグプレーで窮地を脱出したが、8回裏の攻撃を3人で終えると9回に先頭バッターに不運なヒットを打たれ箕面学園の応援スタンドは再び活気付く。それでも葛川が後続を抑え逃げ切りに成功。連覇へ向けて苦しみながらも4回戦進出を決めた。

一方、敗れた箕面学園は16三振を喫したが大阪桐蔭を上回る8安打を放ち、8、9回の勢いでは確実に王者を飲み込んでいた。5回の2点さえ無ければ大金星の可能性もあったと思わせる健闘ぶりは、陽の傾いた[stadium]舞洲球場[/stadium]に響く拍手が証明していた。

(文:小中翔太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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