鹿児島城西vs薩摩中央
砂埃舞い上がるグランド
「勝負強さが出た」鹿城西「うちの試合じゃない」薩摩中央
今大会苦しみながらも勝ち上がってきた第1シード鹿児島城西。ノーシードながら昨夏の快進撃を再現するかのような勝ち上がりで4強入りした薩摩中央。好対照な両チームの一戦は、この日球場に吹き荒れた「春の嵐」のように、二転三転目まぐるしく流れが変わる消耗戦だった。
絶好のお花見日和の晴天が広がったが、風が選手と観客を悩ませた。バックスクリーンの風速計は常時10-20㍍を表示。特に一塁側から三塁側の応援席めがけて何度も砂煙が舞い上がり、そのたびに試合が中断する。身をかがめて砂煙に耐えている薩摩中央の応援席の姿が痛々しかった。五回のグラウンド整備で時間を取って水巻したのは高野連のささやかなファインプレーだった。この風は、投手や野手にとって相手以上に「難敵」だったことだろう。投手にとっては、リズムが悪いし肩も冷える。野手も、特に外野陣は風向きや風力が目まぐるしく変わるから、思った以上に伸びたり、逆に失速したり、いつも以上に打球に対する判断力が問われる一戦だった。
鹿児島城西は投手陣の不調を打撃でカバーした。3番・中島玲弥が5打数3安打3打点、4番・新屋拓真が4打数2安打3打点、5番・恵大樹が4打数2安打2打点と中軸トリオが期待通りの働きをみせた。「打つ」だけではない。1回裏は、1番・田畑勇武が三塁打を放ち、2番・宅万公平のセーフティースクイズが反撃の口火になった。三塁手が前進して捕球したのに合わせてリードを取り、送球と同時にスタートを切ってホームインした田畑の好走塁が光った。「あれが決まると最高ですね」と田畑。吉田健監督は「中軸が打つだけでなく、1、2番の機動力を絡めた攻撃ができた。きょうも厳しい試合だったけど、子供たちの勝負強さが出た」と評価する。
薩摩中央4点目ホームイン
シード校を相手に最後まで打ち合った薩摩中央だったが、神村泰幸監督は「しっかり守れなかったのは反省。うちらしい試合ができなかった」と悔しがる。
鹿城西の投手陣から14安打放ったことはともかく、守備で踏ん張れなかったことを神村監督は大きな反省点に挙げていた。エース岩﨑佳祐は直球の制球が定まらず、カウントを取りにいった甘い球をことごとく狙い撃ちされた。守備は無失策だったが、外野陣が打球の判断を誤って頭を超えられたり、あと一歩踏み込めず落球したり、記録に出ないミスが出た。「雨や、風があるのは当たり前のこと。あらゆることを想定して日頃練習し、言い訳をしないチーム作りをしてきた。打ち合いになったら私学にはかなわない。まずはしっかり守れるチームを作りたい」と指揮官は引き締める。
8回裏、集中の糸が切れたように打ち込まれ、あわやコールドかと思われた一死一二塁の場面。一ゴロ、二塁をフォースアウトにして一塁送球は無理と判断するや、遊撃手・萩木場拓未はすぐさま三塁に投げてオーバーランタッチアウトで併殺を成立させた。この日「唯一」(神村監督)、薩摩中央らしさを出した好プレーだった。
(文=政純一郎)