中日・高橋宏斗 活躍を予感させた高2の冬! 衝撃的なストレートの破壊力に私は言葉を失った!【主筆・河嶋宗一コラム『グラカン』vol.6】
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中京大中京時代の高橋宏斗
高2オフの取材で見た、衝撃的な光景
中京大中京は当時から野球部ОBによる学生コーチがいましたが、高橋投手が学生コーチと積極的に議論する姿を見ました。アドバイスに耳を傾けても、自分がこれだと思ったものは曲げない信念があったようです。
高校時代の高橋投手の投球を見ていて気になったのは、踏み出す際に大きく前傾をするので、角度がなくなり直線的なフォームになるのが気になっていました。甘くなると長打が打たれることもあり、課題にも感じられました。本人にこの疑問をぶつけてみました。
「確かに課題ではあるのですが、自分にとって前傾する動きが最も力が伝わる動きが現在の投球フォームだと思っています。でも投球フォームについては自分の力を最大限に発揮できるフォームを模索中です」
この回答で、外から見ると、課題に見えるけど、周りに流されず、自分が良いと思ったことを貫く。その目的意識もはっきりと回答ができる。それでも今のフォームに満足せずに、試行錯誤する姿勢が見える。その点はアスリートらしく、プロ向きだなと思っていました。
再度中京大中京を訪問したのは、センバツ出場が決定した後の2020年1月下旬。ここで見せた高橋投手の投球練習は衝撃的でした。
オフ期間でも150キロをマークしていた速球は破壊力抜群。私が見た高校、大学、社会人のドラフト候補のブルペン投球の中でも、破壊力はピカイチでした。
高橋投手も「良い状態は続いています」と話していました。
当時の高橋投手は、甲子園ベスト4を2回経験した中森 俊介投手(明石商-ロッテ)に並ぶ評価を受けていましたが、進路はプロか兄・怜介さんが進んだ慶應義塾大進学かで揺れていました。
高橋投手は高卒プロを目指すなら、成し遂げたい目標がありました。
「自分も神宮大会優勝したことで、相手から意識されていると思うんです。甲子園では自分のピッチング、つまり圧倒的なピッチングをしたいです」
高校生NO.1右腕に相応しい結果を示してプロ入りしたい、と語った高橋投手。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、この年の甲子園はセンバツ、夏ともに中止となってしまいました。全国大会の中止により高橋投手は進学へ傾いていきました。
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神宮大会で好投を見せた高橋宏斗
順調な成長は“探求心”の賜物
全国的に部活動も自粛となり、中京大中京野球部もその影響を受けました。高橋投手は自主練習に励み、活動再開となった夏には、さらに進化した姿を見せてくれました。
ストレートは常時140キロ後半〜150キロ前半を当たり前に出しており、140キロ中盤のツーシームで打者を翻弄しました。
愛知独自大会では圧倒的な投球で優勝に貢献。センバツ出場校が対象となった甲子園の交流戦では智辯学園を相手に延長10回を投げきり、11奪三振、3失点完投勝利。ボールの質だけではなく、打者を見下ろすような投球は格が違いました。
秋のドラフトシーズン。2020年のプロ志望届の締め切りは、10月12日でした。直前の10月6日、高橋投手のプロ志望届が出されます。慶應義塾大受験に落ちてしまったのです。12球団はすぐに動き、調査書を学校に送りました。
恩師の高橋 源一郎監督は当時をこう振り返ります。
「短い時間の中での高橋家の決断でした。プロの球団の方から高い評価をされていたのもプロ志望届を出した理由です。志望届を出した瞬間にどこの球団からも調査がありました」
ドラフトで地元の中日から1位指名を受けた高橋投手は、高卒2年目からローテーション入り。19試合に登板して6勝116.2回を投げ、134奪三振。昨年はWBC代表にも選ばれました。シーズンでは146回と規定投球回に達し7勝145奪三振を記録しています。自慢の速球も最速158キロまで伸び、目標とする160キロまで着実に近づいています。
ここまで順調に階段を登っているのは素質の大きさはもちろん、自分がこれだと思ったものにはとことん取り組む探究心の深さが活躍につながっていると思います。また中日球団の後押しも大きく、彼の価値観・理論を大事にして、意欲的に取り組ませているように感じます。
昨年1年間の経験をどう活かし、2024年では初の投手タイトルを挙げる活躍を見せることを期待しています。
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高校時代の高橋 宏斗
*『主筆・河嶋宗一コラム グラカン!』は毎週日曜配信します。
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