試合レポート

唐津商vs古川工

2011.08.09

出し惜しみはしない

 大会3日目の第2試合。
九州の剛腕が甲子園に登場した。
唐津商業の北方悠誠
最速149キロの速球に、縦横の鋭いスライダーを武器に奪三振を重ねる本格派である。佐賀大会の北方悠はまさに鉄腕と呼べる活躍であった。佐賀西戦で15回を最後まで投げ抜き、翌日の再試合で完投。その後も一人で投げ抜き、27年ぶりの出場の原動力となった。大会屈指の剛腕と評される彼がどんな投球をするか待ち望んだ人も少なくないだろう。彼は出し惜しみすることなく、自分の能力を発揮した。

 
1回表、唐津商業は、7点を入れた。味方の大量リードに見守られてのぼった甲子園初マウンド。
 最初は、硬さを取るために思い切り投げた第一球はいきなり152キロを計測した。
 このスピードにスタンド中が騒然となった。しかし、コントロールが定まらず四球を出してしまう。140キロ台後半を連発していてもとにかくボールが抜ける、抜ける。
 まさに荒削りな剛腕だ。4番今野を空振り三振に奪ったところから少しずつ持ち直していく。

 
 2回裏は圧巻の投球。5番佐藤は133キロのスライダーで空振り三振。6番高橋は152キロのストレートで空振り三振。7番山田も133キロのスライダーで、またも空振り三振。
さらに3回裏、8番江本を縦のスライダーで空振り三振。9番千葉は149キロのストレートで、6者連続の空振り三振を奪った。北方悠は、まさにマウンド上で躍動していた。



 北方は最速152キロを計測したストレートに注目される。確かに常時140キロ台後半を計測する馬力の大きさは素晴らしく、並みの高校生にはない才能を持っている。
 だが彼の変化球の切れも見逃してはならない。120キロ台の大きく曲がるスライダー、140キロを超えるカットボール、縦のスライダーは既に高校生の範疇を超えている変化球だ。
 特にスライダーは右打者の内角にも投げられることができ、コントロールはさほど良くないが、それでも150キロ台の速球を投じることを考えれば、実に恐怖感を感じる投手ではないだろうか。

 北方悠は出し惜しみすることなく、すべての球種で勝負していった。
 馬力の大きさで勝負していった北方悠も終盤になってストレートがシュート回転し、痛打されることも多くなってきた。結果としては4失点。不運な当たりで点を取られることもあったが、150キロ以上超えるストレートと、抜群の変化球の切れを持っていたとしても、完ぺきに抑えられるわけではないことを実感した内容ではないだろうか。
 すべての球種を使うことは悪くない。他の好投手と比べると器用さはないし、荒削りな投球だ。その中でも出し惜しみすることなく勝負して投げることができるのは、今後の成長のためにとっては良いことであると思う。

 今まで県内で一番速いストレートを投げる剛腕でありながらも甲子園に届かなかった北方悠。まだ課題は残されているものの、全国の舞台で投げ続けている喜びのほうが大きいだろう。レベルの高い舞台で自分の良さを存分にアピールし、そして課題を痛感すればいい。
 次は破壊力のある打線が看板の作新学院だ。簡単に抑えられる打線ではない。この試合と同じように勝負する姿勢を大事に強力打線に向かっていってほしい。

(文=河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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